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7話 謁見 その1
しおりを挟む「あ、あの……ゼノン国王陛下……本日は謁見のご許可をいただき本当にありがとうございました」
「うむ、楽にして良いぞ。堅苦しい挨拶はそのくらいにしておこうではないか」
「畏まりました、ありがとうございます」
私とヴィクター兄さまはそれぞれ、ゼノン国王陛下に頭を下げながらソファに座った。目の前に居る人物はダグラス王国の差トップのお方が座っているのだから。自然と声も上滑りしてしまう。
ゼノン国王陛下は普通に話すように望んでいるみたいだけれど、なかなか難しいことだった。
「あの、ゼノン国王陛下」
「どうした、ウィンベル嬢?」
ゼノン国王陛下が私のことを「ウィンベル嬢」と呼ぶのは、形式的なものだと思われる。
「はい……本日のお話についてなのですが……」
「事前にグルワン大臣から聞いている話では、ウィンベル嬢とサンセット・メジラマ侯爵との間で起きた、婚約破棄の件だと聞いているが……」
「左様でございます……」
「うむ、辛い目に遭ってしまったな、ウィンベル嬢。ただ、今回、私に相談したいのはそのことではないのだろう?」
「はい。ご相談したいのは、その後のこと……サンセット様が婚約破棄の慰謝料を支払わない件についてです」
「慰謝料を支払わないか……メジラマ侯爵も大胆なことをするものだな」
私の言葉を聞いたゼノン国王陛下は、何度か軽く相槌を打っていた。おそらく、慰謝料未払いの件も、グルワン大臣から聞いているはずだけれど、改めて聞く姿勢を取ったのだと思う。
「国王陛下、これではあまりにウィンベルが可哀想です」
「うむ、確かにな……」
「ですので、父上……いえ、マリストル伯爵が議会に訴えたのです。しかし、議長であるシルバーマン公爵の話では、サンセット様が邪魔をしているようでこのままではもしかすると、慰謝料が支払われない可能性があるのではないかと思われます」
「なるほど……そういうことか」
ゼノン国王陛下はヴィクター兄さまの話を聞き、明らかに真剣な表情になっていた。
「自分達の家だけではどうしようも出来ないかもしれない。その為に、国王である私のところで来たわけだな?」
「申し訳ありません……ご迷惑なことは、重々承知しているのですが……」
迷惑なことは百も承知している……血は繋がっていたとしても、私は王族ではないのだから。ゼノン国王陛下としても困ってしまう案件だろう。でも、私には相談できるところが他になかったのだ。議会に相談出来ないとなれば、残された手段は、本当の父親であるゼノン国王陛下となってしまう。
お父様も国王陛下に相談することは了承してくれていたし。
「養子縁組が完了しているとはいえ、お前達二人が私の息子、娘である事実は変わらない。迷惑なものか。それに、今回の件は少々、メジラマ侯爵がやり過ぎているようにも感じられるからな。対応してみよう、グルワン大臣頼めるか?」
「畏まりました、陛下。議会にそれとなく調査を掛けてみたいと思います。メジラマ侯爵が議会を私物化しているようでございましたら、それは大変な問題でもありますからな」
「うむ、そういうことだ」
そこまで言うと、セバスチャン・グルワン大臣は深々と頭を下げて、応接室を後にした。どうやら、私達の願いは聞き遂げられたようだ。
「国王陛下……ありがとうございます!」
「本当に、ありがとうございました……!」
「なに、大したことはしていないさ。それにまだ、上手く行くと決まったわけでもない。ただ、とりあえずは安心しても良いのではないか?」
「はい!」
ゼノン国王陛下からの協力を得ることが出来たのだ。それだけでも成功だと言えるだろうか。国王陛下の言う通り、まだ解決したと決まったわけではないけれどね。光明が見えて来ただけでも良かった。
「さて、それではお前達の近況について、聞かせて貰えるか? ヴィクター、お前は婚約者をまだ見つけていないようだが……妹に先を越されそうになったのは、どういうわけなのだ?」
「えっ、ゼノン国王陛下……? 雰囲気が……」
先ほどまでも、そこまで重苦しい雰囲気ではなかったけれど、ゼノン国王陛下はさらに雰囲気を緩めているようだった。質問の内容からして、私達が伯爵家でどういう生活をしていたのかに興味があるのだろうけれど。
急に態度を緩めていくこの姿勢……そういえば、昔からの癖だった気がするわ。私は自然と笑みをこぼしていた。久しぶりの親子水入らずでの会話、というところかしらね。
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