【完結】死にたがり少女は過保護なヤクザの若頭に全肯定される~勘違い男の「光の暴力」は強面旦那様が排除します~

伊東園

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第14話 ずっと近くにあった本物の「愛」

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裏口付近。タッタッタッタッという地面を蹴る音と、あのうるさい声が近づいてきていた。

「……日向ー!どこだー!」 
「……ひゅっ……ふぅー……は……ふっ……」 

(……やだ……こないで……やだ……) 

「…日向ー!いるなら返事しろー!」
「……ひゅ……ふ……は……ひゅっ……」 

見つかる。やだ。怖い。やだ。

その時。走る音がピタリと止まった。

「……あ!いた!」

ダダダダッ!

ガシッ!ギュッ!

「っ……!?」

急に力強く抱きしめられた。苦しい。怖い。気持ち悪い。

「やっと見つけたぞ!日向!もう絶対逃がさねぇからな!」
「……ひゅっ……ひゅっ……ふっ……ひゅっ……」
「……え…どうしたんだよ!?息苦しいのか!?おいってば!」

ガシッ! 両肩を力強く掴まれる。

「っ……!?……ひゅっ……は……ひゅっ……ひゅっ……」 
「ちょっ!おい!しっかりしろって!おい!」

ユサユサと視界が揺れる。世界が、歪む。

「……ひゅっ……はぅ……ひぐっ……ひゅっ……ひゅっ……」

 ◇

俺は速度を上げて大学に向かっていた。電話から聞こえるひなの息が急に激しく乱れ始めた。

「……ひな……息吐け……フゥーーっ……」
(……なんや……急に息えらい乱れとるぞ……) 

その時やった。あの耳障りな声が聞こえてきたんは。

「……おい!日向!」 

(……あ?) 

「……日向!何やってんだ!てか電話なんかしてる場合じゃねぇだろ!貸せ!」 

バッ!

「……もしもし!今日向凄いことになっちゃってて!すんませんけど切ります!」 

プツッ!

ツーツー

「……あ?」

全身の神経が一気に芯まで冷えきっていくんが分かった。

「…………ほうか……ほんまにひなを殺す気やな……わかったわ」

 ◇

裏口の階段の下の陰。僕の視界は揺れ続けていた。

「……おい!しっかりしろって日向!」

ユサユサユサ

「……ぅっ……ひゅっ……ひゅっ……ひゅっ……」 
「……なんか酷くなってんぞ!おい!ちゃんと息しろって!なあ!」 
「……はっ……ひゅっ……ひゅっ……」

揺れ続ける視界の中。あの聞き慣れたエンジンの音がした。

 ◇

運転席から降りて勢いよくドアを閉める。視線の先に見えたんはあのガキがひなの肩を掴んで揺さぶっとる光景やった。揺れとるひなの白い肌は、いつもより青白く生気を失った色になっとった。

「……おいガキ……その手ぇ離せ」 
「……は?……なっ!?お前!」 
「……ひゅっ……ひゅっ……」 
「……渡すもんか!……ぜってぇ離さねえからな!日向!俺が守ってやる!」

ギュッ!

「っ……!?……ひゅっ……ひゅっ」 

ガキは離すどころか力強く抱きしめよった。
ひなの息が更に上がるのが分かった。

「……ええ加減にせぇよ……離せ」

俺はガキの右肩を掴んで、ギリギリと力を込めた。

「……ぐっ!?……離すっ……もんか!」  
「……離さんかったらこのまま肩……握り潰すで……」 
「……やれるもんならやってみろよ!ぜってぇ守ってやるからな!日向!」 
「……ちっ」 

(……これでほんまにこいつの肩潰してもうたらひなが後で自分のせいや思いよんねん……) 

「……おい……ええ加減にせぇ……もうええわ……寝とけ……」

ドンッ 喉仏の下のくぼみに一撃入れる。

「……がっ…」

カクンッ ガキの力が抜けて腕が解けた。

「……ひゅっ……ひゅっ……はっ……ひゅっ……」 
「……ひな……もう大丈夫や……よう頑張ったな……」

ズウゥ……ギュゥウッ…… 
震える身体を抱きしめる。ここにおると伝えるように、強く。

(……抱きしめたひなの身体は…いつもよりも冷たくて……小さく感じた……) 

「……ほら……息……吐こな……フゥーーって……フゥーーっ……」 
「……ひゅ……ふぅーっ……は……ふぅーーっ……」 
「……そうや……できとるで……ええ子や……もっと吐け……フゥーーっ……」 
「……は……ふぅーーっ……ぅ……は……ひぐっ……ぅえ……ぅわぁぁあんっ……うぇええんっ……怖かったぁっ……ひぐっ……怖かったっ……うぇえええんっ…!」 
「……よし……よし……声出たな……ん……ええ子や……よう頑張った……ほんまえらいで……ひな……ちゅっ……」 

「……ぅ……ひぐっ……ぅえっ……ぅうっ……」 
「ん……ちょっと落ち着いたか……帰ろか…ひな……」

俺はひなの頭をポンポンと撫でてそのまま抱き上げた。

「……よいしょっと……車……行こな」 
「……ぅ……ひぐ……京……ぅ……」 
「……ん……京やで……おるで……ここに……」

 ◇

ガチャッと助手席のドアを開ける。

「……よし……乗ろな……ん……すぐ乗るからな……おらんなったりせんからな……ちゅっ……」 

運転席へ向かう俺の足は、自然といつもより速う動いとった。

「……ん……来たで……ちゅっ……」
「……ん」

頭に置いた俺の手に、ひながスリスリと頭を擦り付けてくる。

「……甘えられるようなったんか……えらいな……ん……可愛ええなひな……ちゅっ……」 
「……ん……ちゅ……」 
「ははっ……お返ししてくれたんか……ん……じゃあ帰ろか……行くで……」 

アクセルを踏んで車を出そうとした時。助手席から不安げな声がした。

「……京……僕……大学……行けるの……かな……」 

ひなの声は恐怖と不安、葛藤が入り交じって震えとった。
俺はひなの気持ちはそれなりに分かっとるつもりや。今の俺にしたれることは、ひなのほんまの気持ちを引き出すことや。

「…………ひな……俺な……分かっとんねん……ひなは絵描くこと自体は好きやって……人が怖いだけやってな………なぁひな……大学……行きたいか?」 
「……行き……たい……けど……でも……」 
「……ほうか……よう言った……えらいで」

俺は運転席から乗り出して、俯いとるひなの身体を抱きしめた。

……フワッ…ギュゥ……

「……ほんなら…転校でもしよか……単位は引き継げるようにしたる……ひなが頑張ったもんやからな……」 
「……この後どっか行くか?……水族館でも……動物園でも……遊園地でも……なんでも行ったる」 

トントンと安心させるように背中を叩く。

「…………動物園……行きたい」 
「……おっしゃ……お前が好きな虎とかよう見えるとこ行ったるわ……ほんなら行こか」 
「……うん!」

ひなの目に光が戻って、いつものふわふわした甘えん坊の顔になった。スリスリと俺の胸に当たる頬の感触が愛しくて堪らない。

「くくっ……猫みたいに甘えよって……」 

「……京…………好き…」 

ポツリと、ひなの口からその言葉が漏れ出た。ほうか。やっと、言えるようなったんか。

「………そんなもん……分かっとるわ」 
「…………俺もや……もう死んでも……離したらんからな……」

絶対に離さないという意志を込めて、力強く抱きしめる。すると、ひながそれに呼応するように力を込めてきた。

「……ふっ……えらい力やな……自分も離さんってか?……ほんま可愛ええやっちゃ…」

俺の口から、今まで心ん中で抑えとった言葉が、自然と零れた。

「……ひな…………ほんまに………愛しとるで……ちゅっ…」
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