至宝のオメガ

夜乃すてら

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本編 第二部(シオン・エンド編)

番外編 冬の日のぬくもり 3 ※R18表現あり (終)

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 見つめあううち、どちらともなく口づけをかわす。
 お互いのぬくもりを分かち合うように抱き合い、ベッドに倒れ込んだ。
 一週間以上も離れていた隙間を埋めるように、僕達は夢中で求めあう。

「ディル、あなたが腕の中にいる。何度、夢に見たことか」
「ふ。んんっ」

 むさぼるようにキスをしている間に、服を脱がされて、一糸まとわぬ姿になる。
 シオンは性急に僕の体をほぐしていく。触れられるだけでうっとりしてしまい、僕は自然と力を抜いて、シオンを受け入れた。
 シオンの太いものが、僕を貫く。

「う……ああっ」

 久しぶりなので、少しだけつらい。シオンは僕の様子を見ながら、ゆっくりと中に入ってきた。

「はあ……」

 僕は深いため息をつく。
 腹の奥がいっぱいで苦しい。それでも、満ち足りて幸せだ。

「シオン、もっとぎゅっとして」

 少しの隙間も、今は寒く感じられる。僕は肌の温かさを求めて、彼の背に手を回す。

「――っ」

 シオンは息をのみ、フッと口端を上げて笑う。

「ああ、まったく、あなたという方は。私は余裕がないというのに」
「え……?」

 シオンが僕の背に手を回しながら身を起こす。あぐらをかいた彼の膝上に、そのまま僕を座らせた。

「うあっ」

 彼のもので深々と貫かれて、僕はその衝撃に、思わずシオンの肩に爪を立てた。シオンが小さく息をついたが、気にせずに、ゆるく揺さぶる。

「これならぎゅっとできるでしょう?」
「はあ、はあ。シオン、ちょっと待って」
「ええ、このまま少しずつ慣らしましょう」

 シオンは優しく言って、僕の耳を甘噛みし、首に口づける。そうしながら、ゆるりと腰を動かした。

「あ……んん……」

 僕の奥から愛液があふれ、苦しさが徐々にやわらいでいく。すると今度は、他のものも拾い始める。
 鎖骨を甘噛みされ、背筋を指で撫で下ろされる。僕の体は、ビクビクとはねた。幾度かの交わりで、シオンはすっかり僕の体について分かってしまっている。

「シオン……」

 僕がじっとシオンを見つめると、シオンは心得た様子で、僕の唇にキスをする。やわらかく下唇をはみ、氷のような青い目に、愛おしげな温かい光が浮かんだ。この優しい眼差しをされると、くすぐったいような気持ちになり、もっと彼と近づきたくなる。

「大好きです」
「私もです。愛しています、心から」

 僕の目に涙が浮かび、シオンは驚く。

「どこか痛みますか?」
「いえ、違うんです。ただ、幸せで……。胸がいっぱいになると、涙が出るんですね。知らなかった」

 僕はシオンの首にすり寄る。

「あなたといると、愛を信じられます。あなたに会えて良かった。自然と、神様に感謝しています。信心深くはなかったのに」
「一緒に幸せでいましょう、ディル。そのための努力は惜しみません」
「……はい」

 僕がふわりと微笑むと、シオンも温かい笑みを浮かべる。
 再び口づけをかわす。次第に深く舌をからめ、熱にのまれていく。

「ふ、ああっ」

 ぐんっと強く突きあげられ、僕は身を震わせた。シオンの目が熱情に染まり、僕が欲しいと訴えている。

「シオン……もっと、もっと愛して」
「ええ、ディル。あなたが望むならば、何度でも」

 そして、朝日が鎧戸の隙間ににじむまで、僕達はぬくもりをかわしあった。



 あくる日。
 シオンは僕との約束を守って、着せ替え人形になってくれた。
 談話室に衝立を用意して、着替えてもらっては、僕とマリアンで拍手する。

「わあっ、それも似合います!」
「きゃあ、うちの子ってなんて素敵なの!」
「お二人の仲が良いのは、良いことかと思います……」

 シオンはあきらめた顔で、無難なことをつぶやく。僕は藍色の毛糸で編んだ、ボタンでとめるタイプのマフラーを差し出す。

「このマフラーをつけてみて」
「これがマフラーなんですか?」

 シオンは意外そうに、マフラーを見下ろす。

「うん。騎士の皆さんは、マフラーを首に巻いていると危ないから、討伐中は身に着けないんでしょう? これなら邪魔にならないかと思って、作ってみたんです」
「ディル様のお手製ですか! 職人の手かと……お上手ですね」
「お義母様の教え方が良かったんです」

 僕の答えを聞いて、マリアンはうれしそうに笑っている。

「僕はシオンが無事に過ごせているか、不安と心配でいっぱいでした。でも、これからは、無事を祈って、僕にできることはなんでもすると決めました。シオンを想って編んだものです。これを着けていたら、家に帰ってきたくなりますか?」

「それはもう、あなたが恋しすぎて、ホームシックになるでしょうね」
「僕を心配させるのですから、それくらいでちょうどいいと思いません?」
「ええ、そうですね。愛しい方」

 シオンは僕の頭にキスを落とす。

「ちゃんと帰ってきてください。僕はずっとこの城で待っていますから」
「ありがとうございます、ディル様」

 ふわりと僕を抱きしめ、シオンはほっと息をつく。

「ここが嫌になって、お帰りになるのではと案じていました。北方騎士団の騎士の妻になった者の中には、冬の緊張感が続くことに耐えられず、離縁することもありますから」
「離れるつもりはありません。あなたを愛していますから」

 僕とシオンは顔を見合わせ、笑いあった。


 伯爵夫人が伯爵に贈った、少し変わったマフラーのことは、レイブン領ではあっという間に広まった。
 やがて、恋人や家族の無事を祈り、相手へと贈る愛のお守りとして、レイブン領の人々の間に伝わっていくのだった。



 番外編 冬の日のぬくもり おわり。




 ☆彡☆彡☆彡

※あとがき


 先週の分です。月曜にしようと思ってたら、火曜に入っちゃいました。

 ここで、至宝のオメガ、週一更新をやめて、しばらく他の作品を書こうと思います。こればかり書いてたら飽きちゃって~。
 期限は決めません。
 書きたくなったら、書いていると思います。
 
 まだシオン編の番外編が少しあるので、それを書いたらネルヴィス編ですけど、ぼちぼち進めます。
 えーと、あと、私の書きたいの一つと、タルボからの子育て談義でしたっけ? メモをどこに書いたか忘れた~(◎_◎;)
 あ、前世のシオンのその後も、でしたね。三つかな?

 前世のディルレクシアのほうは、ネルヴィス編と重婚編が終わった後に、やる気があれば書くと思います。

 白銀のヴィオラントも……あれも重苦しいところで止まってるなあ; キンドルの続きも、二ヶ月以内に出したいとか言っておいて、二ヶ月すぎてるし。
 体調不良もあいかわらずあるんで、のんびりと自分のペースで進めますね。

 それでは、読んでいただいてありがとうございます。
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