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5話
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本日はアンデル兄さまによって連れて来られたわけで……貴族街のカフェに座っている。
「あの、アンデル兄さま……ここに連れて来られた理由はなんでしょうか?」
「ん? そういえば言っていなかったか。まあ、待っていればわかるさ。ははははは」
「兄さま……」
アンデル兄さまは私の質問に答えてくれなかった。兄さまのことだから、私に不利益が被ることはしないと思っているけれど。それでも不安感はどうしても芽生えていた。
「ふふ、フリーダにとっても決して不利益にはならないことだと思うぞ?」
「そ、そうなんですか? それなら安心ではありますが……」
アンデル兄さまは笑顔だった。兄さまがそこまで言われるのだから大丈夫だとは思うけれど。そんなことを考えていると、カフェの入り口が開く音がした。
「ええと……あ、アンデル! そこに居たのか!」
「ああ、スウィング。こっちだよ。わざわざ呼び出して済まない」
「いや……全然大丈夫だぜ。気にしてないから心配するな」
「そう言ってもらえて助かるよ」
なんだか元気な人が入って来た。スウィングと呼ばれた人は私と目が合う。
「そちらがフリーダ嬢に間違いないかな? 俺はスウィング・ボトルと申します。以後、お見知りおきを」
「スウィング・ボトル様……? はい、以後よろしくお願いいたします!」
私は慌てて挨拶を交わした。スウィング・ボトル様と言えば、侯爵令息に当たる人物のはずだ。
「兄さま……ええと、これはどういうことでしょうか?」
「ははは、まあ驚くのは無理ないかな」
アンデル兄さまは私が慌てているのにも関わらず、冷静さを保っていた。こういうのはズルいと思う。
「まあ、スウィングとは昔からの知り合いなんだよ。私が普通に話しているのは気にしないことだ」
「いえ……そこを気にしているわけではないのですが……」
アンデル兄さまの交友関係は広いと聞いているし、侯爵令息と関係があったとしても驚かない。それより驚きなのは、スウィング様と私を会わせたことだ。どういうつもりなのだろうか?
「スウィングは昔からフリーダを気にしていたのだよ。お前がベガ様と婚約してしまったので白紙にはなったが。婚約破棄した今なら特に問題はないだろう? つまりはそういうことだよ」
「おい、アンデル……」
スウィング様は照れている様子だったけれど、真っ向から否定している様子でもなかった。え、本当に……? 私はどうすれば良いのか分からないでいた。
「あの、アンデル兄さま……ここに連れて来られた理由はなんでしょうか?」
「ん? そういえば言っていなかったか。まあ、待っていればわかるさ。ははははは」
「兄さま……」
アンデル兄さまは私の質問に答えてくれなかった。兄さまのことだから、私に不利益が被ることはしないと思っているけれど。それでも不安感はどうしても芽生えていた。
「ふふ、フリーダにとっても決して不利益にはならないことだと思うぞ?」
「そ、そうなんですか? それなら安心ではありますが……」
アンデル兄さまは笑顔だった。兄さまがそこまで言われるのだから大丈夫だとは思うけれど。そんなことを考えていると、カフェの入り口が開く音がした。
「ええと……あ、アンデル! そこに居たのか!」
「ああ、スウィング。こっちだよ。わざわざ呼び出して済まない」
「いや……全然大丈夫だぜ。気にしてないから心配するな」
「そう言ってもらえて助かるよ」
なんだか元気な人が入って来た。スウィングと呼ばれた人は私と目が合う。
「そちらがフリーダ嬢に間違いないかな? 俺はスウィング・ボトルと申します。以後、お見知りおきを」
「スウィング・ボトル様……? はい、以後よろしくお願いいたします!」
私は慌てて挨拶を交わした。スウィング・ボトル様と言えば、侯爵令息に当たる人物のはずだ。
「兄さま……ええと、これはどういうことでしょうか?」
「ははは、まあ驚くのは無理ないかな」
アンデル兄さまは私が慌てているのにも関わらず、冷静さを保っていた。こういうのはズルいと思う。
「まあ、スウィングとは昔からの知り合いなんだよ。私が普通に話しているのは気にしないことだ」
「いえ……そこを気にしているわけではないのですが……」
アンデル兄さまの交友関係は広いと聞いているし、侯爵令息と関係があったとしても驚かない。それより驚きなのは、スウィング様と私を会わせたことだ。どういうつもりなのだろうか?
「スウィングは昔からフリーダを気にしていたのだよ。お前がベガ様と婚約してしまったので白紙にはなったが。婚約破棄した今なら特に問題はないだろう? つまりはそういうことだよ」
「おい、アンデル……」
スウィング様は照れている様子だったけれど、真っ向から否定している様子でもなかった。え、本当に……? 私はどうすれば良いのか分からないでいた。
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