婚約解消したはずなのに、元婚約者が嫉妬心剥き出しで怖いのですが……

マルローネ

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1話 婚約解消

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「私は隣国の侯爵令嬢と婚約をしようと思っている。フローラ……済まないが、別れて貰えないだろうか?」

「カルロス様……そんな……」

「済まない、これも国益を兼ねているのだ。分かって欲しい……」


 シーロード王国の国益を考えれば確かにそうするのが正しいのだろうけれど……私は素直に納得は出来なかった。

 私の名前はフローラ・カーリー、伯爵令嬢になる。私と話している婚約者の名前はカルロス・シングマ侯爵令息だ。私達は別れ話をしている最中だった。

 理由は、カルロス様が隣国のボーエル王国の侯爵令嬢と婚約する予定だからだ。確か相手の名前は、リディア・スー様だったかな。スー侯爵家というのは、隣国では名のある名家らしい。そんな相手との婚約が決まれば、確かに私と一緒になるよりも利益は大きいのだろうけれど。

「カルロス様……私達はまだ身体の関係こそありませんでしたが、恋愛感情の末に婚約を結んだのだと思っておりました」

「それは間違いない。フローラのことは心から愛していたよ」

「左様でございますか……ですがカルロス様は、国益を優先されるのですね?」

「ぬう……それは……」


 少しいじわるな質問だったかもしれない。カルロス様が私を愛してくれていたことは間違いないと思っている。決して浮気などではないはずだ。そして、侯爵令息という肩書きだけに、恋愛よりも国益を優先するのは仕方のないことなのだろう。

 頭では理解出来る……でも、心まではそうはいかなかった。

「カルロス様の判断は正しいと思います」

「そう言って貰って、非常に嬉しいよフローラ」

「婚約解消につきましては了承いたします……正式な手続きは後日行うとして、慰謝料などは無しということで、処理させていただきます」

「ありがとう、フローラ。そして……本当に済まなかった」

「いえ……リディア・スー様とのご婚約の成功、お祈り申し上げております」

 私に言えることは以上だった。心の中は非常に虚無感が生まれているけれど、カルロス様の前でそれを見せてはいけないと判断したのだ。そして……涙も見せてはいけない。

 私はカルロス様との思い出を忘れ、彼への愛情も全て白紙にして前へ進んで行かないといけないのだから。そうしないと、迷惑を掛けてしまう。それは本意ではない。


 そう、ここまではよくある婚約解消の例だった。いえ、決してよくあるというわけではないだろうけれど……貴族間ではあり得る事象だ。カルロス様は新たなパートナーを得て国益とを両立させる。私はまた別のパートナーを探す旅に出ると言ったところだろうか。

 この時の私はそのように考えていた。それが全く無意味……というより、予想外の方向に向かうことになるとは、思ってもいなかったから。
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