婚約破棄の悲しみはお兄様が癒してくれました

4話

(ベガ・ストーム侯爵令息視点)


　私は成功を確信したのだ。フリーダ・ジェノス伯爵令嬢を追放してさらなる女性を獲得した。まさに完璧と言える人物を……。

　マリン・フォーグ公爵令嬢……私よりも地位が上の王族の親戚に当たる人物だ。貴族がトップの社会に於いては公爵が頂点に立つと聞いている。それだけを見てもかなり上位の人物だということが伺える。

　さらに美しい外見まで会得しているマリン嬢……私の婚約者としては間違いなくこれ以上はないと言えるだろうか。


　フリーダも美人ではあったが、あれは伯爵令嬢でしかない。私の今後を考えれば王族にも関係を持つマリン嬢と一緒になった方が確実と言えるだろう。


「ベガ様……少しよろしいかしら？」

「マリン嬢、如何なされましたか？」


　地位では私の方が下になる。彼女には最初は敬語を使っていた方が良いだろう。


「私との婚約を実現させていただいたことには大変感謝いたしますわ。私も19歳になりますので……そろそろ、身を固めたいと思っていたところですの」

「左様でございますか。それであれば丁度よい機会だったの言えるのでしょうか？」

「うふふ、そうなりますわね」


　う～む、やはり可愛らしい。私は21歳だが19歳の彼女に見惚れてしまっていた。ちなみにフリーダは17歳だが……彼女に比べるとお子様という雰囲気だな。

「でも、よろしいですの？　伯爵令嬢であるフリーダ様には別れを切り出したと聞いておりますが……」

「あ、いえ……確かにそういう話になったのは事実ですが、ちゃんと了解を得ていますので。心配には及びませんよ」

「まあ、それならよろしいのですけれど……」


　マリン嬢に心配を掛けるわけにはいかない。フリーダとのトラブルについては黙っておくべきだろう。まあ、明るみになる心配もないし、それほど気にすることはないのだが……。


「マリン嬢、よろしければこの後、出掛けませんでしょうか？」

「あら、どこかへ案内してくださいますの？」

「ええ、我が領地を案内させていただきますよ。如何でございますか？」

「それは楽しそうですわね。お願いいたしますわ」

「はい、喜んで」


　我が家が推進している事業などを公爵家に伝える良い機会だ。上手く行けば、資金援助なども可能かもしれないからな。ふふふ、良いことづくめとはまさにこのことだな。

「……随分と軽い男ね……」

「えっ、何か言いましたか？」

「いえ、なんでもありませんわ。うふふふふふふ」

　ん？　まあ、気にする必要はないか……ふふふ、私の栄光の道への第一歩が始まるというわけだ！