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29話 破綻 その1
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(キングダム侯爵視点)
「ど、どういうことですかな……ジェイド王子殿下……?」
「言葉の通りです、キングダム侯爵。フリックを懐柔し、何やら計画を練っているようですが……止めた方が良いでしょう」
急遽、私はジェイド第二王子殿下に呼び出されたのだった。その内容は、まさかのフリック王子殿下との共謀に関することだった。まさか、既にバレていたというのか……? いや、そんなはずは……。
「なぜバレているのか……そんな表情をしていますね」
「ははっ、何のことですかな……?」
「とぼけても無駄ですよ、キングダム侯爵。内通者が居ましてね、あなたも信用されていなかったようだ……フリックとの計画の大半は私のところに届いています」
「内通者……」
「本人の名誉もあるので、誰なのかは控えますが……あなた方はエラルド王国の貴族と共謀し、サンマルト王国の信用を失墜させる狙いがあるようですね?」
「……!」
「無言の肯定、といったところでしょうかね」
バカな……なぜ、よりにもよってジェイド王子殿下に知られているのだ……? ノーマークだったとは言わないが、私がアルゼイ王子殿下に集中し過ぎたのが原因か?
このままではマズイ……どうする? こうなったら、ジェイド王子殿下自身もこちら側に付けるとするか……?
------------------------
エリザ視点……。
「いくら、シャーリー嬢からのリークがあったとはいえ……敢えて、ジェイドに内偵作業をさせるか。なかなか、大胆な計画だったなエリザ」
「いえ、私達はどのみち疑われているでしょうから……それならば、キングダム侯爵達の視線をこちらに誘導させて、ジェイド王子殿下が裏から叩くという戦法が良いと進言したまでです」
「しかし、その戦法をすぐに思いついたのは流石と言えるだろう。現に今頃、キングダム侯爵は大変な思いをしているだろうからな」
「そうかもしれませんね……」
シャーリー嬢からの情報のリークがあったのは、1週間前の話だ。フリック様やキングダム侯爵には付いていけなくなったと……自分はどうなっても良いので、なんとかフリック様を止めて欲しいというのが彼女の本音だった。私達が睨んでいた通り、フリック様の言葉は全てが嘘で彼は改心などしていなかった。
しかし、シャーリー嬢としてはフリック様への罪を出来るだけ軽くしてほしいという願いがあるとのこと。だからこそ、彼女は裏切ったというのだ。まあ、フリック様の件もあったから簡単に信じることは出来なかったのだけれど。
そこで私の出した案は、ジェイド王子殿下に協力してもらうことだった。シャーリー嬢が改心しているかどうかを判断するのは、どうしても時間が掛かってしまう。だから、裏からジェイド王子殿下に動いてもらうことを、アルゼイ様に提案したのだった。
「フリック、キングダム侯爵は完全に私達に注意を向けていたはずだ。ジェイドがこの機会に意味ありげなことを言えば……証拠も完全に固められていると勘違いするだろう」
実は私達は、フリック様やキングダム侯爵がエラルド王国と共謀している、若しくは王位継承争いでどんな真似をしようとしているのか分かっていない。ただ、何となく怪しいと思っている段階だ。しかし、事は急を要するのですぐに実行に移されていた。
自分の計画が上手く行っていると過信している者ほど、突然の責め立てには弱いものだ……それが、基本的にはノーマークだったジェイド王子殿下から言われれば猶更である。
キングダム侯爵は今頃、焦りに焦っているでしょうね。
「ど、どういうことですかな……ジェイド王子殿下……?」
「言葉の通りです、キングダム侯爵。フリックを懐柔し、何やら計画を練っているようですが……止めた方が良いでしょう」
急遽、私はジェイド第二王子殿下に呼び出されたのだった。その内容は、まさかのフリック王子殿下との共謀に関することだった。まさか、既にバレていたというのか……? いや、そんなはずは……。
「なぜバレているのか……そんな表情をしていますね」
「ははっ、何のことですかな……?」
「とぼけても無駄ですよ、キングダム侯爵。内通者が居ましてね、あなたも信用されていなかったようだ……フリックとの計画の大半は私のところに届いています」
「内通者……」
「本人の名誉もあるので、誰なのかは控えますが……あなた方はエラルド王国の貴族と共謀し、サンマルト王国の信用を失墜させる狙いがあるようですね?」
「……!」
「無言の肯定、といったところでしょうかね」
バカな……なぜ、よりにもよってジェイド王子殿下に知られているのだ……? ノーマークだったとは言わないが、私がアルゼイ王子殿下に集中し過ぎたのが原因か?
このままではマズイ……どうする? こうなったら、ジェイド王子殿下自身もこちら側に付けるとするか……?
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エリザ視点……。
「いくら、シャーリー嬢からのリークがあったとはいえ……敢えて、ジェイドに内偵作業をさせるか。なかなか、大胆な計画だったなエリザ」
「いえ、私達はどのみち疑われているでしょうから……それならば、キングダム侯爵達の視線をこちらに誘導させて、ジェイド王子殿下が裏から叩くという戦法が良いと進言したまでです」
「しかし、その戦法をすぐに思いついたのは流石と言えるだろう。現に今頃、キングダム侯爵は大変な思いをしているだろうからな」
「そうかもしれませんね……」
シャーリー嬢からの情報のリークがあったのは、1週間前の話だ。フリック様やキングダム侯爵には付いていけなくなったと……自分はどうなっても良いので、なんとかフリック様を止めて欲しいというのが彼女の本音だった。私達が睨んでいた通り、フリック様の言葉は全てが嘘で彼は改心などしていなかった。
しかし、シャーリー嬢としてはフリック様への罪を出来るだけ軽くしてほしいという願いがあるとのこと。だからこそ、彼女は裏切ったというのだ。まあ、フリック様の件もあったから簡単に信じることは出来なかったのだけれど。
そこで私の出した案は、ジェイド王子殿下に協力してもらうことだった。シャーリー嬢が改心しているかどうかを判断するのは、どうしても時間が掛かってしまう。だから、裏からジェイド王子殿下に動いてもらうことを、アルゼイ様に提案したのだった。
「フリック、キングダム侯爵は完全に私達に注意を向けていたはずだ。ジェイドがこの機会に意味ありげなことを言えば……証拠も完全に固められていると勘違いするだろう」
実は私達は、フリック様やキングダム侯爵がエラルド王国と共謀している、若しくは王位継承争いでどんな真似をしようとしているのか分かっていない。ただ、何となく怪しいと思っている段階だ。しかし、事は急を要するのですぐに実行に移されていた。
自分の計画が上手く行っていると過信している者ほど、突然の責め立てには弱いものだ……それが、基本的にはノーマークだったジェイド王子殿下から言われれば猶更である。
キングダム侯爵は今頃、焦りに焦っているでしょうね。
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