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7話 理事長 その2

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「話と言うのはどんなことなのかな? メアリ」

「理事長……いえ、マスタング伯爵にお願いしたいことがあります」

「話だけでも聞いてください」


 私とレヴィンは理事長室でマスタング伯爵と会っていた。噂は既に聞いているのか、マスタング伯爵は困った顔をしていたけれど。まあ、マスタング伯爵がどのように思っていても自分の気持ちはぶつけなければならなかった。そうでなければ、オルスタの決めつけをそのまま受け入れることになってしまうから……。


「話と言うのはどういったものだ?」

「はい。もう分かっているかもしれませんが、私とオルスタの婚約破棄についてです」

「やはりその話だったか」


 マスタング伯爵は分かっているようだった。話を持ってこられるのが迷惑なのか、明らかにその表情は歓迎されていなかったけれど。

「どういった内容なのだ?」

「はい、理事長。校内放送でマリアを呼んでもらいたいんです。この理事長室に」

「マリア……? 伯爵令嬢のマリア・キルスキーのことか?」

「そうです、そのマリアです」


 マリア・キルスキーはオルスタの幼馴染ということまでは分かっている。おそらくはオルスタの想い人になるのだろう。マリアの名前を出してマスタング伯爵は明らかに嫌な顔をしていたけれど……。

「マリア、か……マリアをここに呼び出せを言うのだな?」

「はい。なんとかなりませんか?」

「困るな非常に……相手はオルスタの昔馴染みなのだろう?」

「そうですね、おそらくそうだとはおもいますが」


 やっぱりマスタング伯爵も知っていたのね。マリアがオルスタのお気に入りであることを。それが今回の事件の証人。偶然にしては出来過ぎている。絶対にオルスタの策略なのは間違いなかった。でも……マスタング伯爵こと理事長は言葉を失っていた。


「メアリ、お前のことは気に毒に思うが……私の立場も分かってほしい」

「理事長……?」

「オルスタは侯爵令息だ。私よりも上の立場にある。その人物のお気に入りを呼び出したとなると……それなりの理由が必要だ。お前達はおそらくマリアが嘘を吐いていないか糾弾するつもりなのだろう?」


 やっぱり私達の目的は分かっていたか。マスタング伯爵の立場を考えれば、このようになるのは仕方のないことなのかもしれない。だからといって引き下がるわけにはいかないけれど。

「理事長、メアリは無実です。それを証明する為にはマリアの証言が必要なんです」

「レヴィンの言う通りです理事長。どうかわかってください」

「……」

 私達は理事長にすがるしかなかった。校内放送でマリアを呼べるかは彼にかかっているのだから……果たしてどうなるか?
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