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9話

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 ええと……なんだっけ? 落ち着け私……今はラッド様やクレア姉さまと一緒にレストランの視察に来ているんだ。でも、その中でコーヒーをご馳走になっているし、単なる視察とは風向きが変わって来ている気がする。周囲にそれぞれの護衛の姿はないし……。まあ、レストラン内で襲われる心配はないだろうけれど。


「あの……ええと、エンデバーがどうしたんでしたっけ?」


 ラッド様はエンデバーという言葉を口にしていたはずだ。しかも、レストランの名称ではなくて……確か、自らが名乗っていたって……そのように聞こえたんだけれど……。

「エンデバー……私が昔名乗った名前だよ」

「シンディ……なんとなくは分かっているんでしょう?」

「ええ……いや……!」


 分かっているのかもしれないけれど……ええと、色々と信じられないことが多すぎた。

「ラッド様。ラッド様は当時、一人の少女と出会ったの聞きましたが?」

「うん、まあ……そうだな。出会ったわけで……」


 あれ? ラッド様は照れ臭そうにしている……ええっ? 嘘……これって……。


「その時、性の話で盛り上がったのですよね?」

「う、うむ……そんなこともあったかな……」


 これは……間違いない。


「シンディ、随分と聞いたことがある内容だと思わない?」

「クレア姉さま!」


 私は思わず叫んでしまった。クレア姉さま……いくらなんでもやり過ぎです……恥ずかしい。


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「では、あの時の少年……エンデバーという少年は……」

「うむ。私だな。シンディ大人びた姿になったな。私がこういうのもなんだが……嬉しいよ」

「あ、はい……ありがとうございます。あはは……」


 あの時の少年がなぜエンデバーという偽名を使っていたのか納得がいった。王族の人間であるから、正体を明かすことが出来なかったわけだ。それは良いのだけれど……。

「クレア姉さまは知っていたのですか?」

「悪く思わないでよ、シンディ。貴方が婚約者してドルト様のところに行っていた段階で親しくなっただけよ。今回の視察だって、別に他意があったわけではないし……偶然よ、こうしてラッド様と会えたのは」

「……まあ、信じますけれど」

「ありがとう、シンディ」


 私は元々、この視察には参加しないわけだったしね。ということは、今回の私の選択は本当に運命的だったの?


「あの、再度聞くようで申し訳ないですが。エンデバー……あの時の少年……ラッド王太子殿下で間違いないのですか?」

「ああ、間違いないよ。シンディ、久しぶりだな。こうして会えたのは……ははは、なんだか不思議な気分だ」

「そ、そうですね……」


 う~ん、信じられない。あの時の少年のエンデバーがラッド王太子殿下だなんて……嬉しいと思えばそうかもしれないけれど。なんと言えばいいのかしら?
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