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3話

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「ユリア、大きくなったな! 私のことは覚えているだろう?」

「ということは、レグリス様があの時、屋敷に来ていた少年だったのですか……?」

「ああ、その通りだよ。しきたりもあったから、名乗ることはできなかったけどね」


 こんな偶然あるのだろうか。まさか、子供の頃に会っていた少年が王子殿下だったなんて。あの時、私を外に連れ出してくれていたメイドには感謝しなければならないわね。


「何歳になったんだい?」

「17歳になります」

「同じ歳か。しかし、こんなところで会うとは……運命的なものを感じるよ」

「は、はい……私もです。い、いえ……」


 失礼なことを言ってしまったかもしれない。でも、運命的なものを感じたのは事実だった。

「しかし、こんなところで護衛も付けずに何をしていたんだ?」

「あ、それは……」


 運命的なものを感じたのもつかの間だった。そう、私は家から追い出されている身なのだから。


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「なに? レイモンドがユリアに対して婚約破棄を……?」

「はい、そうなります。それから……」


 私は涙を拭った。悲しみが出てきてしまい、上手く話せない。とくにレグリス王子に話すのは勇気がいることだった。


「家を追い出されたというのか……モース伯爵家から」

「はい、レグリス様。私はもう、貴族令嬢でもなんでもないのです……」

「……」


 レグリス様は無言になっていた。一体、何を考えているのか。私はこれから本当にどうすればいいのだろうか。雨が止んだらクリアランス王国から去らないといけないのか。でも、それは死刑宣告にも近いことだった。


「行く当てはあるのかい? ユリア」

「ありません。私は……まともな教育を受けていませんので、特に……」

「どういうことだ?」

「ええと、私は昔から疎まれた存在でして……」


 あの時、レグリス様に初めてあった時もそうだった。私は軟禁生活中だったのだ。部屋から出ることは基本的に許されていなかった。メイドのリーシャがたまに出してくれるけれど、あれだって見つかればただでは済まない行為だったかもしれない。

「……というわけで、レグリス様とお会いしていた時も軟禁生活中でした」

「馬鹿な……モース伯爵は何を考えているのだ? そんなことは親として決して許されることではない! 王国の法にも触れる行為だぞ」


 法すらまともに教育されていない私だったけれど、図書室での独学でその辺りは知っていた。あれは完全に犯罪行為なのだ。


「ですがレグリス様。私は追い出されたのは事実です。もう、王国内に私の居場所は……」

「何を言っているんだ、ユリア。我が家があるじゃないか」

「えっ……? 我が家ですか?」


 レグリス様は一体、何を言っているのだろうか……我が家? ん?


「クリアランス家のことだ。つまりは王宮ということになるかな」

「はい……?」


 私はレグリス様の言葉を理解するのに時間が掛かってしまった……どういうこと?
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