攻撃力と防御力共に最強クラスになっているので、パートナーと一緒に無双します!

マルローネ

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85話 グリモワール王国 その3

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 その日はグリモワール王国にとって、重大な一日となる。大陸の覇権を握るに当たっての最初の一歩とでも言えばいいのか。

 化学部門で秘密裏に開発された爆弾「テラーボム」。その一撃の実験と周辺諸国への見せしめは着実に進められようとしていた。マグノイアの上空に飛ぶ飛行船。この船には国王であるカースド・リオンネージュを始め、マーカス、ランスロット、リヒャルトといった大臣参謀の面々も乗船していた。


 現在の王国の権力を手中に収める面子が勢ぞろいというわけだ。

 標的は眼下のモンスター集団と冒険者たちだ。距離そのものは離れているが、上空からの為、容易にその光景を見渡すことが出来た。

「あれが、リザードロードですな……陛下」
「ああ、リヒャルト。ギガスコーピオンも含めて、相変わらず恐ろしい形相だ。実際の強さは外見が可愛くなるほどだがな」

 カースドは交戦中の春人達の相手を見ながら自らの感想を口にした。彼の顔からは汗が零れている。ギガスコーピオンとリザードロード。レベル320と300を誇る怪物たちの威圧感は、レベル換算10程度であるカースドを萎縮されるには十分すぎるほどの強さを持っていたのだ。他の大臣参謀も互角程度、リヒャルトやランスロットでもレベルは30に満たない。

 つまり、現在の上層部は武闘派の者たちは居ないということになる。

「リザードロードやギガスコーピオン、その他の魔物を含めると100体は居るかとおもわれます。恐ろしい数ですな。だが、それを単独で始末している高宮春人……もはや信じられない光景だ」

 マーカスは微かな笑みを浮かべつつ、初老になりしわが増えだした表情筋を動かしていた。実際にはアメリアとルナも援護射撃をしているが、目立つのは先陣を切っている春人だ。サキアと共に、ギガスコーピオン達を切り刻んでいる。

「圧倒的な装甲を誇るはずのギガスコーピオンの外郭を、こうも簡単に切り裂くとは。やはり危険ですな、陛下。モンスター共々、消え去ってもらいましょう」
「うむ。確かにあの動きは危険だ」

 マーカスだけでなく、カースドも春人の尋常ではない強さは危険視していた。サキアの存在にカースドたちは気づいていなかったが、春人だけでも十分に異常であることは伝わって来たのだ。

 強靭な外郭に巨大な尻尾から繰り出される猛毒。ギガスコーピオンは防御と攻撃をバランスよく兼ね備える強力なモンスターだ。大砲や銃撃も弾き返し、猛毒の一撃は毒の前に攻撃力で相手を絶命させることができる。だが、春人にはそんな攻撃は通用しなかった。

「はああああ!」

 春人はギガスコーピオンの強力な尻尾の一撃を避けることなく、収束させた闘気で弾き飛ばす。

「ギッ!?」

 ギガスコーピオンはある程度の知能を持っているのか、明らかに身体を硬直させた。しかし、レベル880に達する春人が相手ではそれは命取りだ。彼は眼前のギガスコーピオンの硬直を見逃さなかった。銀色の刀身の美しいユニバースソードをギガスコーピオンへと振り下ろす春人。だが、さすがに一撃でその強靭な外郭を砕くことはできない。

「さすがはギガスコーピオンってところかな?」

 しかし、春人は一切焦る様子を見せずに連続攻撃を繰り出す。ギガスコーピオンはその強烈な連続攻撃により頭を砕かれ、結晶石の塊になる運命を辿ることになった。その間にギガスコーピオンが攻撃した回数は最初の1回だけである。それほどまでに、春人の攻撃速度が速いのだ。

 春人は残っているモンスターを静かに見据える。彼が倒した数は5体。ボスクラスの連中は残り25体ということになる。そんな中、今度はリザードロード2体が春人へと迫って来た。

 強力な剣から繰り出される剣技は並みの剣豪や冒険者をはるかに凌ぐ完成度を誇っているリザードロード。攻撃の型がある程度出来ている時点で、知能は有していることになる。

 さらにポイズンリザードを超える程の毒霧も噴射することが可能なリザードロードは、ある意味ではギガスコーピオンよりも厄介な存在かもしれない。

 だが、春人にとってみれば大した違いはなかった。表情を変えることなく、向かってくるリザードロードを見据える。後の先の返し……彼はリザードロードの剣撃を見送ってから、自らの剣を振り抜いた。

もちろん、先に命中したのは春人の剣だ。2体同時とはいえ、最早勝負になっていなかった。最初の攻撃で剣を飛ばされたリザードロードは次の攻撃で首を跳ね飛ばされたのだ。

 そこまでやり終えても、春人の表情に変化はない。既に勝利を確信している表情にも見えた。

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「……ありえない。なんだ、あの強さ……! 高宮春人……!」

 魔法部門を統括する、いつもは冷静沈着なランスロットも春人の強さには驚愕していた。上空からではあるが、彼がダメージを負っていないことは容易に判断ができたのだ。ランスロットは全身から汗を流し、唇を震わせ、後ずさりをしている。二枚目な彼ではあるが、この時ばかりは頼りない一面が見て取れた。

 隣に立つリヒャルトもほとんど同じ態度になっている。そんな彼は陛下に大きな声で口を開いた。

「へ、陛下! 本当に作戦を決行するつもりなのですか!?」

 男らしい印象が満載のリヒャルトだが、とても取り乱している。ランスロットも彼ほどではないが、同じ気持ちというのはカースドを見る表情からも明らかであった。

「なんだい、リヒャルト? 今更、尻込みをしているのかい? 以前にも言ったが、所詮は個人戦力さ。そんなものは組織が相手では意味を成さない。高宮春人はこの船に乗り込めば、数秒程度で私たちを皆殺しに出来るかもしれないがね。
 安全圏からの超強力な一撃は、個人レベルではどうしようもないさ」

 焦りを前面に出しているリヒャルトとは違い、52歳のマーカスは冷静沈着だ。年齢35歳のリヒャルトとの格の違いを見せつけている。

「マーカス、準備の方は万全なのか?」
「はい、陛下。この飛行船は距離の問題からも離脱すれば安全圏に避難できます。あとはミサイルを投下して完了ですな。投下速度は音速以上。まず避けることはできますまい」

 そう言いながら、マーカスは自信に満ち溢れた表情になっていた。飛行船の底部に搭載されたミサイルは音速以上の速度で標的を撃ち抜く。これがテラーボムなのだ。彼らの技術で創り出された飛行船は短い時間で、爆発の影響外へ逃れられる代物となっていた。

 いくらSランク冒険者と言えど、地上を走る春人達が、この飛行船と同じ推進力は不可能と言える。マーカスは勝利を確信していたのだ。


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「さきほどから見える飛行船ですが……上昇を始めましたわ」

 直接討伐には参加していないレナは飛行船の動きをずっと監視していた。彼女の後ろではアメリアやルナが遠距離攻撃を行っている。先頭の春人の大活躍もあり、ギガスコーピオンとリザードロードの群れは確実に数を減らしていた。しかし、春人が本気を出してもすぐに片付けることは難しい。それが敵のレベルの高さを物語っていた。

「レナ、あいつら、なんか怪しいことしてきそう?」
「そうですわね、もしかしたら……そうかもしれません」
「……飛行船が退いた。怪しい」

 レナやルナも飛行船が退いて行くことに疑問を持っていた。何かを始める兆しなのは明白といったところか。

「ねえ、春人」
「なに? アメリア」

 春人は急に呼びかけられ後ろに目をやった。アメリアがいたずらっぽく笑っている。

「ちょっと本気で行かない? お偉いさんに見せるにもいい機会だし」
「魔法剣を使うの? 別にいいけど」
「敵の数も多いし、丁度いいじゃない。各個撃破も面倒だし」

 アメリアはそこまで言うと、手元に強力な電気を走らせた。彼女の最強の魔法でもある雷撃球だ。

「なるほど、雷撃球を魔法剣として使うってことは本当の意味での全力だね」
「ええ、ソード&メイジ。私達二人が協力すればどのくらいの力を引き出せるのか、あいつらにも見せた方がいいわ」

 そして、放たれる雷撃球はゆっくりとした動作で春人のユニバースソードに宿って行った。春人を攻撃するわけではないので、害意を極力省いたのだ。ユニバースソードに宿った雷は強力な発行体となって、周囲の砂漠を照らした。

 その発行はリザードロードたちを驚愕させる。恐ろしく強い攻撃が来ると本能で察知したのだ。春人はギガスコーピオン達に向き直る。振りかざされるユニバースソード。ギガスコーピオンとリザードロードの生き残りは恐怖を感じ、一斉に春人へと迫って行った。だが、全ては遅かったのだ。

 「面倒だったのは俺も同意かな。一瞬で終わらせてもらうよ、悪く思わないでくれ」

 そして春人はユニバースソードを大きく振り下ろした。強烈な雷を帯びたユニバースソードの振り下ろしは、巨大な雷の刃と化してリザードロードとギガスコーピオンの群れを呑み込んだ。

「グギャアアアアア!」
「ギシャアアアアアア!」

 雷の刃に焼き尽くされたリザードロード達は、次々と断末魔の悲鳴を上げてその場に倒れ伏して行った。何体のモンスターを呑み込んだのか……ギガスコーピオン達の多くはその魔法剣による一撃で倒されてしまったのだ。砂漠の地面は大きく割れており、その割れ目には砂が勢いよく流れ込んで行っている。

「敗走を始めたか」

 残りのモンスターは戦意を喪失したのか、敗走を開始した。春人としては全滅させるつもりではあったが、ボスクラスをほとんど始末したので、これ以上の追撃はどうしようかと悩んでいた。根絶やしにしなけば、また徒党を組む可能性はあったわけだが、春人は容赦なく追撃を出来ずにいたのだ。

「まあ、雑魚を殺し切っても虚しいだけだしね、春人の考えを尊重しよっかな」
「うん……それが良いと思う。私も無駄な殺しはしたくない」

 硬流球と呼ばれる球体を自在に操って攻撃をしていたルナ。彼女も無駄な殺生は苦手であった。もちろん、アメリアも同じだ。

 春人が撃ち込んだ協力無比な一撃……それは大地を割きモンスターを討伐、大気を震わせ、飛行船に乗っている者たちにも大きな衝撃を与えることになった。

「陛下! あの者たちにテラーボムを投下しても大丈夫なのですか!?」

 リヒャルトは先ほどよりも明らかに焦りが増している。春人の雷の一撃を目の当たりにしたからだ。地面を割いたことよりも、一撃でギガスコーピオンとリザードロードの大半を葬ったことに対する驚きが大きい。

 テラーボムで果たしてあんな連中を殺し切れるのか? 甚だ疑問が残るといった表情もしていた。カースドもさすがに春人の一撃を見て、考えを改めている。

「マーカス、本当に仕留められるのか? あれほどの者たちを……大陸でもトップクラスの強さを持つ連中であろう? 大砲の一撃すら弾くスコーピオンの軍勢、そのボスクラスを一瞬で始末しているのだぞ?」
「そうですね……こちらの意図にも気付いているのかもしれませんな。万が一、仕留められなかった場合、我々は報復を受けましょう。また、高宮春人達に避けられることも考慮に入れ、今回は逃げ出しているヘルスコーピオンの群れに投下いたしましょうか。それだけでも十分な牽制にはなるでしょう」

 マーカス自身も春人の攻撃は目に焼き付いていた。顔色こそ変化はないが、驚いているのは方向転換をした言葉からも明らかだ。

「投下するのは確定なのか? あの者たちを刺激したら、どのようなことになるか……」
「なに、リヒャルト。心配はいらないさ。命中させるわけではないんだ。彼らへの協力みたいなものだよ。どうやら追撃はしていないみたいだしね」

 マーカスは飛行船の上から、正確に状況を分析していた。春人たちはヘルスコーピオン達を追いかけておらず、十分な距離が離れたことも確認済みだ。実験を遂行するときが来たのだ。テラーボムの破壊力の検証と各国への牽制……マーカスの表情は大きく歪む。

 その直後、テラーボムは射出され、半径1キロメートルは轟音と共に消滅した。
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