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23話
しおりを挟む「アリス、大丈夫か? 怪我とかはしていないか?」
「ええ、大丈夫よマルクス。心配かけてごめんなさい」
「いや、大丈夫だけど……災難だったな、君も」
グレンデル様はまだ地面に叩きつけられている。その中を通って私のところにマルクスは来てくれた。かなり心配を掛けてしまったようね。
「グレンデルからの報復を恐れてはいたが……まさか、減刑のお願いに来るとは考えていなかったよ」
「私もよ……本当にビックリしてしまったわ」
これならまだ、私設軍を率いて報復に来た方が自然の流れなのかもしれない。まあ、今のグレンデル様にそんな権力はないのだけれど。
「それで……グレンデル様はどうなるのかしら?」
「そうだな、アリスのところに乗り込んだだけでも罪が重くなってもおかしくはない。無期懲役からさらに罰を課せられた場合は……最悪、秘密裏に処理されるかもな」
「えっ? それって……」
貴族としてあまりに不名誉な人物……それがグレンデル様だ。想像したくはないけれど、このまま地下施設に連れて行かれて処分されてもおかしくはない状況だった。もう少しで護衛の一人に殺されかけていたのだから。
「流石にグレンデル様が死んでは夢見が悪いわ。同情するつもりはないけれど」
「確かにその通りだね。とりあえず、裁判所に連れて行って、後の処理は向こうに任せようか」
「そうね。それが良いと思うわ」
「ま、待ってくれ……アリス、マルクス様……! た、助けて……嫌だ、死にたくない……!」
これまで勝手なことをしておいて何を言っているんだろうか。私もマルクスもグレンデル様の声には耳を貸さなかった。グレンデル様はきっと厳しい罰を課せられることになるだろう。そして出来ることなら、二度と顔を合わせたいとは思わない。一生会わないで済む場所に放り出されて欲しいものだわ。国外追放処分とかの方が良いのかもしれないわね。無期懲役だったなら、グレンデル様の面倒を誰かが見なければいけないのだから。
護衛の人々に連れて行かれる中、私はそんなことを考えていた。さようなら、グレンデル様。
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