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13話 ミストマのところへ

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 その後、お父様とブラウン兄さまは抗議していたけれど、全て却下されてしまった。

「お、お待ちください王子殿下! 私の娘ですよ? いくら王家の方々とはいえ、勝手に婚約したり縁を切ったりなんて出来ないはずです!」

「そうですよ、王子殿下! 私の妹を返してください!」

 どの口が言っているのか分からない程、身勝手な言い分だった。通常ならばその言い分は正しいけれど、今回ばかりは私達の方が正しいに決まっている。お父様と兄さまの言い分は負け犬の遠吠えですらない。完全に異端のものとなっていた。

「詳しい手続きは後日ということになるが、コーデリアは宮殿で匿うよ。ここに住む必要はないから安心してくれ」

「畏まりました、シムルグ様。ありがとうございます」


 とても嬉しい言葉を戴いた。この屋敷に住む必要がなくなるだけで、どれだけ嬉しいだろうか。修道院に送られる恐怖と言葉による罵声から解放されるのは、本当に嬉しいことだ。

「よろしくね、コーデリア。歓迎するわ」

「アーシャ様……ありがとうございます!」

「シムルグとの婚約についても歓迎するわ。頼りない弟だけれど、大切な人を守るだけの器量はあると思うから」

「アーシャ姉さま、それは酷いな……私だって頑張っているのに……」

「何を言っているのよ、シムルグ。コーデリアを泣かせたりしたら、承知しないんだから。覚悟を持って行きなさい。今後は王位継承争いもあるんだし」


 王位継承争いというフレーズにドキリとしてしまった。そうか……シムルグ様は王子殿下なのだし、今後は国王陛下になる為の戦い? を強いられることになるのよね。なかなか大変な環境で育っているわね……。


「そうだった、王位継承争いがあるんだった。ならば……」

「ならば?」

「ミストマ殿のところへ行かなければならないな。来るべき王位継承争いを前に、ああいう不穏分子は排除しておかなければならないし」

 そういえば忘れていたけれど、全ての元凶はミストマ・ストライド公爵だったっけ。私に婚約破棄を言い渡した癖に、王家には婚約解消としか言っていないらしいし。明らかに罪を犯しているわね。

「同感だけれど、コーデリアの為に行くんでしょう? その部分を濁す必要はないと思うけれど、どうしたの?」

「い、いや……面と向かって言うのは恥ずかしかったと言うか……」

「あれだけハッキリと告白しておいて今さらね……」

「うっ……! あれは勢いで……」


 なるほど、今は勢いが落ち着いたから恥ずかしさが出ているってことね。さっきから、私の顔を見てくれないし。

 アーシャ様に言い訳しているシムルグ様は、なんだか可愛らしかった。ますます、好きになってしまったかもしれない。これからミストマ様のところへ行くはずなんだけれど、シリアスな雰囲気を感じさせない和やかなムードになっていた。
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