私の味方は王子殿下とそのご家族だけでした。

マルローネ

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12話 ヨーゼフの後悔 その2

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「コーデリアとシムルグ王子殿下が一緒になれば、国は安泰ですな! 非常にめでたいことです! はははは……! ブラウンもそう思うだろう?」

「そ、その通りですな、父上! あはははは……!」


 無理矢理明るく話しているけれど、その心の中は見え透いていた。お父様とブラウン兄さまの二人は、私のことなど微塵も想っていない。単に結婚の道具としての存在が目の前にある、と思っているだろう。

 本当に酷いと思う……どうして私の家族は、私を一人の娘として見てくれないのだろうか。いくら伯爵家の娘とはいえ、私は政略結婚の道具である前に、血の通った人間なのに……。


「コーデリア」

「あ、はい。アーシャ様、如何なさいましたでしょうか?」


 そんな時、アーシャ様が私に話しかけてきた。溜息を吐きながら。

「あなたの家族は本当に酷いわね。よく今まで耐えて来れたと思うわ」

「あ、ありがとうございます……なんとか、耐えて来ました。はい……」


 私の境遇に同情してくれているのか、アーシャ様は表情は辛辣だった。同時にお父様達を見る目は恐ろしいものがある。私の気持ちになって考えてくれているのかもしれない。とてもありがたいことだ。


「ヨーゼフ殿、いい加減にした方が良いと思うのだけれど? 往生際が悪いとどうなるか分からないわよ?」

「往生際? 私は単にシムルグ様とコーデリアの婚約を喜んでいるだけで……」

「あなたがコーデリアにした行為を忘れているでしょう? その行為は決して許されることではないわ」

「お言葉ですがアーシャ様……娘の躾には必要なこともございます。私が行った行為の全てを否定されるようでしたら、反論させていただきたいのですが」


 あれ? さっきまでの態度とは少し違っているような……お父様が元気になっているような気がした。


「あなたの行いの全てを否定するわけじゃないわ」

「そうでしょうね、アーシャ様。私の行為全てを否定するなら、娘を甘やかさないと父親失格ということになってしまいます。私は今日まで娘を厳しく育ててきました。それも全てアレイオン家の娘として恥ずかしくないようにする為……そのおかげで娘はまだ20歳にもなっていませんが、相手を思いやるしっかりとした人間に育ったと自負しております」


 饒舌に語るお父様……なぜいきなりそんな反撃が出来るのかしら? 最初から用意していたわけではなさそうだけれど。もしかして、私とシムルグ様との結婚の可能性があると分かって強気に出ているのかしら?

 今の状態ならお父様は王家に対して主導権を握れるから。

「厳しく育てて来た、か。一見すると正しい発言に見えなくはないな。咄嗟に考えたにしては、なかなか理に適っているじゃないか、ヨーゼフ殿」

「何を言いますか、シムルグ様。理に適っているも何も真実をお話しているだけでございます」

「本当にコーデリアへの態度が教育の一環だと思っているのなら……めでたいにも程があるな」

「なんですと……? どういう意味ですかな?」

「教育の一環だったかを決めるのはコーデリア自身だからだ。彼女は今までのことはともかく、婚約破棄した後の貴殿らの態度については許しがたいと言っている。過去の話でお茶を濁そうとしても無駄だ、私は現在の話をしているのだからな」

「そ、それは……」


 シムルグ様はお父様の反論を待たずに私に向き直った。

「コーデリアはアレイオン家と縁を切りたいと思っているか? 可能であれば教えて欲しい」

「シムルグ様……」


 いきなりの質問が返って来た。ハッキリ言って答えは出ているけれど……言ってしまっても大丈夫なんだろうか? 

 でも、このタイミングでシムルグ様が質問してくるということは大丈夫なんだろう。私は彼を信じることにした。


「はい、シムルグ様。私はお父様達との縁を切りたいと思っています。同時にシムルグ様と一緒になりたいとも考えております」

「コーデリア……ありがとう。だそうだ、ヨーゼフ殿。残念だったな」

「縁を切るだと!? 馬鹿な……そんなこと出来るわけが……!」


 お父様は再び取り乱し始めた。さっきからとても忙しそうだわ……私を王家に送ることでアレイオン家の利益に繋がると考えたのでしょうけれど、無駄になったわね。

 お父様は後悔……というより、焦燥感に苛まれているかもしれない。
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