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7話
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「婚約者だったレイモンドについてだが……」
「はい、レグリス様」
私はその日、王宮で再教育の最中だった。と言っても今日は一人で勉強をしていたのだけれど。そこに現れたのがレグリス様だ。
「レイモンド様がどうかしたのですか?」
「色々と調査を続けて、彼にも何か罰をと考えたが……一方的な婚約破棄という罪だけでは慰謝料の増額くらいが席の山だった」
「左様でございましたか。すみません、私の為に……」
「いや、王子として当然のことをやっているだけさ。貴族の腐敗は王家にも影響が出て来るからな。ああいう連中は排除していかなければならない」
私の為にレグリス様は動いてくれていた。その間、私は直接的な手伝いは出来ていない。まあ、伯爵令嬢ですらなくなっている私に手伝えることなんてないのだけれど。だから私は再教育を真剣に行い、立派に自立した人間を目指す必要がある。
レグリス様の父上である国王陛下からの承諾は得たとはいえ、決して安くないお金が掛かるはずだから。私は結果で恩返ししないといけない。
「レイモンド様への罰はそれで良いのですが、お父様達はどうなるのでしょうか?」
「裁判の結果はまだ出ていないが、モース伯爵家自体を解体して国外追放になるだろうな」
「国外追放……」
私が最初に言われたこととほぼ同じ内容になりそうだった。お父様もその時は国外に行けと言っていたし。
「一人の人間の人生をメチャクチャにした罪は果てしなく重いさ」
「ありがとうございます……レグリス様」
「気にしないでくれ。私がやりたいことをしているだけだからさ」
レグリス様はどこまでも優しかった。私を王宮に住まわせてくれたり、再教育の手続きをしてくれたり……本当に感謝しかできないわ。近々、国王陛下から貴族としての地位に私をつけてくれるらしいし。こんなレグリス様の姿を見ていたら、変な感情が出て来てしまう。それは恋……。
「レグリス様。このご恩は一生忘れません。私は将来、レグリス様のお役に立ちたいと考えています」
私を暗い闇から救い出してくれたレグリス様……私にとっては神様のような存在だった。彼のためならどんなことでも出来る。
「将来……か。それならユリア、お願いがあるんだけど」
「はい。なんでしょうか?」
「私と将来を共にしてくれないか?」
「えっ……?」
私は耳を疑った……レグリス様は何と言ったのか? 将来を共にする……確かにそう言った。それはつまり……。
「れ、レグリス様……それって……」
「ははは、なんてね」
「じょ、冗談……ですよね?」
レグリス様が笑い出したので冗談だと分かった。私は安心する。
「冗談のつもりではなかったのだけどね。君が嫌じゃなければ、将来のことを考えておいて欲しい」
「レグリス様?」
「私はどうやら君に惚れているようだ」
王子殿下からのまさかの告白だった。私も彼に惹かれているけれど……まさか、レグリス様も同じ気持ちだなんて。
「あの少年の頃に君と初めて出会って一目惚れしていたんだ。そして、運命的な出会いを果たした。これは決して偶然なんかじゃないと思っているよ」
「そうですね、レグリス様。私も偶然ではないと思っています。レグリス様がよろしいのであれば……私の身体をいかようにでもお使いください」
「なかなか刺激的な言葉だな。ははは……しかし、告白は上手くいったと考えていいのかな?」
「はい!」
このお互いの想いは一時的なものかもしれない。でも、私は確かに幸せだった。あの時、閉鎖空間に閉じ込められていた私に光を与えてくれた少年。それがレグリス様だったのだから。
再教育が終了するまでまだまだ年数はかかるけれど、願わくば私達の想いがずっと続くように……。
おしまい
「はい、レグリス様」
私はその日、王宮で再教育の最中だった。と言っても今日は一人で勉強をしていたのだけれど。そこに現れたのがレグリス様だ。
「レイモンド様がどうかしたのですか?」
「色々と調査を続けて、彼にも何か罰をと考えたが……一方的な婚約破棄という罪だけでは慰謝料の増額くらいが席の山だった」
「左様でございましたか。すみません、私の為に……」
「いや、王子として当然のことをやっているだけさ。貴族の腐敗は王家にも影響が出て来るからな。ああいう連中は排除していかなければならない」
私の為にレグリス様は動いてくれていた。その間、私は直接的な手伝いは出来ていない。まあ、伯爵令嬢ですらなくなっている私に手伝えることなんてないのだけれど。だから私は再教育を真剣に行い、立派に自立した人間を目指す必要がある。
レグリス様の父上である国王陛下からの承諾は得たとはいえ、決して安くないお金が掛かるはずだから。私は結果で恩返ししないといけない。
「レイモンド様への罰はそれで良いのですが、お父様達はどうなるのでしょうか?」
「裁判の結果はまだ出ていないが、モース伯爵家自体を解体して国外追放になるだろうな」
「国外追放……」
私が最初に言われたこととほぼ同じ内容になりそうだった。お父様もその時は国外に行けと言っていたし。
「一人の人間の人生をメチャクチャにした罪は果てしなく重いさ」
「ありがとうございます……レグリス様」
「気にしないでくれ。私がやりたいことをしているだけだからさ」
レグリス様はどこまでも優しかった。私を王宮に住まわせてくれたり、再教育の手続きをしてくれたり……本当に感謝しかできないわ。近々、国王陛下から貴族としての地位に私をつけてくれるらしいし。こんなレグリス様の姿を見ていたら、変な感情が出て来てしまう。それは恋……。
「レグリス様。このご恩は一生忘れません。私は将来、レグリス様のお役に立ちたいと考えています」
私を暗い闇から救い出してくれたレグリス様……私にとっては神様のような存在だった。彼のためならどんなことでも出来る。
「将来……か。それならユリア、お願いがあるんだけど」
「はい。なんでしょうか?」
「私と将来を共にしてくれないか?」
「えっ……?」
私は耳を疑った……レグリス様は何と言ったのか? 将来を共にする……確かにそう言った。それはつまり……。
「れ、レグリス様……それって……」
「ははは、なんてね」
「じょ、冗談……ですよね?」
レグリス様が笑い出したので冗談だと分かった。私は安心する。
「冗談のつもりではなかったのだけどね。君が嫌じゃなければ、将来のことを考えておいて欲しい」
「レグリス様?」
「私はどうやら君に惚れているようだ」
王子殿下からのまさかの告白だった。私も彼に惹かれているけれど……まさか、レグリス様も同じ気持ちだなんて。
「あの少年の頃に君と初めて出会って一目惚れしていたんだ。そして、運命的な出会いを果たした。これは決して偶然なんかじゃないと思っているよ」
「そうですね、レグリス様。私も偶然ではないと思っています。レグリス様がよろしいのであれば……私の身体をいかようにでもお使いください」
「なかなか刺激的な言葉だな。ははは……しかし、告白は上手くいったと考えていいのかな?」
「はい!」
このお互いの想いは一時的なものかもしれない。でも、私は確かに幸せだった。あの時、閉鎖空間に閉じ込められていた私に光を与えてくれた少年。それがレグリス様だったのだから。
再教育が終了するまでまだまだ年数はかかるけれど、願わくば私達の想いがずっと続くように……。
おしまい
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婚約者、家族ともにヤバいです
王家が敵……最悪ですしね
最悪な家族ですね。
まさしくその通りですね