彼女をイケメンに取られた俺が異世界帰り

6章・学校

061・記憶にないクラスメイト

ガヤガヤ...ワイワイ....

「た、多分だけど、こ、このクラスが俺のクラスだったよな？」

俺は生徒が行き来している廊下中、ここが自分の教室であろう前に
立っており、そしてこの教室が俺のクラスだったかのどうかを首を
傾げて考えていた。

「正直言って、うろ覚えなんだよなぁ......」

何せ、約六年も前の話だもの。

それに加え、激闘の戦いの中にいたせいもあって、こっちの記憶が
かなり曖昧あやふやになっている。

あっちの世界ってあらゆる意味でこっちの世界と違い、濃い過ぎだったし、

戦いが佳境に入ってくると、もうこっちの世界の事なんぞ考えている暇も
余裕もなかったもんな。

「......しかしホント参ったな。この教室が俺の教室だと確認できる唯一の
アイテム、生徒手帳を家に忘れてくるだなんて......」

俺の記憶じゃ間違いなくこの胸ポケットに、生徒手帳を入れておいたはず
なんだけどな？

胸ポケットを「おかしいなぁ？」と首を傾げつつポンポンと叩く。

「さて、どうするか。いつまでもここでこうしてても埒が明かないし......」

お！そうだ。

「教室の中にいる生徒達を見れば、もしかしたらここが俺の教室かどうかを
思い出すかも！」

俺はそう思い立つと、教室のドアを静かにソッと開けて教室内を覗き込む。

「...........どれどれ。誰か見知った連中はいるかな～？」

そして俺はドアの隙間から教室中を覗き込み、生徒達をくまなく見渡していく。

だがしかし、

いくら教室中にいる生徒達を見ようとも、俺の記憶がピンとくる事は
一切なかった。

「くそ、やっぱり駄目か！」

そりゃそうだろう。

だって俺ってば、そもそも面と向かってクラスメイトと会話をした事が
なかったもん。

「陰キャラ生活をしていた俺と、クラスメイトが楽しく接する機会なんぞ、
ある訳ないじゃん......」

無論、自分から積極的に接する事もまた殆どなかったので、クラスメイトの
事を全く思い出せないのは、当然の結果なのだ。

「陰キャラボッチは伊達じゃないな......はは」

......さてはて。ならばどうするか？

可能性の高いこの教室に、このまま意を決して入っていくべきか？

もし仮に間違っていたとしても、俺の教室の情報を得る事が出来るかも
しれないし。

そう......

『あれ？キミの教室って、○○組だぞ？』

......ってな感じでさ。

「だけど揶揄われたり、失笑苦笑を買う可能性も高いしな......」

それは正直嫌だ。陰キャラはそういうのが一番嫌いなん―――」


――はっ！？


「そ、そうだ！揶揄うや失笑苦笑で思い出したけど、恵美と仲の
良かった連中がクラスメイトにいたじゃんっ！」

あのクソ浮気女の記憶は頭の隅っこにポイしていたので、スッカリ
その事を忘れていたよ！

えっと......あいつの友達の名前は、

た、確か...西城さいじょう...亜依子あいこに、風見かざみ......心愛ここあだったよな？

で、特徴はギャル全開だった...っけ？

「どれどれ、ギャル...ギャル......っと」

俺は恵美の友達の特徴をふと思い出すと、早速とばかりに教室のドアを開け、
隙間から再び教室内を覗き込む。

「あれでもない、こっちでもない.........」

そして教室内にいるであろう、見た目がギャルの生徒をキョロキョロと
見渡して探していく。

すると、

「ああ！い、いた！あ、あの二人が...そうだよ......な？」

記憶の中に朧気と残っていた恵美の友達...いかにもギャルという女子生徒
二人が、キャッキャと談笑しているのを発見した。

「あいつらがいるって事は、ここが俺のクラスで間違いないみたいだな！」

あの二人が他のクラスからここに来ている可能性もあるが、まぁ時間を
考えるにそれは恐らくないだろう。

俺は時計を見てそう判断すると、教室のドアをガラッと静かに開けて
中へゆっくりと入って行く。