攻撃力と防御力共に最強クラスになっているので、パートナーと一緒に無双します!

マルローネ

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48話 是正を促す者たち その3

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「ゴイシュさん、僕たちがここに来た目的は分かってますよね?」

 是正勧告に訪れたのはアルマークとイオの二人。入り口に立って、二人を出迎えたのはゴイシュであった。

「ああ、もちろんだ。とりあえず入りな、本日付でAランクの冒険者。歓迎しますぜ」

 ゴイシュはアルマークとイオを入り口でもてなすと、そのまま奥へ入るように促した。彼らも最大限の警戒はしているが、是正勧告を行う以上寄宿舎内に立ち入らないわけにはいかない。

「初めてかは知らないが、この寄宿舎は底辺冒険者の掃き溜めだからよ? 妬みなどで色々されるかもしれないが、注意してくれや」

 ゴイシュはそう言いながら、アルマークの隣のイオに目をやった。7分袖の青いベストに下はスパッツを穿いている。鍛えられたしなやかな下半身は、ゴイシュの心を動かすには十分すぎた。

「実際、行動を起こす危険な人って目の前のあんたくらいでしょ? あ~やだやだ、なんか視線感じるんだけど。アルマーク助けて~」

 冗談っぽくアルマークの後ろに隠れて、ゴイシュを挑発するイオ。ゴイシュは無表情だったが、イオのその態度は琴線に触れていた。

「イオ、そんな挑発したら駄目だよ。僕たちは是正勧告で来てるんだから」
「へへ、わかってるって! まあ、万が一襲われても、私達が目の前の変態に負けるわけないしね」

 アルマークにじゃれ付きながらイオはゴイシュを見た。底辺のボスとして君臨し、勘違いをしながら周囲の冒険者に迷惑を掛けているこの男。

 自らをいやらしい目つきで眺めてくるゴイシュを、イオは完全に毛嫌いしていた。アルマークもゴイシュに対する感情は同じである。

「ち、くそ女が……見てろよ」

 苛立ちの表情を浮かべるゴイシュはイオ達に聞こえないように小声でつぶやいた。


----------------------------------------------



「フィアゼスの神経ガス?」
「ああ、これは噂だけどな……ゴイシュ達が手に入れている可能性はある」

 その頃、別室では「フェアリーブースト」の面々が「ハインツベルン」の作戦について予想をしていた。話しているのは悟とヘルグだ。


 今回、アルマークとイオは事実の裏付けとしてアトランダムに冒険者の意見を聞いて回る。形式的なものではあるが、今までの内定調査の結果と併せて、ゴイシュに是正勧告をするのだ。
 万が一、改善が見られない場合はゴイシュ達のパーティは問答無用で追放される。物理的な力で劣るゴイシュには逆らう術などはない、かなり強制力の大きな勧告になっている。

「フィアゼスの名を冠するだけあり、相当な強者にもそのガスは通じるらしい。元々はアルゼル・ミューラーが持っていたらしいが」
「その男からゴイシュが譲り受けていた場合は、そのガスをゴイシュが使う可能性があるってことですね?」
「ああ、それ以外でゴイシュが「センチネル」に勝てる術はないだろうからな」

 ヘルグはゴイシュがそんなガスを持っているかどうかも確信は持てないでいたが、ゴイシュのあの余裕の表情から、ガスの所有は間違いないという結論を導き出していた。

 悟は考えを巡らせた。アルマークは少なくとも、同じ剣を交えた相手。まだ、知り合って日は浅いがアルマークとイオの二人がゴイシュに手籠めにされてしまうのは許しがたい。なんとか助けられないか。


「まあ、相当ヤバいな。とくにイオがどうなるかは想像通りだろ」

 ヘルグも悟と同じ考えを持っていた。悟としても、以前ゴイシュから直接言われていたことを思い出した。ゴイシュはあの二人に相当に執着している。必ず成功する罠は仕掛けられていると見るべきだろう。

「助けたいのはわかるが、お前は足手まといだからな」
「レンガートさん」
「そうね、悟はまだまだ弱いからね」

 部屋に入って来たのはレンガートとラムネだ。悟の考えを先読みして話し出した。

「そもそも、俺たちじゃアルマークとイオの足下にも及ばないしな。本来ならあの二人の心配は余計なお世話だろ」

 レンガートはさも当然のように言った。剛腕と言われるだけあり、彼はとても大きな体つきをしているが、アルマークやイオとの力比べでも全く及んでいない。通常であれば、あの二人への心配など不要だった。

「でも、神経毒で身体の自由が利かない状態だと、あの二人とゴイシュの強さは逆転するかもしれないわ」
「それが、あの男の狙い……?」

 強力な神経毒による身体能力の低下。いくら、フィアゼスの神経毒という名称が付いた毒であっても、二人を完全に行動不能にできる可能性は低い……ならば、ゴイシュ達からすれば拘束できるようになるほど、身体能力が低下すれば御の字という結論に至るわけだ。

 「ハインツベルン」はそのように考えている……「フェアリーブースト」の中でそういった考えが思い浮かんでいた。「ハインツベルン」の計画を阻止する必要がある……彼らとてやられっぱなしは我慢ならないのだ。

「よし、いいか? これからのことをよく聞いていてくれ」
「は、はい……」

 そう言うと、ヘルグは悟に何かを話し始めた。


-----------------------------------------


「寄宿舎の環境ですか……まあ、悪くはないと思いますね。ただ、一部上位の人らを除けば」
「そうですか、わかりました。貴重な意見、ありがとうございます」

 各々の冒険者に寄宿舎の状況をアトランダムに質問をしていくアルマーク。ゴイシュは離れたところにいるので、こちらの声は聞こえてはいない。

「おかしい……、彼らが言わされてるようには見えないや」
「そだね、普通に思ってること言ってるように見えるね」

 アルマークとイオの二人はゴイシュが、寄宿舎の冒険者に脅しをしているのではないかという懸念は持っていた。その為のアトランダムの質問なわけではあるが、彼らに質問をされた冒険者も脅しをかけられている雰囲気は少しもなかった。

「考え過ぎだったかな?」
「油断は禁物だよ、アルマーク。私達は是正勧告するだけだから。あとは、本部がやってくれるよ」

 アルマークとイオは今回は経験の意味を込めて、表面的な部分を行い、勧告をして完了だ。それ以後は本部の仕事となり、もしも力に訴えた場合はジラークなどが投入される。つまり、反抗する間も無く殲滅されることは決定事項であった。

 ゴイシュの命運はほぼ決まっていると言っても差し支えはない。彼ら「ハインツベルン」は既に強制的に排除されるレベルまできていたのだ。

「それでは、一度、僕たちは戻ります。正式な処置は後日の是正具合で決まります」
「つまり、あれですかい? 俺は改善しないとダメなんですかい?」
「あたりまえじゃん。少なくとも、寄宿舎のトップからは下りてもらうから!」

 力強いイオの発言。しかし、ゴイシュは何も言い返すことはない。アルマークは彼の無言を変に思っていた。この状況で言い返さない理由が分からないでいたのだ。




「なんとか言いなさいよ!」
「いや、イオ……なにか、変だ」

 攻撃の準備をしているのか……アルマークはゴイシュから何が飛んで来てもいいように、迎撃の準備を整えた。この状態であれば、ゴイシュ程度の攻撃はたやすく弾ける。

 しかし、彼からはなにも飛んで来ない。代わりに、彼らの後ろからジスパとキャサリンの二人が現れた。

「あ~、「ハインツベルン」の総力で戦うつもりなんだ? でも無駄だし」

 イオも拳を構える。手に付けているナックルでいつで攻撃可能な態勢を取った。キャサリンもジスパも何も話すことはない。

「……!? ……しまった、イオ……!」
「え……アルマーク……!?」

 身体を揺らすアルマークに、イオは怪訝な表情を見せた。なにか彼の体調に変化が現れたと直感したのだ。だが、その変化はイオ自身にも現れた。

「く……!? 身体が……! 動かない……」
「こいつら、息をしていない……。神経毒を散布しているんだ……」

 アルマークは周囲を警戒し、ゴイシュ達の呼吸音が消えていることに気付いたのだ。しかし、全ては遅かった。既に周囲には神経毒が撒かれた後だったからだ。そして、タイミングを見計らってか、キャサリンが風を巻き起こし、周囲の霧状の毒を吸い寄せ、息ができる状態に戻した。

「ぷはっ! かなりやばいってこれ! もうちょっとで倒れるところだったわよ」
「ふう……効くまでの時間も相当ですな。さすがと言えましょうか、ほほほ」
「だが、効果はてきめんだ。フィアゼスの神経毒「レメディガス」。神経毒として相当強力な代物だからな」

 呼吸をただしながら、ゴイシュたちは勝利を確信していた。目の前のアルマークとイオは既に視界すらぼやけている状態だ。この状態で自分たちが負けるはずはない。「ハインツベルン」は薄汚い欲望の笑みを浮かべながら、アルマークとイオを蹂躙し始めた。
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