128 / 142
本編 第二部(シオン・エンド編)
番外編 冬の日のぬくもり 3 ※R18表現あり (終)
しおりを挟む見つめあううち、どちらともなく口づけをかわす。
お互いのぬくもりを分かち合うように抱き合い、ベッドに倒れ込んだ。
一週間以上も離れていた隙間を埋めるように、僕達は夢中で求めあう。
「ディル、あなたが腕の中にいる。何度、夢に見たことか」
「ふ。んんっ」
むさぼるようにキスをしている間に、服を脱がされて、一糸まとわぬ姿になる。
シオンは性急に僕の体をほぐしていく。触れられるだけでうっとりしてしまい、僕は自然と力を抜いて、シオンを受け入れた。
シオンの太いものが、僕を貫く。
「う……ああっ」
久しぶりなので、少しだけつらい。シオンは僕の様子を見ながら、ゆっくりと中に入ってきた。
「はあ……」
僕は深いため息をつく。
腹の奥がいっぱいで苦しい。それでも、満ち足りて幸せだ。
「シオン、もっとぎゅっとして」
少しの隙間も、今は寒く感じられる。僕は肌の温かさを求めて、彼の背に手を回す。
「――っ」
シオンは息をのみ、フッと口端を上げて笑う。
「ああ、まったく、あなたという方は。私は余裕がないというのに」
「え……?」
シオンが僕の背に手を回しながら身を起こす。あぐらをかいた彼の膝上に、そのまま僕を座らせた。
「うあっ」
彼のもので深々と貫かれて、僕はその衝撃に、思わずシオンの肩に爪を立てた。シオンが小さく息をついたが、気にせずに、ゆるく揺さぶる。
「これならぎゅっとできるでしょう?」
「はあ、はあ。シオン、ちょっと待って」
「ええ、このまま少しずつ慣らしましょう」
シオンは優しく言って、僕の耳を甘噛みし、首に口づける。そうしながら、ゆるりと腰を動かした。
「あ……んん……」
僕の奥から愛液があふれ、苦しさが徐々にやわらいでいく。すると今度は、他のものも拾い始める。
鎖骨を甘噛みされ、背筋を指で撫で下ろされる。僕の体は、ビクビクとはねた。幾度かの交わりで、シオンはすっかり僕の体について分かってしまっている。
「シオン……」
僕がじっとシオンを見つめると、シオンは心得た様子で、僕の唇にキスをする。やわらかく下唇をはみ、氷のような青い目に、愛おしげな温かい光が浮かんだ。この優しい眼差しをされると、くすぐったいような気持ちになり、もっと彼と近づきたくなる。
「大好きです」
「私もです。愛しています、心から」
僕の目に涙が浮かび、シオンは驚く。
「どこか痛みますか?」
「いえ、違うんです。ただ、幸せで……。胸がいっぱいになると、涙が出るんですね。知らなかった」
僕はシオンの首にすり寄る。
「あなたといると、愛を信じられます。あなたに会えて良かった。自然と、神様に感謝しています。信心深くはなかったのに」
「一緒に幸せでいましょう、ディル。そのための努力は惜しみません」
「……はい」
僕がふわりと微笑むと、シオンも温かい笑みを浮かべる。
再び口づけをかわす。次第に深く舌をからめ、熱にのまれていく。
「ふ、ああっ」
ぐんっと強く突きあげられ、僕は身を震わせた。シオンの目が熱情に染まり、僕が欲しいと訴えている。
「シオン……もっと、もっと愛して」
「ええ、ディル。あなたが望むならば、何度でも」
そして、朝日が鎧戸の隙間ににじむまで、僕達はぬくもりをかわしあった。
あくる日。
シオンは僕との約束を守って、着せ替え人形になってくれた。
談話室に衝立を用意して、着替えてもらっては、僕とマリアンで拍手する。
「わあっ、それも似合います!」
「きゃあ、うちの子ってなんて素敵なの!」
「お二人の仲が良いのは、良いことかと思います……」
シオンはあきらめた顔で、無難なことをつぶやく。僕は藍色の毛糸で編んだ、ボタンでとめるタイプのマフラーを差し出す。
「このマフラーをつけてみて」
「これがマフラーなんですか?」
シオンは意外そうに、マフラーを見下ろす。
「うん。騎士の皆さんは、マフラーを首に巻いていると危ないから、討伐中は身に着けないんでしょう? これなら邪魔にならないかと思って、作ってみたんです」
「ディル様のお手製ですか! 職人の手かと……お上手ですね」
「お義母様の教え方が良かったんです」
僕の答えを聞いて、マリアンはうれしそうに笑っている。
「僕はシオンが無事に過ごせているか、不安と心配でいっぱいでした。でも、これからは、無事を祈って、僕にできることはなんでもすると決めました。シオンを想って編んだものです。これを着けていたら、家に帰ってきたくなりますか?」
「それはもう、あなたが恋しすぎて、ホームシックになるでしょうね」
「僕を心配させるのですから、それくらいでちょうどいいと思いません?」
「ええ、そうですね。愛しい方」
シオンは僕の頭にキスを落とす。
「ちゃんと帰ってきてください。僕はずっとこの城で待っていますから」
「ありがとうございます、ディル様」
ふわりと僕を抱きしめ、シオンはほっと息をつく。
「ここが嫌になって、お帰りになるのではと案じていました。北方騎士団の騎士の妻になった者の中には、冬の緊張感が続くことに耐えられず、離縁することもありますから」
「離れるつもりはありません。あなたを愛していますから」
僕とシオンは顔を見合わせ、笑いあった。
伯爵夫人が伯爵に贈った、少し変わったマフラーのことは、レイブン領ではあっという間に広まった。
やがて、恋人や家族の無事を祈り、相手へと贈る愛のお守りとして、レイブン領の人々の間に伝わっていくのだった。
番外編 冬の日のぬくもり おわり。
☆彡☆彡☆彡
※あとがき
先週の分です。月曜にしようと思ってたら、火曜に入っちゃいました。
ここで、至宝のオメガ、週一更新をやめて、しばらく他の作品を書こうと思います。こればかり書いてたら飽きちゃって~。
期限は決めません。
書きたくなったら、書いていると思います。
まだシオン編の番外編が少しあるので、それを書いたらネルヴィス編ですけど、ぼちぼち進めます。
えーと、あと、私の書きたいの一つと、タルボからの子育て談義でしたっけ? メモをどこに書いたか忘れた~(◎_◎;)
あ、前世のシオンのその後も、でしたね。三つかな?
前世のディルレクシアのほうは、ネルヴィス編と重婚編が終わった後に、やる気があれば書くと思います。
白銀のヴィオラントも……あれも重苦しいところで止まってるなあ; キンドルの続きも、二ヶ月以内に出したいとか言っておいて、二ヶ月すぎてるし。
体調不良もあいかわらずあるんで、のんびりと自分のペースで進めますね。
それでは、読んでいただいてありがとうございます。
12
あなたにおすすめの小説
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
【完結済】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている
キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。
今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。
魔法と剣が支配するリオセルト大陸。
平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。
過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。
すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。
――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。
切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。
全8話
お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /c
番解除した僕等の末路【完結済・短編】
藍生らぱん
BL
都市伝説だと思っていた「運命の番」に出逢った。
番になって数日後、「番解除」された事を悟った。
「番解除」されたΩは、二度と他のαと番になることができない。
けれど余命宣告を受けていた僕にとっては都合が良かった。
希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう
水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」
辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。
ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。
「お前のその特異な力を、帝国のために使え」
強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。
しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。
運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。
偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!
「自由に生きていい」と言われたので冒険者になりましたが、なぜか旦那様が激怒して連れ戻しに来ました。
キノア9g
BL
「君に義務は求めない」=ニート生活推奨!? ポジティブ転生者と、言葉足らずで愛が重い氷の伯爵様の、全力すれ違い新婚ラブコメディ!
あらすじ
「君に求める義務はない。屋敷で自由に過ごしていい」
貧乏男爵家の次男・ルシアン(前世は男子高校生)は、政略結婚した若き天才当主・オルドリンからそう告げられた。
冷徹で無表情な旦那様の言葉を、「俺に興味がないんだな! ラッキー、衣食住保証付きのニート生活だ!」とポジティブに解釈したルシアン。
彼はこっそり屋敷を抜け出し、偽名を使って憧れの冒険者ライフを満喫し始める。
「旦那様は俺に無関心」
そう信じて、半年間ものんきに遊び回っていたルシアンだったが、ある日クエスト中に怪我をしてしまう。
バレたら怒られるかな……とビクビクしていた彼の元に現れたのは、顔面蒼白で息を切らした旦那様で――!?
「君が怪我をしたと聞いて、気が狂いそうだった……!」
怒鳴られるかと思いきや、折れるほど強く抱きしめられて困惑。
えっ、放置してたんじゃなかったの? なんでそんなに必死なの?
実は旦那様は冷徹なのではなく、ルシアンが好きすぎて「嫌われないように」と身を引いていただけの、超・奥手な心配性スパダリだった!
「君を守れるなら、森ごと消し飛ばすが?」
「過保護すぎて冒険になりません!!」
Fランク冒険者ののんきな妻(夫)×国宝級魔法使いの激重旦那様。
すれ違っていた二人が、甘々な「週末冒険者夫婦」になるまでの、勘違いと溺愛のハッピーエンドBL。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる