攻撃力と防御力共に最強クラスになっているので、パートナーと一緒に無双します!

マルローネ

文字の大きさ
87 / 119

87話 レッドドラゴン その1

しおりを挟む

 その日、Aランク冒険者チーム「ナラクノハナ」は苛立っていた。いや、苛立っていたのはそのチームの中の一人、ディラン・マクシミリアンだけではあるが。残りのメンバーのニルヴァーナ・アルファロとリグド・スインキーの二人はそんなディランを冷静に見ていた。

「おいおい、これからレッドドラゴンを仕留めようって時に……グリモワール王国が大量破壊兵器を投下しただと!?」
「そうらしい。といっても、未確認情報ではあるが」

 苛ついているディランに、リグドは冷静に返答する。ナラクノハナのメンバーはマシュマト王国のアルフリーズから東に位置するアルグンド高原へと来ていた。目的はレッドドラゴンの討伐だ。チーム最強のニルヴァーナが超人的な感覚でその居場所を特定したのは、つい10分前のことである。

「で? ギルドの情報屋はなんて言ってるんだ?」
「通信機での話では、グリモワール王国が各国に宣戦布告とも思える宣言をしたらしい。どうやら100体近いヘルスコーピオンの群れを、強力なミサイルで全滅させたようだね」
「ヘルスコーピオン……確か、レベルは180だったよな?」
「ああ、その通りだ」

 ディランもリグドも汗こそ流してはいないが、表情は真剣そのものだ。近くには可憐な美少女であるニルヴァーナの姿もあった。彼女は無造作に伸ばしている金髪を輪ゴムで簡単に束ねていた。服装は胸元以外は露出のないライダースーツだ。

身体のラインは美しいが、彼女は自らのお洒落など気にしていない人物ということが伺えた。それでも美少女に見えるその顔や体型は、ニルヴァーナという人物の素材の良さを物語っている。


「レッドドラゴンが見えた。2体居る」

 ニルヴァーナが視線を送る先、レッドドラゴンと思われる赤い魔物が2体存在していた。その距離は1キロほど離れている。

「おいおい、あんな魔物が2体同時かよ……」
「700万ゴールドでは割りに合わないね……」

 ディランとリグド、それぞれの言葉だ。700万ゴールドという金額自体は破格といえるものだが、相手がレベル230のレッドドラゴンであれば話は別だ。しかも2体同時に見つかった。それぞれが1分程度、レベルを2倍にできるハイパーチャージを使えるのだ。

「しかし、ようやく会えたな。お前を待ちわびたこの1か月……身体が疼いて仕方なかったぜ!」

 ディランはまだまだ遠くではあるが、丘の上からその赤い巨体を見据えていた。その表情は旧友に会えた時のように笑みすら零れていた。ニルヴァーナはそんなディランの姿を見て溜息をついている。

「レッドドラゴンの片方は、私がやるさ。あんたはもう片方を頼むよ」
「おう、任せときな! お前の実力なら心配はねぇだろうが、油断すんなよ」
「私のセリフだよ。死んだりしたら承知しないからね」

 ディランは大笑いをしているが、クールなニルヴァーナは無表情なままだ。お互いに健闘を称えての言葉ではあるが、以前に倒せなかったディランは戦力としては不利と言える。それでもディランは臆することなく、レッドドラゴンの方向へと歩いて行ったのだ。

「以前は君が参戦していなかったからね。ディランとしても、君の力は借りたくないのだと思うよ」
「……理解できない。死んだらそれまでなのに」
「男は時には格好つけたいときもあるのさ。それよりいいのかい? もう片方のレッドドラゴンは君に任されたぞ? これは責任重大だ」

 ナラクノハナの頭脳を統括しているリグド。上手い言葉回しでニルヴァーナのやる気を増幅させる。このままディランがレッドドラゴンの元に向かえば2体同時の戦闘は避けられない。その事態を彼女は防ぐ必要があったのだ。

「私が仕留めそこなうと?」
「まさか。個人戦力としては、君はSランク冒険者であるアルミラージとレヴァントソードの連中にも負けていない。むしろ勝ってるくらいだと思ってるからね」
「それは誉め過ぎさ。ただ……あの獲物は確実に仕留める」

 そう言いながら、ニルヴァーナは魔空間に手を入れた。中から取り出したのは巨大なスナイパーライフルだ。明らかに細身の彼女に扱える重量ではなかったが、ニルヴァーナは平然と持っている。

 ニルヴァーナはそのまま立った状態でスナイパーライフルを構えた。黒のボディに金の装飾品が散りばめられている。彼女の趣味なのだろうか、ものすごい価格になりそうだ。

「レッドドラゴンまでの距離……1170メートル、風速9メートル、北北西の風……」

 スタンディング状態のニルヴァーナは小声で風速などを感覚的に計測した。彼女の圧倒的な感覚は誤差1パーセント以下とされている。

「湿度は66%……個人的には乾燥してる方が好きだね」
「やれやれ。相変わらず、恐ろしい状況把握だ。レッドドラゴンはこの距離でも気づいているのかい?」
「おそらくね。ハイパーチャージを始めたみたい。ただ、終わりだけどね」

 ニルヴァーナは右手に持った長さ10センチはある弾丸をライフルに装填した。そして……構えなおすと同時に引き金を引いたのだ。プッシュボタン式のトリガーはかなり軽くセットされており、軽く引くだけで弾丸は発射される。反動をできるだけ抑える意味合いが込められていた。

 撃ち出された弾丸は超高速で、レッドドラゴン目掛けて飛んでいく。1170メートル離れたドラゴンはハイパーチャージ状態で待機しており、レベルは460にも達していた。弾丸はレッドドラゴンの脳天に直撃……とはいかず、ドラゴンの闘気を貫通することはできなかった。しかし……

「グオオオオ!!」

 最初の弾丸は確かにレッドドラゴンには届かなかった。しかし、間髪いれず、そして寸分違わぬ位置に2発目の弾丸は命中したのだ。最初の一撃で脆くなった闘気の壁は2発目の侵入を容易に許してしまった。そして、レッドドラゴンの頭は貫かれた。



 そのまま、巨大な身体は地面へと倒れこみ、ピクリとも動かなくなった。


「……一撃では無理だったね。さすがはレベル460の状態ね」
「……相変わらず、信じがたいよ。2発目を撃つ動作もそうだが……これだけ距離が離れても全く同じところに命中させるなんて」
「魔法での修正をしているからね。それくらいわけないさ」

 ニルヴァーナは簡単に言ってのけるが、もちろんそんなことを誰もが出来るはずはない。そもそも1000メートル以上の狙撃という時点であり得ないレベルだ。脳天を破壊し、一撃でレッドドラゴンを始末した腕は疑いようがなかった。

 1170メートル先では、片割れが死亡したことに対して動揺した、もう片方のレッドドラゴンの姿があった。すぐにハイパーチャージ状態になる。

「よう、待ちわびたぜ? 今度こそ仕留めてやるよ」

 レッドドラゴンの前には赤い甲冑を身に着けたディランの姿があった。既に全開状態であり、準備は万全のようだ。雪辱戦はすぐに開始された。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

扱いの悪い勇者パーティを啖呵切って離脱した俺、辺境で美女たちと国を作ったらいつの間にか国もハーレムも大陸最強になっていた。

みにぶた🐽
ファンタジー
いいねありがとうございます!反応あるも励みになります。 勇者パーティから“手柄横取り”でパーティ離脱した俺に残ったのは、地球の本を召喚し、読み終えた物語を魔法として再現できるチートスキル《幻想書庫》だけ。  辺境の獣人少女を助けた俺は、物語魔法で水を引き、結界を張り、知恵と技術で開拓村を発展させていく。やがてエルフや元貴族も加わり、村は多種族共和国へ――そして、旧王国と勇者が再び迫る。  だが俺には『三国志』も『孫子』も『トロイの木馬』もある。折伏し、仲間に変える――物語で世界をひっくり返す成り上がり建国譚、開幕!

勇者のハーレムパーティー抜けさせてもらいます!〜やけになってワンナイトしたら溺愛されました〜

犬の下僕
恋愛
勇者に裏切られた主人公がワンナイトしたら溺愛される話です。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

催眠術師は眠りたい ~洗脳されなかった俺は、クラスメイトを見捨ててまったりします~

山田 武
ファンタジー
テンプレのように異世界にクラスごと召喚された主人公──イム。 与えられた力は面倒臭がりな彼に合った能力──睡眠に関するもの……そして催眠魔法。 そんな力を使いこなし、のらりくらりと異世界を生きていく。 「──誰か、養ってくれない?」 この物語は催眠の力をR18指定……ではなく自身の自堕落ライフのために使う、一人の少年の引き籠もり譚。

処理中です...