攻撃力と防御力共に最強クラスになっているので、パートナーと一緒に無双します!

マルローネ

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2話 パートナー

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トレジャーハントによる一攫千金の街、アーカーシャ。英雄の遺した遺産が各地に点在しており、それを見つけて一生を過ごすことを夢見る者達も後を絶たない。見つけた宝石などの種類によっては生活の心配がない程の高値になることもあるが、それと付随するのはモンスターやトラップなどによる死のリスクである。

 冒険者は常に死と隣り合わせの職種であり、昨日酒を交わした仲間が既にあの世に行っている可能性もあるのだ。その為に、冒険者はリスクを減らす目的でコンビやパーティを組む方向に流れる。

「まあそんなわけで、パートナーっていうのは大事なわけ」
「話はわかったけど、アメリアは今まで組んでなかったんだろ?」

 春人がアーカーシャの街に来て1か月。アメリアと組んでから3週間程度ではあるが、実力は高くとも、まだまだ冒険者の心構えを体得していない春人に、本日も座談会が行われていた。といっても、アメリアと酒盛りをしているだけだが。

「春人に会うまで、実力的に釣り合う相手がいなくてさ。……まあなんていうの? 一人で十分だったし」
「そう言えるアメリアはやっぱりすごいな」

 春人とアメリアは、現在はオルランド遺跡と呼ばれる迷宮を探索している。2年前に見つかったばかりの新しい遺跡ではあるが、出現するモンスターのレベルは非常に高く、現段階では熟練の冒険者以外は侵入を許されていない。春人とアメリアはそんな遺跡の6階層まで既に向かっていた。
 熟練の冒険者ですら命を落とす危険のある遺跡。アメリアはともかく、新人の春人が侵入を許可されている時点で彼の能力の高さは疑いようがない。

「でも今後、オルランド遺跡のさらに奥に行く場合は、私でも危険になるかもしれない。そんな時にびっくりするくらいの掘り出し物だったわ」
「人を物みたいに言うのはやめてくれよ」

 アメリアの冗談と言える言葉に、春人は笑った。自分と同じ歳の少女。金髪のショートカットに端整な顔立ちをしている彼女と何気ない会話を楽しんでいる。こんなこと、日本では考えられないことだった。

常に日陰者で高校に通っており、時にはいじめの対象にすらされていた現実。それが、一流の冒険者であるアメリアと話せているのだ。人生というものはなにが起きるかわからない……春人はそんな考えを持っていた。

「アメリアは10歳から冒険者になったんだろ? なんでそんな歳から」
「私、両親を盗賊に殺されたからさ。冒険者やるしかなかったのよ、身寄りがないから」

 思ったよりもシリアスな理由に、彼も言葉を詰まらせた。

「バーモンドさんの所でしばらく下宿させてもらってたから、今の春人と似てるかも」
「なるほど、バーモンドさん経由で冒険者になったのか」
「うん、そういうこと。もう7年も経つのよね……私はまだ17歳だけど、多分遺跡を攻略した数は誰にも負けないんじゃないかな」

 アメリアは両手の指ではとても数えられない程の遺跡数を大雑把に数えて見せた。春人にも分かるように大げさにしているのだろう。

「去年の今頃にはギルド長から冒険名誉勲章を授与されたわ。非常に大きな功績を残した人への勲章だけど」

 冒険名誉勲章……この勲章を授与された者は、現役の冒険者ではアメリアのみとなっている。この事実だけで彼女を名実共に最強の冒険者と呼ぶ者も多い。オルランド遺跡を発見したのも彼女なのである。

「でもさ、結構心配なんだけど」
「なにが?」
「あなたの存在よ。今は最強の冒険者とかって言われてるけど、春人に抜かれて行くかもしれない。うかうかしてられないわ、あなたをパートナーに選んだのはそういう側面が大きいわね」

 自らの近くに置いておくことで、常に実力差を把握しておく。彼女はそう付け加えた。勝気な側面もあることを知った春人は少し笑ってしまった。


「なに笑ってるのよ? あなたの才能には感服するけど、そう簡単に私に追いつけるなんて思わないでよね」
「わかってるよ、この前の亡霊剣士やバジリスクを倒した動きを見たときに、アメリアの強さを再確認させられた」

 春人はその時の情景を思い浮かべていた。場所はオルランド遺跡6階層、その場所はレベル40以上のモンスターも普通に発生する危険地帯であった。

冒険初日に春人がなんとか倒した亡霊剣士も出現している。彼女はその程度のモンスターであれば危なげなく倒せる実力を秘めていたのだ。春人もこの3週間の間に急速な成長、いや戦闘馴れをしており、亡霊剣士であればたやすく仕留められるようにはなっていた。

「まったく、春人はまだ冒険者になって1か月経ってないでしょ? それで亡霊剣士を簡単に倒せるようになるなんて……信じられないことよ」

 アメリアは春人の賞賛の言葉に対して、特に喜んではいなかった。7年間の経験値から換算すれば、容易いのは当然という見解なのだろう。

「まあいいわ。それより、今日もオルランド遺跡に行く?」

 アメリアはそこで話を打ち切った。最近はオルランド遺跡攻略が、二人の日課になっていたのだ。

「そうだね、そうしようか」

 春人もそう言って彼女の意見に賛同した。バーモンドの酒場「海鳴り」での仕事は最近はしていない。
バーモンドとしても冒険者になった彼に頼むことも少なくなってきており、代わりにいくらかの宿泊費を取ることに変更したのだ。オルランド遺跡を攻略している彼にもいくらか金銭に余裕が出てきたためだ。そして二人は本日もオルランド遺跡へと向かう。


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「ただの丘だと思ってたのに、まさか地下に迷宮が広がってるなんてね」

 アーカーシャの郊外のテロス丘陵、その一区画にオルランド遺跡の入り口はそびえ立っていた。といっても2年前に発見されるまでは素通りされていたので、ただの地面に階段が見つかっている状態だ。見た目には迷宮になっているとは信じられない。

「この周辺地域も、今は立入制限されてるんだな」
「うん、遺跡が見つかってからは外にもレベル30程度のモンスターが出るときあるからね」

 オルランド遺跡が発見されてから、モンスターの徘徊が入り口周辺にも及ぶようになった。これは魔法の作用による一種のトラップのようなものだ。その為、テロス丘陵の一区画は現在、熟練冒険者以外の侵入を禁止している。

「英雄の遺した遺跡か……」
「フィアゼスの遺跡、これもその1つね」

 英雄フィアゼス……この大地の全てを手に入れたとされる人物。1000年前の偉人であり、文献によれば、フィアゼスは手に入れた宝を宝物殿に格納したとされている。そして、強力なモンスターにそれらを守らせた。
それが、1000年の時を経て次々と遺跡という形で発見されているのだ。フィアゼスの遺した宝物殿、それが各地で発見されている遺跡の正体でもあった。

「フィアゼスはこの大地の全てを支配下に置いたとされているけど、拠点はアーカーシャ周辺、つまりはバンデール地方とされているわ。だから、アーカーシャという街が作られ、トレジャーハントの稼業が活発になった」
「遺跡の多くがバンデール地方から出現するのもそういうわけか」
「そういうこと」

 春人とアメリアは話しをしながら、オルランド遺跡へと脚を踏み入れた。目指すは6層になる。

「1000年前の全てを手に入れた英雄か、そんな人物は実在したのかな?」
「さあ? あくまで文献の中の話だし。ただ、北に位置するアルトクリファ神聖国はフィアゼスを神として信奉している。フィアゼスの配下、若しくは遺志を継ぐ者が建国した国家と言われているわ」

 春人はアメリアの話を聞きながら、この世界に関する知識を知る為に、耳を過敏に傾けていた。まだここに来て1か月の春人には知らないことが多すぎた為だ。


「まあ、それが色々と不味いことになってるみたいだけど」
「まずいこと?」

 少し込み入った話になってきたが、春人としては興味が湧いてきた。先の話が気になり彼女に急かすように問いかけた。しかし、アメリアは話をそこで中断させた。春人も彼女が中断させた理由は瞬時に理解した。二人の会話に水を差すように客人のお持て成しがあったのだ。

「来たわね」
「ああ、みたいだね」

 前方にモンスターの気配を感じた二人はそれぞれ戦闘態勢へと入った。春人は鉄の剣、アメリアは魔導士が持つ杖を手にしている。白いシンプルな形だ。

「ゴブリン達ね。レベルは15ってところかしら? まあ余裕だと思うけど、気を抜かないようにね」
「わかってるよ、正直、まだまだ余裕出せる精神なんて持ってない」

 鉄の剣を持った春人は、前方から現れたゴブリンに視線を向けた。自分よりもやや小柄な体格をした獣人が同じく剣と盾を持っている。その数は10体が確認された。

「じゃあ、行くぞ!」

 春人はそのまま走り出し、10体のゴブリンの中心を抉り取るように剣を振りぬく。振りぬいた鉄の剣は3体のゴブリンの胴体を切り裂きあの世へと連れて行った。他のゴブリンは春人に警戒するが、すぐに態勢を立て直して春人に向けて剣を突き出した。

「残念、春人にそんな攻撃は効かないわ」

 ゴブリンの攻撃は確かに春人に命中していたが、彼は痛がる様子も見せずに即座に反撃を開始した。2撃目でさらに2体のゴブリンを葬った。

「あれが春人の実力。魔法は現段階では使えないようだけど、それを補って余りあるほどの身体能力の高さ。単純に剣を振り回すだけで、防御の高さと相まって誰も進撃を止められない重戦車みたいになる。あれで剣技とか覚えたらどうなるのかしらね」


 春人の無双状態を遠目から観察しながら、アメリアは満足そうに語っていた。そんな状況でも戦闘は続けられていくが、アメリアは加勢する様子は見せない。二人で協力しなければならない敵など未だに現れていないからだ。

 気付いた時には、残ったゴブリンは1体。完全に戦意を喪失しており、持っていた武器を捨ててアメリアの方向に猛ダッシュを開始した。

「ちょっと、仕留めそこなってるじゃない」
「ごめん、アメリア。任せる」

 アメリアは軽く溜息をつくと、手に持つホワイトスタッフを掲げる。その瞬間、生み出された業火はゴブリンを瞬時に飲みこみ、絶命の悲鳴を上げさせる間も無く黒焦げにした。

「う、臭い……ゴブリンって変な臭いするし」
「自分でやっておいて何言ってるんだ。ところでありがとう。さすが大魔導士さま」
「それ、ちゃんと褒めてる?」
「もちろん」

 二人はモンスターが全員死んだことを確認してから、軽く言葉を交わしハイタッチで締めくくった。二人が倒したモンスターはそれからすぐに液体状に溶けて行き、いくつかの結晶が残った。

「結晶石……これがお金に換えられるわけか」
「色々なエネルギーの原石に使えるからね。強いモンスター程、残す結晶体も高価だわ。勲章代わりに持つ人もいるくらいだし」
「モンスターの身体が消えて無くなるのも変な気分だ」

 生き物が死んだ場合は年月をかけて骨になっていく。一種の常識ではあるが、春人はここへ来て、何体ものモンスターがその場で溶けていく光景を目の当たりにしている。

「魔法生命体だから……だっけ」
「うん。モンスターは基本的には魔法の能力で作り出されたの。そこから繁殖して独自の生態系などは築いている場合もあるけど、基本は変わらない。そこが通常の動物とは違うところね、死ねば骨が残らずその場で消え去るのよ」

 以前にも聞かされた言葉ではあるが、春人は改めて感心させられた。こんなモンスターを生み出す能力や技術に。

「凄い能力だね……生き物を創造するなんて」
「ま、そうよね。遺跡のモンスター達はフィアゼスが遺した物だろうけど、モンスターを作り出す技術自体はさらに以前からあったみたいだし。それこそ何千年も前からね」

 はるか太古から現代まで語り継がれる技術の歴史。アメリアは倒したゴブリンの結晶体を拾いながら、ある種の尊敬の念を込めてそれらを眺めていた。春人からすれば、まだ驚きの方が勝っているといった表情だ。

「モンスターは迷惑極まりないけど、私達冒険者の食い扶ちになっているのは間違いないわ。そう考えると不思議な感じよね」
「素直には喜べないけど、モンスターが完全にいなくなっても困るってことかな」
「生活の面で困ることは増えるわね。それもすぐにわかると思うわ、それじゃ行きましょう、パートナーさん」

 アメリアの言葉に春人も頷く。そして、二人はオルランド遺跡の6階層を目指して奥へと消えて行った。
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