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22:雄同士
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なんだかんだありまして……。
「あなたをわたくしの好敵手《ライバル》として認めて差し上げますわ!」
と黒竜に言われた。
だが待って欲しい。そのライバルって、もしかしなくても恋のライバルっすか?
アッー!
「ってまてまてまてっ。銀次郎も俺も男だぞっ」
「おとこ? ところでお前はどうしてあの方をギンジローと呼ぶのかしら?」
「ノゾム・銀次郎。俺が付けた名前だ。ドラゴンって呼ぶわけにもいかないだろ。今みたいに、ドラゴンが二頭もいたらさ」
「ノゾム……ぎんじろう……銀……銀さま。あぁ、ステキな響き」
ステキか?
まぁ、俺のネーミングセンスが良かったってことだよな。
「はっ! と、とにかくあなたっ。ライバルであるからには、どちらが銀さまに相応しいか勝負ですわよ!」
「勝負? いや、だから俺と銀次郎は男同士で、そういう関係じゃないんだって!」
「おとこ? おとことはなんですの?」
……。
「雄」
「おす。雄同時……雄同士いいいぃぃぃぃーっ!? きいぃぃぃーっ!! わたくし、雄には負けませんわ!!」
ダメだこのドラゴン。
「とにかく落ち着け。相手のことが好きだってのに、なんで襲うんだ?」
「き、決まっていますわっ。わたくしの気持ちを伝えるためですわよっ」
・ ・ ・ ・ ・ ・ ?
「えぇーっと。好きだから襲う?」
「襲ってなどいませんわ。古竜種の愛の深さは、強さに比例しているのです。他種族には分かりませんわ」
「つ、強さって物理的な強さ? こう、パンチとかキックとか」
「ブレスとか! えぇ、そうですわ。愛の強さは肉体的な強さそのもの!」
俺、人間でよかった。
けど、銀次郎は襲われた=命を狙われていると思っているようだし……どういうこと?
「ま、待ってくれブラックドラゴン。古竜種の愛情表現が、強さを示すことって本当なのか? 銀次郎は、お前が自分を殺そうとしているって思っているんだぞ」
「わ、わたくしが!? そんなハズありませんわっ。だって古竜種は──」
そこまで言うと、ブラックドラゴンは口をつぐんだ。
「タック!」
「おい主! あ奴はどこかへ行った──まだおるではないかああぁぁーっ」
テントからアイラと銀次郎が出てきた。だが銀次郎はすぐさまテントへと潜り込む。
「ぎ、銀さま……」
「ふ、孵化したばかりで弱っている我を喰ったとて、それが貴様の実力と思うなっ」
顔だけ出してそう叫んでは、すぐにテント内へと引っ込んでしまった。
言ってることはまぁまともなんだけど、なんかカッコ悪い。
「銀、さ、ま……わたくし、わた……違う、の? 殿方に想いを伝える告白方法……だって、フレイ……」
わなわなと震えだし、ブラックドラゴンが両手で顔を覆った。
「ど、どういうことなの、タック?」
「んー……なんか複雑みたい?」
そう言った瞬間、バサァっと音がしてブラックドラゴンが空に舞った。
そして一度だけ上空を旋回すると、北東の空へと飛んで行ってしまった。
「行っちゃった?」
「行ったな。なんだったんだ、あいつ……」
好きと伝える方法が力でねじ伏せることって、本当なのか?
銀次郎が知らないだけで、雌の間では常識とか、そんなオチだったりしないのかよ。
◆◇◆◇◆◇◆◇
──告白するときはね、殿方に自分の強さを誇示するのよブラック。
──より強い子孫を残すために、強い雌を求めるのよ。
──全力でぶつかりなさい。それこそ、殺す気で。ね。
──ンフフ。
フレア。あなたが私に嘘を教えましたの?
そんなことありませんわよね。
だってわたくしたち、お友達だもの。
あの人間モドキがわたくしを騙した?
自分が銀さまのパートナーの座に居座るために、わたくしを!?
でも……あの人間モドキは雄。
雄同士では子孫を残せませんし、だったら何故。
布切れから出て来た時の銀さまは、わたくしを見て怯えていた。
我を喰って──そう仰っていた。
食べるつもりなんてわたくし、ありませんのに。
初めて銀さまを見つけた時、その凛々しいお姿に一瞬で恋に落ちてうっかりブレスを吐いてしまったけれど。
銀さまは笑ってそれを跳ね除けた。
お姿だけでなく、その強さにもわたくしは惹かれましたわ。
だからこの想いを伝えたい。
この想いを受け取って欲しい。
「確かめなければ。どちらがわたくしに嘘をついているのか」
幸い、今夜は満月ですわ。
アレを使えば次の満月までもとには戻れませんが……それでも確かめなければ。
「あなたをわたくしの好敵手《ライバル》として認めて差し上げますわ!」
と黒竜に言われた。
だが待って欲しい。そのライバルって、もしかしなくても恋のライバルっすか?
アッー!
「ってまてまてまてっ。銀次郎も俺も男だぞっ」
「おとこ? ところでお前はどうしてあの方をギンジローと呼ぶのかしら?」
「ノゾム・銀次郎。俺が付けた名前だ。ドラゴンって呼ぶわけにもいかないだろ。今みたいに、ドラゴンが二頭もいたらさ」
「ノゾム……ぎんじろう……銀……銀さま。あぁ、ステキな響き」
ステキか?
まぁ、俺のネーミングセンスが良かったってことだよな。
「はっ! と、とにかくあなたっ。ライバルであるからには、どちらが銀さまに相応しいか勝負ですわよ!」
「勝負? いや、だから俺と銀次郎は男同士で、そういう関係じゃないんだって!」
「おとこ? おとことはなんですの?」
……。
「雄」
「おす。雄同時……雄同士いいいぃぃぃぃーっ!? きいぃぃぃーっ!! わたくし、雄には負けませんわ!!」
ダメだこのドラゴン。
「とにかく落ち着け。相手のことが好きだってのに、なんで襲うんだ?」
「き、決まっていますわっ。わたくしの気持ちを伝えるためですわよっ」
・ ・ ・ ・ ・ ・ ?
「えぇーっと。好きだから襲う?」
「襲ってなどいませんわ。古竜種の愛の深さは、強さに比例しているのです。他種族には分かりませんわ」
「つ、強さって物理的な強さ? こう、パンチとかキックとか」
「ブレスとか! えぇ、そうですわ。愛の強さは肉体的な強さそのもの!」
俺、人間でよかった。
けど、銀次郎は襲われた=命を狙われていると思っているようだし……どういうこと?
「ま、待ってくれブラックドラゴン。古竜種の愛情表現が、強さを示すことって本当なのか? 銀次郎は、お前が自分を殺そうとしているって思っているんだぞ」
「わ、わたくしが!? そんなハズありませんわっ。だって古竜種は──」
そこまで言うと、ブラックドラゴンは口をつぐんだ。
「タック!」
「おい主! あ奴はどこかへ行った──まだおるではないかああぁぁーっ」
テントからアイラと銀次郎が出てきた。だが銀次郎はすぐさまテントへと潜り込む。
「ぎ、銀さま……」
「ふ、孵化したばかりで弱っている我を喰ったとて、それが貴様の実力と思うなっ」
顔だけ出してそう叫んでは、すぐにテント内へと引っ込んでしまった。
言ってることはまぁまともなんだけど、なんかカッコ悪い。
「銀、さ、ま……わたくし、わた……違う、の? 殿方に想いを伝える告白方法……だって、フレイ……」
わなわなと震えだし、ブラックドラゴンが両手で顔を覆った。
「ど、どういうことなの、タック?」
「んー……なんか複雑みたい?」
そう言った瞬間、バサァっと音がしてブラックドラゴンが空に舞った。
そして一度だけ上空を旋回すると、北東の空へと飛んで行ってしまった。
「行っちゃった?」
「行ったな。なんだったんだ、あいつ……」
好きと伝える方法が力でねじ伏せることって、本当なのか?
銀次郎が知らないだけで、雌の間では常識とか、そんなオチだったりしないのかよ。
◆◇◆◇◆◇◆◇
──告白するときはね、殿方に自分の強さを誇示するのよブラック。
──より強い子孫を残すために、強い雌を求めるのよ。
──全力でぶつかりなさい。それこそ、殺す気で。ね。
──ンフフ。
フレア。あなたが私に嘘を教えましたの?
そんなことありませんわよね。
だってわたくしたち、お友達だもの。
あの人間モドキがわたくしを騙した?
自分が銀さまのパートナーの座に居座るために、わたくしを!?
でも……あの人間モドキは雄。
雄同士では子孫を残せませんし、だったら何故。
布切れから出て来た時の銀さまは、わたくしを見て怯えていた。
我を喰って──そう仰っていた。
食べるつもりなんてわたくし、ありませんのに。
初めて銀さまを見つけた時、その凛々しいお姿に一瞬で恋に落ちてうっかりブレスを吐いてしまったけれど。
銀さまは笑ってそれを跳ね除けた。
お姿だけでなく、その強さにもわたくしは惹かれましたわ。
だからこの想いを伝えたい。
この想いを受け取って欲しい。
「確かめなければ。どちらがわたくしに嘘をついているのか」
幸い、今夜は満月ですわ。
アレを使えば次の満月までもとには戻れませんが……それでも確かめなければ。
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