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3話

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「エミリー、久しぶりだね。元気そうで良かったよ」

「ええ、ジスト。あなたも元気そうで安心したわ」

「マグノイア様もお元気そうで……」

「いえいえ、とんでもない」


 お父様と私はやって来たジストと簡単な挨拶を交わした。そのままジストを応接室に連れて行ったけれど、気を遣ってくれたのか、お父様は入って来なかった。逆に緊張するんだけれど……。それに表向きは事業計画に関することなのでは……お父様。


「今日はどうしたの? 事業計画の話と聞いていたけれど」

「まあ、確かにその通りなんだけど。本当は君のことが心配で様子を見に来たんだ」

「ジスト……」


 ジストは男爵令息で私の友達の一人だ。だからかこうやって私の心配をしてくれているようだ。感謝しかできないけれど、表向きの用事は本当についでにつけられていたのね。


「話の内容は聞いているのかしら?」

「まあ、噂話程度だけどね。君が婚約破棄をされたっていうのは聞いている。でも、君が原因で婚約破棄になるとは思えないんだ。なにか大きな理由があったんじゃないか?」


 ジストは私のことを信用してくれているようだった。婚約破棄が私が原因であるとは考えていないみたい。

「その通りよ、ジスト。まあ、私が原因だと言えなくもないけれど。私が子爵令嬢でしかないこと、相手の浮気が原因だわ。この場合はウィンド様の浮気になるわね」

「侯爵令息のウィンド様が浮気を……? そんなことを……!」

「相手は侯爵令嬢のヘルメス様だわ。目の前で言われたから確実ね。流れている噂ではその辺りは伏せられていると思うけれど」


 私は現在、今後の予定の全てをキャンセル扱いにしているので、世間でどのような噂が流れているかはわかっていなかった。まあでも、大体の予想はつくけれどね。とても酷い内容になっている気がする。ウィンド自身が流しただろうし、自分が流したのなら都合の良い風にするだろうからね。こういう時は立場が弱い者は非常に不利になってしまう。

 大体は地位が高い者が優先されるからだ。


「世間ではエミリーの性格に難があった為に、仕方なく婚約破棄をしたとなっているようだ」

「なによそれ……」

「非常にわがままだったとも言われているみたいだよ。屋敷のお金を使いまくるとかなんとか……まあ、私は信じていなかったけどね」


 想像以上に悪く言われていた……ウィンドは本当に容赦がないわね。あんな人と一時でも婚約関係にあったなんて……なんだか身震いしてしまうわ。身体を預けていなかったのが不幸中の幸いかしら。


「そういえば、今後の予定はどうするつもりなんだい? この前のパーティーにはいなかったと思うけど」

「今はキャンセルにしているの」

「そういうことか……でも屋敷に籠るのは良くないよ。君さえよければ……貴族街に出てみないか?」

「ジスト?」


 これはある意味ではデートの誘いではないだろうか。まあ、私は婚約破棄された身なので応じても問題ないのだけれど。確かにあまに籠りっぱなしも良くないわよね。気分を変えるのはいいことかもしれない。
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