攻撃力と防御力共に最強クラスになっているので、パートナーと一緒に無双します!

マルローネ

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86話 グリモワール王国 その4

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「それでは、あの強力な爆撃の正体は、新開発の兵器であるテラーボムということですのね?」
「ああ、そういうことだ。十分な距離は飛行船から確認させてもらった。投下の許可を出したのはこの私だ」
「十分な距離ね……私にはとても、安全圏だとは感じなかったけど」

 グリモワール王国のテラーボムによる爆撃から数時間後、レナとアメリアの二人は国王に謁見を求め、カースドと会議室で話していた。本来であれば報酬を受け取り気持ちよく完了となる手筈であったが……事態は危険な方向へと進んでいた。

「そのようなお言葉で、私たちが納得するとお思いでございますか?」

 レナは相変わらずの丁寧な口調ではあるが、表情は強張っている。距離が離れていたとはいえ、自分たちに事前の報告もなく投下したことに憤りを覚えているのだ。

 逃げ惑うヘルスコーピオンの軍勢目掛けて投下された超強力な一撃であるテラーボム。射出速度も凄まじいものであり、音速を超えていた。そのまま1キロ四方を爆発させ、周囲10キロメートルに毒ガスを散布したのだ。レベル180のヘルスコーピオンは粉々に爆散、大砲が効かないモンスターでもテラーボムの一撃はそうは行かなかったようだ。

 その圧倒的な爆撃の余波は、50キロメートル離れたマグノイアまで到達する勢いであった。幸いなことに、マグノイアまで毒ガスが到達することはなく、すべて四散していったが、風向きに寄ってはあり得た事態と言えるだろう。

「お前たちに危険を及ぼしたことは謝罪しよう。だが、我々としても必要なことであったのだ」
「必要なことの一言で、命の危険に晒されたら堪らないわ」

 アメリアはカースドの弁解に全く納得している様子を見せていない。今にも襲い掛からんばかりの雰囲気さえ持っていた。周囲には衛兵の姿も多数見受けられるが、彼女が相手では護衛の役割など果たすことはできない。



「うむ。迷惑を掛けた詫びとして、報酬を増額しよう。7000万ゴールドを報酬として支払う。さらに、粉々に粉砕したヘルスコーピオンの結晶石も其方らに渡そう。相当な金額になるでだろう」

 そう言いながら、カースドは大きめの袋をアメリア達の前に置いた。中に入っていたのは大量の結晶石だ。毒ガスが四散してから、爆心地で回収したということだろう。ギガスコーピオンとリザードロードの遺した結晶石はすでに春人達が回収している。

 現在、春人とルナはマグノイアの街で待機している。二手に分かれることで、万が一の事態に対処するためだ。また、マグノイアの街の住人を人質にとっているということも、国王にそれとなく伝える意図もある。報酬はトネ共和国との合算ではあるが、1000万ゴールドを余分にグリモワールが出したことになった。


「……ま、いいでしょう。アメリアも良いですか?」
「ええ。追加報酬が魅力的だし。本当は私達に投下するつもりだったとしても、水に流してあげる」
「……!」

 アメリアは皮肉たっぷりな表情をカースドに見せていた。24歳のカースドではあるが、10歳以上老け込んだ様子を見せている。いつ襲われるかわからない緊張状態の為、仕方のないことではあるが。周囲の衛兵も明らかに動揺していた。

「それじゃ、また依頼があれば受けに来るわ」

 アメリアは大きめの袋を担いで、レナと共に会議室の部屋から出て行った。そして、彼女らの足音が消えていくのを確認してから、カースドは呟く。

「あの威圧感……あれが、Sランク冒険者というものか……」

 顔中に汗を流しながら、カースドは机に両肘を付けていた。周りの兵士たちも、アメリアたちに聞こえないようにか、兵士たちも小声で囁き合っていた。


「なんなんだよ、あれは……? 嘘だろ?」
「見た目は可愛い感じだが……スコーピオンの軍勢を打ち倒す化け物だぞ……」
「あんな威圧感なんだ……それも頷けるぜ……」

 兵士たちはどこか、アメリアとレナを称賛しているような口調でもあった。彼女たちの見た目を気に入った者も居るのだろう。見た目は可憐な少女だが、恐ろしい実力を持っている。アーカーシャの住人と同じことが起こっていたのだ。


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「そっか。なら、追加報酬で手を打ったんだね」
「まあね。私もいつまでも言いたくなかったし」

 マグノイアの街にて春人と合流したアメリアとレナは、そのまま談笑に興じていた。大きな袋を二つも下げた状態で春人とルナに自慢気に話している。

 一つは結晶石だが、もう一つは城の別の者から報酬として受け取った7000万ゴールドだ。相当な重量であり、日本円では8億円以上となっている。1回の依頼の報酬額としてはものすごい額ではあるが、戦った相手を考えれば妥当な金額と言えるだろう。

 むしろ、解決できる人物が大陸でも限られることを考えれば、安いくらいなのかもしれない。

「でもさ、あの爆撃は……驚いたね」
「そうね。私たちが毒ガスなどのステータス異常に耐性があるからなんとかなったけど。普通なら終わってたわ」

 春人達は爆発自体には巻き込まれておらず、その後の10キロ四方にばら撒かれた毒ガスにやられたのだ。春人、アメリア、レナ、ルナ共にポイズンリザード達の猛毒にも耐えられる強さを有している。

 それに加え、ステータスロックで耐性を向上させて切り抜けたのだ。ステータスロックは10分間の間、耐性を向上させる魔法だ。レナが使用してその効果中に安全圏へと避難したことになる。

「もしも、エミル達が一緒だったらと思うと……」
「はい、マスター。美由紀やエミル達のレベルでは毒ガスに耐えられず死亡していたでしょう。マスターがエミル達をアーカーシャに戻したことは賢明なご判断でした」

 春人の疑念に的確に答えたのは、彼の影から現れたデスシャドーのサキアだ。彼女は呼吸をしなくても生きていける為に、最初から毒ガスは効かない。

 以前のリザード討伐の際には美由紀もエミルも参戦していた。だが、危険に感じた春人が、アーカーシャに戻ることを諭したのだ。最初に同行を許可したのも彼自身であった為に、苦渋の決断ではあったが。春人がエミルの身体を心配していたことはエミル自身にも伝わり、彼女はアーカーシャに戻って行った。その時、美由紀に彼女の護衛も依頼している。

「ありがとう、サキア。そう言ってもらえて嬉しいよ」
「いえ、とんでもありません、マスター」
「まあ、最初にエミルたちの同行許したのは私たちソード&メイジだしね。私たちが護衛してれば大丈夫かとは思ってたけど……やっぱり、ポイズンリザードなどの強力なモンスター討伐には連れて行けないわね」

 アメリアもエミルの身体を心配して、戻るようには伝えていたのだ。エミルは春人と一緒に居たい為に、最初は断っていたが。アメリアが春人に恋人関連の話で答えを出さなくて良いと言ったのも、ちょうどこの頃である。アメリアなりの複雑な感情が働いていたのかもしれない。

 それから2か月近くが経過しているが、アメリアの真意は現在でも春人は聞けないでいた。

「うふふ、春人様は本当に罪造りがお好きですのね。いけませんわ」
「……春人は女たらし」
「な、なんですか? 急に? レナさん! ……ていうか、ルナさんまで……」

 春人は焦ったような口調で彼女たちを見る。普段は無口なルナにまで指摘されて、より焦りが強くなったようだ。そんな彼の態度を見て、レナとルナは笑い出した。アメリアもそれにつられている。

「うふふふ、さてこの後は如何いたしましょうか? この大量の結晶石……鑑定と換金という場合、この国では難しいかもしれませんね」
「正確な鑑定を受けたいしね。なら、マシュマト王国がいいんじゃない? ほら、1億以上の依頼内容も気になるし」

 アメリアはちょうどマシュマト王国へも興味を持っていた為に、そのように提案した。つい何時間か前まではスコーピオンの軍勢を相手にしていたとは思えない態度だ。最後のテラーボムの一撃は予想外のものであったが、スコーピオン退治自体はソード&メイジにとっては準備運動といったところなのだろう。

「1億以上の依頼案件……聞いたことがありますわ。マシュマト王国の北の国家を滅ぼした謎の軍勢。おそらく、その軍勢の調査依頼といったところでしょうか」
「……グリモワール王国もそうだけど、戦争の世の中になってる……」

 レナとルナは1億以上の案件について、懸念を持っていた。戦争が勃発する……このマッカム大陸に於いては、国家間の本格的な戦争はほとんど行われていない。アルトクリファ神聖国など、小競り合いをした国家というのは多くあるが、国王が戦争と認定し、侵略した歴史はあまりないのが現状だ。

 その理由は1000年前の英雄、ジェシカ・フィアゼスにより大陸を統一させられたことが大きな要因となっている。その統一から解放されてからは、一部を除き、国家は協力する形でマッカム大陸に形成されていった。その為に、過去1000年を遡っても侵略戦争の案件は限られている。それよりも、強力なモンスターによる被害の方がはるかに多かった。

 グリモワール王国は数少ない例外に該当していたが、この国も他国と協力して今日まで発展してきたのだ。だが、それ以前は最強の国家として成立していた国だけに、大陸の覇権を握るという野望はどの国よりも大きいものであった。

 戦争の勃発は避けられない段階に突入している……ルナもそれを感じての言葉であった。北の国家を滅ぼした闇の軍勢も正体はわかっていない。マッカム大陸の歴史を紐解いても、久しぶりと言える動乱が静かに鼓動を早めていた。

「ま、細かいことはマシュマトに行ってからにしましょうよ。首都のアルフリーズまではそれなりに距離もあるし」
「アルフリーズ、そこがマシュマト王国の中心地か」
「まあね。春人にはこの前に言ったことあるけど、魔法と科学技術の中心よ。アルフリーズの東のダールトン市街地に科学技術の結晶が集まってる」
「そうなんだ。楽しみにしているよ」
「あら、春人さま。活き活きとしてきましたわね」
「……めずらしい気がする」

 レナやルナは、あまり春人が喜んでいる姿を見たことがない。どこか引いていることが印象的だったからだ。春人は東京に住んでいたこともあり、科学技術の結晶の地を楽しみにしていたのだ。なにか根拠があったわけではないが、東京のような高層ビル群や、ホテルなども完備されていると確信していた。

 この地へ飛ばされてきてから、魔法というある意味で科学以上の代物に出会ってはいたが、都会で育った彼にしてみると、アーカーシャの街並みは古いといった印象を持っていた。その反動か、今の春人はレナが言ったように活き活きとした瞳をしていたのだ。

 春人からしてみれば、第三の故郷になるのではないかという予感も持っていた。

「馬車を借りればいいんだよね? 早速行こうよ」
「決まりね。馬車で東に向かってどのくらいだっけ?」
「マグノイアからですと、国境もありますので500キロメートル程でしょうか。数日以内には到着できますわ」

 レナは大陸の形状を想像しながら、距離を割り出した。マシュマト王国は大陸の中央部より、やや東に行ったところに存在している広大な国家である。砂漠全土を含めればグリモワール王国の方が広大な面積を有してはいるが、マシュマト王国の領地内はほとんどが都会のような街並みになっている。

 そういった意味合いではマシュマト王国の方が発展していると言えた。人口も周辺国家で最も多く、2000万人を超えているのだ。

 次の目的地は東の最大国家マシュマト。春人はまだ見ぬ王国に胸を躍らせながら、自然と脚を早めた。
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