婚約破棄ですか? 優しい幼馴染がいるので構いませんよ

マルローネ

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29話

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「マルクス、こっちへ来て!」

「おいおい、急かさないでくれよ。こっちは病み上がりなんだからさ!」

「お医者さんも行っていたじゃない。リハビリは重要だって!」


 マルクスが意識を取り戻して2週間くらいが経過した。マルクスは退院しているわけではないけれど、病院の敷地内を歩くことは許されている。もちろん、普通に歩くのはまだ無理なので杖を持っているけれど。それから、最新鋭の護衛も付いていたりする。

 グレンデル様の事件以降、マルクスの護衛は一新されていた。以前の護衛には処罰と言う意味で謹慎処分が与えられたそうな……可哀想だけれど仕方のないことなのかもしれない。ちなみにグレンデル様の護衛の人達は完全にクビで貴族社会からも追放された。こっちは自業自得ね。

 それからグレンデル様はと言うと……。


「やれやれ、なんとか歩けるまでには回復したけど。本当に大きな事件だったね」

「ええ、そうね。とても大きな事件だったわ」


 まだ2週間ちょっとしか経過していないけれど、あの事件は他の貴族にも警戒心を与えるには十分だった。あれ以来、護衛を強化した人はかなり多かったのだとか。マルクスの護衛も強化されているしね。


「グレンデル様は今頃、どうしているのかしら……」

「宮殿の実験体になっているのだろう? ハッキリ言って、極刑や終身刑の方がまだマシだったかもしれないぞ」

「そんなに厳しいところなの……?」

「まあ、噂程度ではあるけれどね。ただ、グレンデルは本来死刑なところを免除されているんだ。もっとも厳しい実験体として扱われているだろうな」

「もっとも厳しい実験体……それって……」

「まあ、あまり想像をしたくはないが。2週間か……」


 マルクスは遠い目をしていた。グレンデル様の身体を案じているのかもしれない。自分を刺した相手なのだから、同情はしていないだろうけれど。なんだか怖くなってきたわね。大丈夫なのかしら?
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