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31話 平穏な生活 ④

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「ハロルド……」

「シェル……」


 私たちは屋敷の一室で、穏やかな小休止時間を送っていた……。それが今は、少しいい雰囲気になっている。ステップアップしていると言い換えることが出来るかもしれない。


 ライドウ皇帝陛下とソシエ……二人の関係に少しでも近づかないとね、本番に向けて。私が彼にもたれかかり甘え始める。最初は戸惑っていたハロルドだけれど、だんだんその気になって来てたのか、私に囁くと同時に腰辺りに手を回してきた。

 私も負けじと彼の両手に自分の指を絡めて行く……なんていうか、ロマンチックな光景だと思う。でも、自然と顔が赤くなっていくのを感じた。鏡はないけど、多分今の私は、熟れたりんごのようになってるんだと思う。


「なんだか恥ずかしいわ……ハロルド。あなたとこうしているだけで、ここまで恥ずかしく感じるなんて」

「まだ何もしてないじゃないか。これからだろう?」

「えっ、ハロルド……?」


 なんだか、ハロルドから大胆な発言が出て来た気がする。甘え始めたのは私だけれど、その影響で彼に変なスイッチが入ってしまったのかもしれない……。


「きゃあっ!」

「大丈夫だよ、シェル。ほら、力を抜いて」

「ハロルド……!!」


 彼は私を力任せに引き寄せ始める。力任せと言っても、決して怪我をしないように配慮はしてくれていたけれど。そして、そのままキスを始めた。私もその流れに身を任せて行く……。


 どのくらいの時間が経ったのかしら? 時間にすれば1分、2分? それだけのキスではあったけれど、とても長く感じられたわ。私はハロルドから解放された……ちょっと名残惜しいけど、これ以上やってしまうと、色々と不味いしね。



「ねえ、ハロルド」


「なんだい、シェル?」


「ダンテ様……いえ、ダンテにも会いに行きたいんだけれど……駄目かしら?」


「ダンテに?」


 意外な私の言葉にハロルドは目を丸くしていた。先日、アイミー令嬢には会いに行ったけれど、ダンテ様には会いに行っていない。彼は今、罰が決定し、地下牢で待機している状態だ。私は彼が島流しになる前に、会いたいと考えていた。


「ダンテに会う意図が分からないが……聞かせてもらってもいいかい?」

「ええ、でも笑わないでね?」

「君の決意を笑うわけがないだろ?」


 よし、ハロルドは真面目に聞いてくれるみたい……私は深呼吸をして、彼に理由を説明することにした……。私の身勝手な理由を。


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