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1話
しおりを挟む「ルイズ……待って欲しいの。急に婚約破棄をしたいなんて意味が分からないわ。どういうこと?」
「聞いての通りだよ、アルエ。私は真実の愛に気付いてしまったんだ。こればかりはどうすることも出来ない」
「真実の愛って……」
私は数カ月前にルイズ・カットーイ侯爵令息と婚約することが出来た。彼は昔からの知り合い……つまりは幼馴染の一人ということになるのだけれど。それだけに、私のフォーミラ伯爵家も喜んで婚約に応じてくれていた。幼馴染と結婚する……ある意味では運命にも感じる婚約だと思っていたのに。
事態は思わぬ方向に舵取りを開始したのだった。
「アルエ……君は運命の相手ではなかったんだ。私は侯爵令嬢のシシリーと付き合うことに決めた。済まないが別れてくれ。いいだろう?」
「そんな……急にそんなことを言われても」
信じられない状況だった。シシリー・ハングス侯爵令嬢とルイズは婚約しようと言うのだから。目的は……より、高位の相手と結婚することだろうか? それならば多少はわからないわけではないけれど。私の家系は伯爵家でしかない。シシリー様とは絶対的な地位の格差があった。それは、幼馴染であるルイズとも一緒だけれど。彼も侯爵令息なので、私との地位の格差は大きいと言える。
「納得できないわ……そんなの……」
「アルエ、本当に残念だけど、分かって欲しいのだよ」
幼馴染が言う言葉とは思えなかった。ルイズはもう私の知っている彼ではないのかもしれない。反論をしたところで無駄になってしまうのだろう。
「ま、そういうわけだから、諦めたら? ルイズの心は私の物になっているんだからさ」
「えっ? シシリー様!?」
「おいおい、出て来るなって言っただろう?」
「あなたがいつまでも説得できないのが悪いんでしょう? 私が出て来た方が話は進むんじゃないかしら?」
シシリー様はルイズの寝室からあられもない姿で出て来たのだった。これは……もう完全にそういうことをしているという証だろうか。話が進みやすいと言ったシシリー様の気持ちが分かるようだった。そんな自分が憎らしい……バカみたいだ、私は何を引き留めようとしていたのだろうか。
これは……完全にルイズの裏切り行為。浮気でしかなかったのだから。彼はシシリー様と肉体関係になっていて、それが原因で婚約破棄を持ち出したのだ。
「ルイズ……わかったわ、婚約破棄をしましょう。本当に残念だけれど……まさか、こんなことになっているなんて」
「あんたが悪いのよ。いつまでも貞操をルイズに捧げないからね」
「……」
「済まないな、アルエ。ま、そういうことだから……」
悲しくなり過ぎた……最早、彼らのことを考えるだけ無駄だ。貴族が結婚する前に肉体関係になることなど、あってはいけないはずなのに。欲望が先に彼らの理性を狂わせたのだろうか。
私は帰りの馬車で泣いてしまった……こんな形で幼馴染を失ってしまった事実に……。
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