攻撃力と防御力共に最強クラスになっているので、パートナーと一緒に無双します!

マルローネ

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51話 それぞれの出発 その1

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「……そんなことが、あったんですね」

「うん、イオもアルマークも無事で良かったよ。もう少し遅ければ、悟だってどうなってたかわからないし」




 街の西部の釣堀で話しているのは春人とエミルの二人だ。エミルはいつもの制服ではなく、私服で立っていた。白い半袖のシャツに黄土色のスカート穿いている。丈はやや短く、膝が完全に見えるくらいの長さであった。




「寄宿舎はどうなるんでしょう?」

「フェアリーブーストが次のリーダーみたいになるみたいだよ。トラブルが起こらないように、色々な規定も設けられるらしいよ」




 春人はエミルに言ったが、彼も詳しい内容までは知らされていなかった。ただし、二度とゴイシュのような輩が現れないように配慮は徹底されるとは聞かされていた。




「そうなんですね。なんにせよ、よかったです。私は一般人ですが、噂であの寄宿舎のことを聞いたこともありましたから」




 エミルはどういう噂かまでは言わなかった。しかし、春人としても良くない噂であることはすぐに理解する。今後はそういった噂は消えていくだろう。







「悟……さんとも仲直りできたんですか?」

「元々、喧嘩はしてないけど、まあ少しは仲良くなったのかな?」




 春人は、昨日のことを思い出す。初めて受けた悟からの感謝の言葉。思いの外、春人の気分を高揚させ、悟への親愛の情が浮かんでいたのだ。同じ冒険者として、今後も協力し合う時もあるかもしれない。少しでも仲が良くなったことは非常にプラスになるだろうと、春人も考えていた。




「まあ、まだまだこれからだけどさ」

「……私たちと同じですね」

「えっ?」




 思わず聞き返した春人だが、その時にはエミルは春人の腕にもたれかかっていた。意外に大きな胸の感触が、春人の左腕を包み込む。




「今日は、デートというわけじゃありませんけど……恋人同士は変わりませんし」

「あ、あの……エミル……? 偽のっていう言葉が消えてるような……」

「春人さんが嫌でないなら、そんなのは些細なことです」




 エミルは春人の言葉を待つように、彼を見上げた。もちろん嫌であるはずはないが、面と向かって言うのも相当に恥ずかしい春人であった。そうこうしている間にも、ツインテールの美しい髪をした彼女の顔が春人の目の前に迫る。そして、そのまま二人はキスをした……。




「え、エミル……」

「これで、何度目でしょうか?」




 春人も思い出せない。初めてキスをした相手は彼女であり、場所も時計塔であったことは記憶しているが、あれから何回かのデートで二人は相当な回数のキスを済ませていた為だ。




「……私、負けるつもりはありません」

「え? な、なんのこと……?」




 エミルは春人の問いかけには答えず、彼の小指に目をやった。一度も質問はなかったが、エミルはとっくにペアリングについては、看破していたのだ。春人もそれを察知し、思わず顔を背けた。エミルからのそれ以上の追及は特になかったが、彼女の表情は決して笑ってはいなかった。




「ふふ、せっかくですから釣りをしません?」

「あ、うん。そうだね、せっかくだし」




 春人は話題が逸れたことを喜び、すぐに釣り針などをレンタルし始めた。しかし、これは巧妙なエミルの策略だったのだ。




 今日はエミルも休みということで、二人で街中を歩いていたのだが、偶然この場所へと立ち寄ったことになっている。しかし、それはエミルがわざと誘導していたのだ。

 そして、春人はエミルに導かれたとは知らないまま、釣りを楽しんだ。周囲からは完全に恋人関係に見えていたという。







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「さて、そろそろ行こうか」

「そうね~、いよいよアクアエルス遺跡の隠しエリアね」




 場所は変わってギルド本部。「シンドローム」のメンバーである、ジャミルとアンジーが話をしていた。ジャミルは銀縁の非常に強度の高いメガネを付けており、アンジーは金色の鎧姿に巨大なウォーハンマーを装備していた。




「ミルドレア・スタンアークもこの街に泊まっているだろう。先を越されたら面倒だ」

「あの子も私の好みだわ~。ジャミルとどちらを選ぶか、迷っちゃう」




 アンジーは冗談なのか、ジャミルに抱き着こうと試みたが、あっさり避けられてしまった。




「アンジー、残念だが私は女性が好きなのだよ。申し訳ないね」

「いいわ、そのはっきりとした口調。燃えてきちゃう……必ず、モンスター討伐の雄姿を見せて、あなたのハートを掴んでみせるわ」




 ジャミルは困ったような表情をしているが、オカマのアンジーは恋を成就させる気満々のようだった。




「オルガとメドゥの二人は既に遺跡に向かっているのかな?」

「確かそうよ。さすが私達「シンドローム」のエースね。血がたぎると言うのかしら?」

「うむ、準備は万全だね。信義の花も常備しているし……行こうか」

「ええ、そうね。一体、最終エリアは何が潜んでいるのか……楽しみだわ」




 アンジーも血がたぎるのか、金色の鎧の上にウォーハンマーを乗せて豪快に歩き出した。見た目はジラークに似ている。ジャミルは手を後ろに当てて、紳士的に歩いている。




「最深部で倒したキマイラ4体はネクロマンスの私の術で操って待機させている。キマイラも所詮はレベル137程度だった……せめて隠しエリアは期待しようじゃないか」




 ギルド本部を出た二人はそのままアクアエルス遺跡へと向かった。ミルドレア達、神官長以外で隠しエリアの場所、及び封印の開け方を知る者……彼らの正体は未だ不明であった。







「彼らはアクアエルス遺跡に向かいましたのね?」

「ああ、そのようだ」




 ジャミルとアンジーが本部を後にしたのを見届けたレナは、目の前のソファーに座るジラークに声をかけた。ルナも彼女の隣に腰をかけていた。

 現在のギルドはSランク冒険者が勢揃いと言えるだろうか。「シンドローム」もSランクへ昇格を果たしていた。







「よろしいんですの? ジラーク様が攻略をしておりましたのに」

「なに、同じ冒険者仲間だ。得体は知れないが、敵とは思えん。ならば、仲間が功績を立てることを喜ぶべきだろう?」




 まさに大人の余裕と言えばいいのだろうか。レナはいくら強くてもまだ19歳の少女だ。人生経験ではジラークよりもはるかに劣っていた。彼女にはまだ理解できない内容だったのかもしれない。




「さすがですわね、ジラーク様。私の初恋の相手だけはありますわ」

「そうだったのか? あいにく、俺は大切な人が居るのでな。気持ちには答えられないが……嬉しいよ、ありがとう」




 ジラークとレナは緊張感のない笑いをお互いに見せた。まるで、親子の会話のようだ。




「まあ、春人さまだけでなくジラーク様にも振られてしまいましたわ。わたくしの魅力の問題ですわね。もっと精進しませんと」




 レナはそう言いながら、均整の取れた自分の身体をくねらせた。




「それ以上綺麗になる方法があるのか? お前の気持ちは親への愛情のようなものだろう?」

「うふふ、バレてましたか。アメリアもそうですが、年頃の女の子は、大抵はジラーク様が初恋の相手ですわ。まあ、冒険者に限りますが」




 レナやルナ、アメリアも小さい時の初恋の相手はジラークであった。もちろん、それは本当の恋というよりは、父親に抱く愛情に近かったが、ジラークの人となりが良く分かるエピソードと言えるだろう。逆に、エミルなどの冒険者以外の者はそれに当てはまらない場合も多い。




「レナとルナは、グリモワール王国に行くんだな?」

「ええ、そうですわね。しばらく、戻って来れないかと思いますが」

「……レベル180のヘルスコーピオンの軍勢が相手だ、気を付けろ。また、メガスコーピオンやギガスコーピオンの存在も確認されているからな」




 ジラークは心配した表情で、彼女らに言った。一番弱いヘルスコーピオンですら180のレベルを誇る。さらに強力なメガスコーピオンやギガスコーピオンは、よりレベルが高いことは間違いがなかった。




「4000万ゴールドの最難関の依頼ですものね。ジラーク様が心配されるのもわかりますわ、ただ……」

「……私達には切り札がある」




 レナの自信に満ちた表情を補完するかのように、最後だけ無口のルナが付け加えた。




「同じSランク冒険者のお前たちには余計なことだったな。気を付けて行け。元気な姿でまた会おう」

「はい、ジラーク様たちも、アシッドタワーの探索、気を付けてくださいましね」




 ジラーク達も、近い内にアルトクリファ神聖国領のアシッドタワーの探索に出かけることになっていた。一時的とはいえ、Sランク冒険者の面々がアーカーシャを離れることになる。彼らもそれは少し心配していた。シンドロームのメンバーもアクアエルス遺跡に出向いているのだ。




「ジラークさんやレナさん達の留守は僕たちが引き受けます!」

「あら、カップルが誕生した「センチネル」の方々ではありませんか」




 レナ達の話に割って入って来たのは、アルマークとイオの二人であった。レナは即座に彼らに対して冗談の一撃を加える。アルマーク達は真っ赤になってしまった。







「ちょ! レナさん……やめてよ……も、もう……」




 ポニーテールのイオは顔を赤くしながら、レナに対して反論をした。しかし、その勢いは非常に弱い。




「……昨日の時点で付き合ったと聞いた。「アプリコット」に二人で泊まったのも知ってる」

「ええ! ルナさん……なんでそのこと……!」




 意外にも情報通のルナ。アルマークの告白を受けて、昨日のイザコザの後、二人は正式に付き合い出したのだ。既にルナたちに知られているのが驚きではあったのか、アルマークも大きな声を上げる。




「ああ、そういえばアプリコットの部屋でかなりの喘ぎ声が聞こえていたな。ははは、なかなか激しいカップルがいたようだ」




 冗談なのか、本当なのか……ジラークの言葉の真意は不明だが、アルマークとイオはもはやトマトのように真っ赤な顔をさらに赤くしていた。昨日の段階でそういう行為をしたことを自供しているようなものだ。




「そういえば、ジラーク様はアプリコットの宿屋の一室を借りきっている生活でしたわね。付き合いだした初日で、お互いの初めてを捧げあう。まさに理想のカップルですわね」

「……応援する、がんばって」

「うう……イオ、恥ずかしい……」

「し、知らない……」




 アルマーク達は、レナ達に祝福されるのは喜びながらも、しばらくの間なにも言えなくなってしまっていた。







-----------------------------------







「でも、ジラークさん達やレナさんたち……それから「シンドローム」のメンバーや春人さん達も出かけられるんですね」

「だね、偶然とはいえ、少し不安だよ。私達がトップに近くなるなんて……」




 既にAランク冒険者の二人。他にもAランク冒険者は複数いるが、彼らが実力的にトップクラスになることは間違いがなかった。まだ16歳の少年少女は、誇らしいと同時に不安も持っていた。




「老師も言っていた。お前達がアーカーシャの将来を支える礎になると。自信を持て、お前達二人ならば、すぐにSランクに上がれるさ」

「ジラークさん……ありがとうございます、ジラークさんにそう言ってもらえるのは励みになります!」

「えへへ、ジラークさんからのお墨付きだからね! 今まで以上に頑張らないとね、アルマーク!」

「うん、イオ!」







 二人の元気な表情に、ジラークも笑いながら考えを巡らせていた。この二人であれば、自分の実力を越える日もそう遠くはない……そんな確信にも似た考えだ。




 さらに、完成された強さを有する春人とアメリアも居るのだ。あの二人については、完成されているにも関わらず、さらに上昇している為、どこまで強くなるのか見当が付いていないジラークではあったが、アーカーシャの未来は明るいと断言できた。




「それに寄宿舎の問題は、「フェアリーブースト」が担っている。アーカーシャの独立もうまく軌道に乗れば、完璧なんだがな」

「農作物の生産については、わたくしが既に手は打ってありますのよ」




 レナは独立の話に話題が切り替わり、さきほどまでより、さらに自信満々になっていた。レナとルナの召喚魔法でゴブリンロードを30体召喚したのだ。各々のレベルは55……正直、それだけで色々と規格外の姉妹であることは伺えた。さらに、レベル15のゴブリンを100体召喚し、農作物の収穫などに当たらせている。




 ゴブリンロードは街の外からの侵入者に対しての経過に当たらせていた。人間に対して絶対服従のモンスター……彼女たちの強さが伺える瞬間でもあった。




「ゴブリンはともかく……ゴブリンロード30体は信じられんな。1体のレベルが55だぞ?」




 さすがのジラークも頭を抱えていた。




「買い被り過ぎですわ、あの程度は問題ありません。たかが55……強敵がアーカーシャを襲った際は、守り切れる保証はありませんのよ」

「レベル55って……僕たちでは、イオと二人がかりじゃないと厳しいんですが……」




 特に凄いこととは思っていないレナとは裏腹に、アルマークは苦笑いをしていた。アルマークやイオはレベル換算では50程度になる。アルマークとイオが二人で戦わなければ撃破は難しい相手ということだ。

 そんなゴブリンロードが30体、アーカーシャの周辺を守ることになったのだ。相当な守りということになるだろう。




「お前達が、本気を出せばどのくらいのモンスターを召喚できるんだ?」

「いやですわ、ジラーク様。乙女にそういうことを聞くのは野暮ですのよ?」

「……単独なら、最高はユニコーン」




 レナのはぐらかす態度とは裏腹に、ルナは率直にジラークの質問に答えた。




「私とレナで、合計2体のユニコーンを召喚できる」

「ルナ……そういうことは言うものではないですわよ」

「大丈夫、切り札は言ってない」

「最高がユニコーンではないと言ってるようなものですわ……もう」




 ルナの少し空気の読めない発言に、レナはため息をついた。それとは逆にジラークは目を見開いている。




「ユニコーンを……2体だと……!?」




 アルマークとイオはユニコーンがどの程度の存在か知らないのか、頭を捻っていた。しかし、ジラークだけはその中で驚愕の表情を崩さなかった。
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