婚約破棄の悲しみはお兄様が癒してくれました

6話

　スウィング・ボトル侯爵令息とカフェで話をすること30分。アンデル兄さまは最初は近くに座っていたけれど、いつの間にか席を外しており、私達だけとなっていた。護衛の人達も店の外に行っているようだ。


「アンデルが急に予定を組んだようで……申し訳ない、フリーダ嬢。こうして話をしてくれてはいるが、迷惑だったのではないだろうか？」

「いえ、スウィング様。そちらは大丈夫ですので、心配なさらないでください」

「そうか……無理をしているわけではないのか？」

「ええ、無理なんてしていませんよ」


　スウィング様はこうして話している限り、悪い人にはとても見えない。それどころか、色々と気を遣ってくれているようですらある。まあ、アンデル兄さまが選んだ相手なのだから、その辺りは心配していないのだけれど。それに、私はベガ様と婚約破棄になったのだから、こうして他の方と話をしていても問題ないと言える。

　私としても気が紛れて楽しいしね。


「私はベガ様と別れているので、世間的にも全く問題はありませんよ。スウィング様にお相手はいないのですか？」

「ああ、残念ながら。侯爵令息という肩書きで近づいて来る女性はいるけれどね」

「なるほど、確かに多そうですね」


　スウィング様はどうやら、肩書きだけの結婚には反対のようだった。詳しく聞いてみると、そういう縁談は全て断っているらしいのだ。つまり、私を気に入ってくれているということは……やはりそういうわけで。


「私はフリーダ嬢のことが以前から気になっていた。もしも良ければ、今後もよくしていただければ嬉しいのだけど」

「は、はい。それは問題ございません。私の方こそよろしくお願い致します！」

「ああ、よろしく」


　こうしてアンデル兄さまに紹介してもらったスウィング様と知り合うことになった。私も彼のことは少し気になっているので面白いかもしれない。

　そういえばベガ様はマリン・フォーグ公爵令嬢と一緒になっているだろうけど……上手く行っているのかしら？