攻撃力と防御力共に最強クラスになっているので、パートナーと一緒に無双します!

マルローネ

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47話 是正を促す者たち その2

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「おう、お前らかよ。相変わらず、こんな底辺の階層で飯のたね漁りか?」
「ゴイシュさん、お疲れ様です」

 ゴイシュの皮肉を無視するかのように、ヘルグは直立不動でゴイシュに挨拶をした。ただの決まり事と同じだ。そこには尊敬の念など微塵もない。ゴイシュもそれは気付いている。

「はっ、ラムネを取られたからか? それとも悟の野郎を苛めたせいか? 前よりもさらに機械的になってるじゃねぇか。ええ、ヘルグ」

 ゴイシュは以前から、ヘルグの機械的に態度に不快さを持っていた。それがだんだんと増していっているので、余計に腹立たしいのだ。

「……いえ、そんなつもりでは……」
「はっ、覇気がねぇな本当に。文句があるなら、向かってこいよ、三下が」

 ゴイシュからの挑発は明らかにエスカレートしていた。Dランク冒険者であるヘルグがCランク冒険者であるゴイシュを倒すことはできない。自然の摂理の如き単純な図解があるからこそ、ゴイシュの態度はここまで不遜なのだろう。

 現に、大柄な男であり、こういった事態が大嫌いな印象を受けるレンガートも、ゴイシュの前では静まり返っている。

「全く、驚くほどに手ごたえのない連中ですな」
「ねえ、ゴイシュ。私がやっちゃってもいいわけ?」

 ジスパ、キャサリン共に格下を見下すような目線で、悟たちを見ていた。

「まあ、待ちな。こいつらも寄宿舎の仲間だ? なあ?」

 ゴイシュは、キャサリンに手を出させることは許さなかった。だが、

「うぐっ……! ……っ!」

 これ見よがしに、ゴイシュはローブの上からラムネの尻を弄った。彼女は汚物でも見るような表情でゴイシュを睨んでいる。しかし、恐怖が勝っているのか、ラムネもそのまま動くことはできないでいた。

「てめぇ……!」

 その行動には、さすがの悟も我を忘れた。以前の、ゴイシュへの反抗とは違う。明らかな敵意を見せながら、悟はゴイシュに攻撃を仕掛けようと近づいた。その攻撃が通じず、逆に骨を折られかねないことなど、今の悟は考えていない。

「ん?」

 そして、悟の敵意に感付いたのか、ゴイシュは彼の方向を見た……。

「おおっと、ゴイシュさん! ところで、あんたは何階層まで行ったんだ!?」

 間一髪とはこういうことを言うのか。悟がまさにゴイシュに殴りかかろうとした瞬間、レンガートがベストタイミングでゴイシュの注意を逸らしたのだ。

「……!」

 悟はレンガートのその動きで、一気に冷静さを取り戻した。同時に、あと一歩で自分がどうなっていたかわからない状況だったことを感じ取る。レンガートはそんな悟を、さりげなく押し出し、ゴイシュから離した。


「俺たちか? 20階層まで行ってきたぞ。お前らは何階層まで行けるんだ?」
「俺たちは10階層程度だ、さすがはゴイシュさん。20階層と言えば、レベル20以上のモンスターも大量に発生するだろう?」
「まあな、だが俺たちの敵ではない。ま、てめぇらも少しは精進して、俺らに追い着けるよう努力するんだな。行くぞ」

 ゴイシュはレンガートの言葉が嬉しかったのか、機嫌は相当に良くなっていた。キャサリンとジスパの二人を引き連れてそのまま歩いて行った。

「キャハハハハ、じゃあね~ぼくちゃん達!」
「ほほほ、自らの身分をわきまえることですな」

 去って行く最中、聞こえたキャサリンとジスパの捨て台詞。それを聞いたレンガート達は頭を抱えながらため息をついた。

「……くそ、あんな連中に媚びへつらわないといけないとはな……情けねぇ」


 レンガートは心の底から虫唾が走っているのか、相当な憤りを表情に出している。

「……なんで」

 悟は怒りの表情をしていた。それは、彼ら「ハインツベルン」に対して怒りではない。同じパーティに対しての怒りだ。尻を触られて怒らないラムネ、頭の上がらないヘルグ、そしてゴイシュの機嫌を取るレンガートに対してだ。

 特に剛腕のレンガートの異名を持つ彼に対しては、悟の怒りは最高潮に達していた。レンガートはゴイシュに恐れてはいないと信じていたからだ。

 余計な争いは避けるが、本当の争いになれば格上だろうと反旗を翻す……レンガートの大声をうざく思っていた悟だが、ある意味で「フェアリーブースト」最強の彼を信頼していた節がある。それだけに悟の落胆は大きい。

「あんなことを言われて、反抗しないあんた達を……俺は軽蔑する……!」

 悟の心の底から浮かび上がった本音であった。春人への軽蔑など、人間としての器が小さい発言の悟ではあるが、この時、この瞬間は自らの本音を本気で吐露していたのだ。

「耳が痛いな……」

 ヘルグは悟に笑みをこぼしていた。悟としては、彼の発言はより逆鱗に触れる。

「なにも、言い返さないのですか?」
「まあ、待て。落ち着け、悟」
「ええ、少し落ち着いてほしわ。あなたが、そんなに激情型だとは思わなかったけど」
「……?」

 話が見えてこない。悟はここで、初めて彼らが言い訳をしないことになにか理由があるのではないかと思い始めた。自分も強くなったとはいえ、まだまだ彼らの方が実力は上なのだ。
 言い訳……というより、悟を黙らせる発言はいくらでも可能だろう。悟も薄々思っていたことだ。


「お前の言う通り、感情に任せるのは可能だ。俺たちが戦いを挑んでも、負けるのは100%だが、「ハインツベルン」も命までは取らないだろう。そういう意味では、戦いを仕掛けるのも1つの方法ではある」

 ヘルグは悟に対して、諭すように話した。悟も彼の落ち着いた口調に、先ほどまでの激昂が嘘のように萎んで行くのを感じた。

「だがな、俺たちが反抗して、俺たちがやられるだけではすまねぇんだよ」
「こんなでもDランク冒険者。慕ってくれる冒険者も居るしね、同じ寄宿舎内に」

 悟はレンガートとラムネの言葉で目が覚めたような錯覚に見舞われた。実際、心を打たれた言葉ではあるが、感情任せに言ってしまった自分を責めたい衝動に駆られていた。
 彼らは決して臆病風に吹かれていただけではない。悟も直感としてそれはすぐに理解できた。

 ヘルグ達が対抗意識を燃やせば、彼らを慕い付いて来る者達がまとめて「ハインツベルン」にやられてしまう恐れがある。全てはそういうことだったのだ。もちろん、彼ら自身が「ハインツベルン」を単純に恐れているというのもあるだろうが。

「すみません……言い過ぎました。よくわかりもせずに」
「いや、俺はむしろ喜んでるぜ。お前が思った以上に熱い奴だったことがな!」

 レンガートからの今までで一番の褒め言葉。彼は、悟の肩に大きな手を当て、そう言ったのだ。悟は多少はうるさく思いながらも、その一件だけで、レンガートに対する好感度が大幅に増えていた。

 ラムネやヘルグに対しての信頼感も大幅に向上したと言える。彼らの探索は結局は悟のレベルを考慮され、3階層で引き返しとなったが、彼らが今回の探索で得たものは非常に大きかったと言えるだろう。その日、悟はめずらしくよく眠ることができたという。

 そして、日付はすぐに刻まれ、「センチネル」が寄宿舎を訪れる日付に合わさった。
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