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17話

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「それで? 聞かせてもらえるか、リシェル嬢。ローザを慕ってこの屋敷に勤めていた、メイドに彼女の好物を作らせていたのか?」

「あ……そ、それは……!」


 リシェルは完全にバルサーク様に言い包められている。こんな妹の姿を見るのは初めてかもしれないわね。責める人の身分が違うだけで、ここまでリシェルの態度に差が出るなんて……彼女の姉であることが恥ずかしくなってくるレベルだわ……。


「もう一度聞くぞ? 事実なのか?」


 リシェルは歯を食いしばっている。本当なら首を横に振りたいのだろうけれど、嘘を吐いたらどうなるかは分かっているはず。また、状況的に嘘かどうかなんてすぐに分かるしね。


「は、はい……事実です……」

「なっ!? リシェル……私を追い出しただけじゃなく、使用人達にも酷いことをしたというの!? どうして……」


 私は心の底ではリシェルを少しだけ信じていた。それだけに、彼女の回答には驚きを隠せない。なぜ私だけでなく、使用人達にまで酷いことを……本当に意味が分からなかった。


「そんなの決まっているでしょう?」

「なんなの?」

「ローザ姉さまを追い出して、その後にあなたに忠誠を誓っていたメイド達に、姉さまの好物を作らせる。それで、私がそれを優越感に浸りながら食べるのよ……あはははは、全部、バルサーク様の言った通りよ」


「り、リシェル……?」


 確かにバルサーク様の言う通りだったのかもしれないけれど、ここまで全てをさらけ出すとは思っていなかった。しかもやっていることが異常だ……そんなことで優越感に浸って万能感に酔いしれるなんて。

 そもそもの問題として、そんなことで優越感に浸ること自体がおかしい……私は彼女の精神が大きくねじれていると考える以外に正解を見出せなかった。


「全てはリシェル様の力ではありませんね」

「はあ? なにか言った、バーン? この裏切り者……!」


 この話題に入って来たのは意外にも、執事のバーンさんだった。表情などは穏やかに見えるけれど……。


「裏切り者ではありません。元々、私はバルサーク様の部下でしたので」

「あっそう、どうでもいいけどね。それで? なんなのよ?」


 リシェルは開き直っているのか、どんどん口が悪くなっていく……これ以上は見てられないかも。


「リシェル様のかざしている力は全て他人の力に過ぎません……デナン・モルドレート侯爵もある意味ではとばっちりになるでしょうね。可哀想に……」

 そう言いながら、大きく溜息を吐いたバーンさんだった。バルサーク様も無言で頷いている。確かに、デナン様はむしろとばっちりになるかもしれないわね……。リシェルがどこまで暴走するかの予想は出来なかったのかしら?
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