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4話 ハロルド侯爵令息

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 私は幼馴染であるハロルドに促され、庭を散歩することになった。隣には侯爵令息のハロルドが並んで歩いている。


「ダンテ侯爵令息との婚約破棄か……君の心中は本当に察するよ……」

「うん……ありがとう、ハロルド……」


 私と同年代の19歳のハロルドは、私を気遣ってくれているみたい。ダンテ様との婚約破棄は確かに悲しかったけれど、彼の言葉で多少は和らいでいくのを感じていた。


「本当にありがとう……完全ではないけれど、あなたの心配されて、少しは気分が楽になったわ」


「そうか……それなら、いいんだけれどね」


 そう言いながら、ハロルドは私に屈託のない笑顔を見せていた。なんだか、その表情を見ていると、顔が赤くなるのを感じる……どうしてかしら……?


「しかし……ダンテに対しては、このまま黙認するのかい?」


「それは……」


 ハロルドの言う通り、確かに本音では復讐をしたいとは考えている。なんとか賠償金でも取れればと思うけど……相手は格上の侯爵令息。簡単には復讐というのは難しいとも感じていた。


「復讐……と、いうより、然るべき罰を受けてほしいという気持ちはあるわ。でも、伯爵家である私では難しいということも理解している……」


 猪突猛進で復讐を果たしても意味がないわけで……行うのなら、お父様たちに出来るだけ迷惑を掛けてはいけない……。


「そうか……でも、シェル……君が望むのなら……」

「だ、ダメよ、ハロルド……あなたに迷惑を掛けるなんてできないわ……!」


 ダンテ様と同じ侯爵令息であるハロルドなら、なんとか出来るのかもしれない。でも、大切な幼馴染を巻き込むなんて真似をしたいとは思えなかった。私は彼の考えを最初から潰しにかかる。



「確かに、僕が出張る方法もあるけれど……灯台下暗しかな?」

「えっ? どういうこと……?」


 私はハロルドの言っている意味を理解することが出来なかった。というより、彼は私ではなく、別の方向に目を向けている。私もそちらに視線を合わせると……。彼の言った言葉の意味が理解できた。


「姉さま! こちらにいらっしゃいましたか!」

「ソシエ? それから……うそ……」

 庭には、しばらく姿を見せていなかったソシエの姿があった。それ自体は普通のことだし、驚くべきことではないんだけれど……。


 本当に驚くべきはその隣……私は一瞬、自分の目を疑ってしまった。そこには、ライドウ・イグンシム皇帝陛下が立っていたのだから……。
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