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3巻
3-3
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「偶然とはいえ、どうやらここに黄夏礼が来るらしい。あいさつしたいと言えば、さすがに拒否はせぬだろう。紫曜、後で行ってこい」
「門前払いが関の山だ。では、こうしようか」
「何?」
「当初の予定通り、妓女を呼ぶ」
「それで?」
「良い女を横取りされたら、黄家の若君もこちらに興味を抱くさ。俗物的な奴だと言っただろ」
紫曜は悪い笑みを浮かべている。
「それで天祐の行方が分かるならば構わぬさ。こういう時のための金だ」
そして碧玉も、にやりと笑う。
悪だくみをする主人達の傍らで、丹青は見ないふりをしていた。
◆
情報を探るにあたって、ちょっとした贈り物はそれなりの威力を持つ。
俗に言うわいろであるが、単純で効果が高いので、碧玉はここぞという時は躊躇せずに金銭をばらまく。
それが、今回は行方不明になった白家宗主の捜索のためなのだから、特に惜しむことはなかった。
はぶりの良い客が来て、妓女にそれなりの装飾がついた簪を与えるだけでなく、下男や下女にすら銀子をくれるとあって、壁観の妓女達は分かりやすく色めきだった。
「若様、青領の銘酒ですわ。どうぞお飲みになって」
「もらおう」
酒杯に酒を注がれながら、碧玉は横目に四人の妓女を一瞥した。十代から二十代の若く美しい女達は、落ち着いた雰囲気をしている。
(なるほど。教育が行き届いた、品の良い妓女ばかりだな)
妓女達は楽器を携えて入室してきたが、碧玉からの贈り物に気を良くして、酒をつぎ雑談に応じる姿勢を見せた。
「まあ、素敵な飲みっぷり!」
「お味はいかが」
強い酒精の酒を気に留めずあおる碧玉の飲みっぷりに、妓女達の歓声が上がった。彼女達は場を明るく盛り上げるだけで、無理に距離を詰めてこようとしないので、碧玉は放っている。
「まろやかで良い酒だ。青竜酒に比べれば味が落ちるが」
碧玉は、青家が五年に一度しか世に出さない幻の銘酒と比較して、感想を述べた。白家の直系は酒に強く、酒を飲んでも大して酔わない。酔う楽しみがないからか、代々、酒よりも香りの良い茶を好む者のほうが多い。それはそれとして、帝への献上品やここぞという客へのもてなしのために、良い品はなんでも手に入れておくようにしている。
碧玉も勉強として、各地の銘酒は飲み比べていた。
妓女が袖で口元を覆い、目を丸くする。
「一瓶で屋敷が買えると噂の、あの銘酒でございますか?」
「そこの黒家の若君も、飲んだことはあるだろう」
「ああ、まあな」
碧玉が紫曜に話題を振ると、紫曜は頷いた。七大世家の後継者ならば、そういうものだ。
ふと思い出したように、紫曜が碧玉の隣にいる妓女に問う。
「なあ、小梅といったか。この辺りには久しぶりに来たんだが、何か変わったことはないかな」
「変わったことでございますか」
妓女の小梅は首を傾げる。
「あの神秘の黄家で、問題事とか」
「ふふっ。お客様ったら。美女画の怪のことを聞きつけて、気になっていらっしゃるのでしょう? 外からのお客様は、皆様そうなんですの」
紫曜が声を潜める。
「で、実際、どうなんだ?」
「どうなのか、一介の妓女であるわたくしには分かりませんが……。噂を聞きつけた白家の宗主が、黄家まで調査にいらっしゃったそうですよ」
「ほう。白家の宗主が?」
紫曜が興味を示すと、小梅は困った顔をした。
「姿を見た方によると、道士というより武官のようだったとか。冬になると黄家は門を閉めてしまいますから、訪問を受け入れられるまで門の前で粘っていたとかで、町では噂になっていたのです」
碧玉は頭痛を覚えて、頭を抱えたくなった。
素直な天祐のことだから、正面からぶつかっていったに違いない。
「それで訪問できたのかい?」
紫曜の問いに、小梅は首を傾げる。
「恐らく。いつの間にか門の前からはいなくなっていたそうですから。ですが、ほら、現黄宗主様の姉君の件がおありでしょう? あの方は先代の白家の宗主に祟り殺されたとか……。黄家にとっては白家の来訪は不吉なことですから、もめるのは必然だと思いますわ」
怖い怪談を口にしたように、小梅はぶるりと震えた。
「ですが、いくらなんでも、白家の宗主を無視するとも思えませんわよ。何かあった時に、道士を派遣していただけなくなりますもの」
「君も黄家の先代や先代の正室は、美女画に殺されたのだと思うか?」
「まさか。先代は梅毒で、ご正室様は急病ですわ。先代のことが恥ずかしいからって、こんな奇妙な噂で隠すなんて、おかしなことですわよね」
小梅は上品に笑った。
それがごく自然な様子だったので、この壁観の者は皆そういう認識でいることが分かった。
「あら、若様。杯が空ですわね、お注ぎいたします」
小梅が酒瓶を持ち上げるのを、碧玉はやんわりと止める。
「もういらぬ。私は酒よりも、茶のほうが好きだ。飲んでも酔わぬゆえ、面白くない」
「本当に贅沢な奴だよ、お前は。昔っからそうだ」
すでに紫曜は顔を赤くしている。紫曜もそれなりに飲めるが、碧玉ほどではない。
「お二人は旧知の仲でいらっしゃるのね」
「ああ。私達は親友だ!」
「お前が勝手にそう名乗っているだけだろう。私はお前を友と思ったことはない」
「冷たいことを言うなよ~、銀嶺~」
紫曜は卓を回りこむと、小梅が横に移動したのを良いことに、碧玉の隣に座った。友人気取りで肩に腕を回し、酒杯を掲げる。
「ほら、飲め飲め。良い酒だ!」
「……はあ。酒に呑まれるでないわ。面倒な……」
碧玉はうんざりして、ため息をつく。
「そなた、興がそがれたゆえ、最も楽が上手い妓女を連れてまいれ」
「それはそのう、黄蓮がそうですけど……」
小梅はちらちらと隣の部屋を気にしている。
すかさず灰炎が銀子をいくつかまとめて手につかませると、小梅は固まった。思わぬ金額にめまいがしたらしい。
「その娘々に伝えよ。こちらに来たら、その十倍の額を払ってやるとな」
「畏まりました。旦那様に相談して参りますので、どうかお待ちくださいませ」
小梅は碧玉の正体をつかめずにいるが、大金をぽんと支払う大物だとは理解して、青ざめている。その場にひれ伏して許しを請うと、すぐさま部屋を出て行った。
紫曜が碧玉にしか聞こえない声で、ぼそりと言う。
「くくっ。そろそろ釣れそうだな」
「酔ったふりをしているだけなら席に戻らぬか」
碧玉も小声で返し、紫曜を追い払う。紫曜はゆらりと立ち上がると、妓女に手を差し出す。
「なあ、そこの楽器を貸してくれ。銀嶺、たまには自ら演奏してはどうだ」
「良かろう」
碧玉は頷いた。楽の腕が一番良いと自負している妓女ならば、碧玉と紫曜の演奏を聞いたら、部屋に来ずにはいられないはずだ。
黒領で問題事を解決する「良い兄貴」であるだけあって、紫曜は悪知恵も働く。
妓女から楽器を借り、碧玉は二胡を、紫曜は琵琶を選び、適当に月にまつわる曲を演奏する。
興に乗った紫曜が、即興で詩を作って詠むと、妓女達はほうと感嘆のため息をつく。
「月のような琥珀壁を背に、麗しい殿方が演奏をなさっているなんて。まるで天上の遊戯のよう」
「なんて風流なの……」
芸事に精通している黄領の妓女達をうならせることに成功して、碧玉は内心で笑った。傍に控えている灰炎や丹青まで一緒になって聞き入っているのは気になるが、楽器を弾くことのほうが珍しいのでしかたがない。
そこへ、先ほど退室した小梅が戻ってきた。
「失礼いたします。黄蓮を連れてまいりました」
「うふふ。あなたがたが大盤振る舞いのお客様ですの? 黄蓮でございます」
黄蓮と呼ばれた妓女は、そう言ってあでやかに微笑んだ。どうやら碧玉達の遠回しな誘いにつられて、やってきたようだ。
彼女が入ってきた途端、部屋が明るくなったように感じられるほど、若々しい美貌に満ちている。琥珀壁に合わせた名なのか、黄色い蓮の装飾を使った衣をまとった、十代後半の女だ。
黄蓮が連れている小間使いの少女に、灰炎がすぐさま銀子を渡した。
「よく来た。お前がこの店で、最も楽の腕が良いらしいな。一曲聞かせてくれ」
碧玉が催促すると、黄蓮は下男に用意された椅子に腰かける。その前には几と古箏が置かれた。
「これほど望まれては、弾かないわけにはまいりませんわ。お客様方には劣りますでしょうけれど、お許しくださいませ」
口元を袖で隠して、黄蓮はにっこり微笑んだ。
黄蓮は謙遜しているが、碧玉達の楽の音に誘われてやって来たのは間違いない。
黄蓮は姿勢を正し、古箏の弦に美しい指を乗せた。そして月を鑑賞するにふさわしい幽玄な曲を、情緒たっぷりに弾き始める。店一番というだけあって、黄蓮の演奏は見事なものだった。
曲を聞き終えると、碧玉は心からの賛辞を口にする。
「ほう。これは素晴らしい。滅多に聞けぬ調べだな」
「天上の楽のようだ」
紫曜もおべっかを口にした。
黄蓮は気を良くして、ころころと笑っている。
「せっかくの酒席だ。共に合奏しないか」
紫曜が琵琶を示す。
「それはいい。曲はそちらで選ぶといい。なんでも合わせよう」
黄蓮はちらりと隣室のほうを見て迷いを見せたが、碧玉に「なんでも合わせる」と言われて、闘争心に火がついたようだった。勝気な目がキラリと光る。
「それでは、最後に一曲だけ」
黄蓮はそれなりに難しいものの、短い曲を選んだ。それに碧玉と紫曜があっさりと合わせて演奏し始めたので、黄蓮は軽く目を瞠った。
良い弾き手が集うと何も話さずとも楽しいもので、曲を終えるのはあっという間だった。
――パチパチパチパチ。
碧玉が心地いい満足感にため息をついた時、戸口のほうで拍手する音が聞こえた。
そちらを見ると、長い金髪を頭の上半分でゆるく結った二十代半ばの男が立っている。垂れ目がちで、どこか気だるげな雰囲気なのに、金の目だけはギラギラしている。すっと通った鼻筋が涼やかな、整った顔立ちをしていた。長身で、白い中衣と薄黄色の深衣を合わせている。優美な黄虎のような男だった。
碧玉はすぐにその男が誰か分かった。現在の黄宗主である、黄夏礼その人だ。
「おお、これは黄宗主殿。お久しぶりですな!」
紫曜が琵琶を妓女に返して立ち上がり、大げさな態度で拱手をする。さりげなく碧玉を後ろに隠したようだ。碧玉も礼儀を示しながら、紫曜の後ろ姿を眺めた。
「黒家の若君ではありませんか。お久しゅうございますな」
夏礼はにこやかに拱手を返し、碧玉のほうを見る。
「そちらの白碧玉」
「え?」
「……にどことなく似ている方はどちら様ですか」
「ああ、彼か? 雲銀嶺殿だ。白家の遠縁の方でね。私とは古なじみなのだよ」
紫曜は簡単に紹介すると、おどけた様子で問う。
「それにしても、冬は門を閉じていらっしゃるのに、遊びに出てきたのですか。珍しいこともあるものです」
「ああ、今日はお祝いのために席を用意しましてね」
「お祝いですか?」
夏礼はそこで一歩ずれて、背後の人間を示した。
「白家の宗主が、我が妹と婚約したのです」
「「……は?」」
探していた白天祐の登場と夏礼の予想外の言葉に、碧玉と紫曜の間抜けな声がそろった。
二、天祐、敵対する
――これが、混乱の渦に叩き落とされるということなのか。
碧玉は冷静さの裏で、そんなことを考えていた。
ようやく天祐を見つけた安堵と、知らないうちに誰かと婚約していたことへの衝撃が一度に襲ってきて、言葉が出てこない。
「婚約だと! 黄家のご令嬢とか? 白宗主ときたら、我が妹との見合いは断っておいて!」
碧玉の代わりに、紫曜が驚きの声を上げた。だが、碧玉への慮りというより、紫曜自身のもやもやを吐き出しただけのようだった。
夏礼は涼しい顔をして肯定する。
「ええ、次妹の明月とね。白宗主は美女画の怪について調べるため、しばらく我が家に逗留しておいでだったが、ようやく頷いてくれたんだよ」
夏礼の声を聞きながら、碧玉はめまぐるしく記憶を辿って、黄家の人物一覧を思い出した。黄家に来る前に、おさらいしておいて正解だった。
「次妹……明月……。まだ十四の娘ではないか?」
碧玉はぼそぼそと呟く。
前世でのうすらぼんやりした記憶があるせいで、碧玉には十四歳での婚約は若すぎるように感じられるが、世間的には少し早い程度だ。婚約だけならば生まれてすぐにする者もいるし、初潮さえ迎えればすぐに嫁がせる家もある。それでいくと、天祐は十八歳だから、四歳差はちょうどいいとも思える。
「おや、黄家についてよく調べておいでのようだ。明月は父の側室の娘だが、婚姻相手が分家の男と下女の間に生まれた者ならば、特に問題なかろうと思ってね」
夏礼の言葉には天祐への侮蔑だけでなく、異母妹へのあざけりもこもっていた。
仮面の下で、碧玉はぴくりと眉を動かした。
七璃国の王侯貴族は父系血族の直系を重視している。というのも、直系のほうが異能の力が強い傾向にあるからだ。もちろん、天祐のような例外もいる。
異能による仕事をまっとうすることを誇りとしている家で、血の濃さを重視するのは当然のことだ。
そういう事情を知っていても、天祐は夏礼を嫌っている。こんなふうに馬鹿にされたら怒るだろうと思ったが、意外にも天祐は黙したまま立っている。
(なんだ……? やけに静かだな)
碧玉は、天祐が暗い目をしているのが気になった。
人の好い紫曜は、夏礼の言いようをたしなめる。
「黄宗主、白宗主に失礼ではないか。それはそうと、天祐殿。君が行方不明だと、白家では大騒ぎになっていたぞ。だから銀嶺と共に探しに来たんだ。どうして連絡しないんだ?」
「事情がありまして。ご面倒をおかけいたしました」
天祐は殊勝な態度で、詫びを口にする。天祐がちらりとこちらを見た。
「銀嶺も、家来とともに帰って構わない。用事を終えたら戻る」
「……承りました」
碧玉は拱手をして頷いた。
ここで変に反発したら、夏礼に違和感を抱かせるだろうと危惧してのことだ。
「どうです、紫曜殿もこちらの部屋に移りませんか。黄蓮の演奏は素晴らしいでしょう?」
夏礼は意地悪く口端を吊り上げ、紫曜だけを誘う。
夏礼ははっきりと身分の区別をする男だ。将来、黒宗主になるのがほぼ確定している紫曜はともかく、どこの家の者とも知れない雲銀嶺には興味がないらしい。堂々と仲間外れにしようとしている。
「ご遠慮いたしますよ、黄宗主。せっかく友が私をもてなしてくれていますので」
紫曜は感じ良く断った。そして、黄蓮に笑いかける。
「黄蓮殿、楽しいひと時をありがとう。急にわがままを言ってすまなかったね」
「とんでもないことでございます。わたくし達妓女は、お客様にひと時の夢を売るのが務めですもの」
黄蓮はふんわりと微笑む。
夏礼が天祐と共に去ると、黄蓮は優雅にお辞儀をして退室した。紫曜は自分の席に戻り、どかりと座る。碧玉もふうと息をついた。夏礼の登場により、思ったよりも緊張していたようだ。
「なんだかすっかり興が冷めてしまったな」
紫曜はひとりごとのようにつぶやくと、妓女達に話しかける。
「皆、酒と料理だけを置いて、退室してくれないか」
やわらかな物言いで促された妓女達は、優雅にお辞儀をしてから、持参した楽器を手に部屋から下がった。
部屋にはおいしそうな料理と酒だけが残される。
「おい、大丈夫か、碧玉」
紫曜が小声で聞いた。
「天祐殿、妙に冷たい雰囲気だったな。どこか様子がおかしいのに、受け答えははっきりしていた。どう思う?」
「私にもよく分からぬ」
碧玉はそう返事をしたものの、すぐに紫曜に問い返す。
「もしや、反抗期ではないか?」
「ぶふっ。こんな時に冗談を……言ってないな? 真面目な質問か?」
「天祐は十八だ。これまでよく私の言いつけを守ってきた。時折、我を通すが、私に反抗することはほとんど無かったのだ」
「さてはお前、涼しい顔をして動揺しているな……?」
紫曜は鋭く指摘する。
「行方不明になったかと思えば、嫌っていた黄家の次女と婚約しているなど、誰が予想できる?」
紫曜がからかう前に、碧玉は冷え冷えとした目でにらんだ。
「事情があるならば、説明すべきではないか? 白家の家臣達にも心配をかけておいて、あの態度はなんだ」
そう話すうちに、碧玉は自分の怒りは妥当なものだと認識した。
「お前の怒りはもっともだ。だが、どうするんだ?」
「酒楼の帰り際に、天祐を捕まえるしかない」
「では、頃合いを見計らって外に出るか。近くで待つ他ないな」
「そうしよう」
方針が固まったので、碧玉は茶杯を手に取って、ゆっくりと飲んだ。卓に残っているご馳走を一瞥するが、すっかり食欲が失せたせいで、見ているだけで胸焼けしそうだ。
「私はもう食べぬゆえ、残りの料理はお前が食べてしまえ」
「私一人には多すぎる。丹青や灰炎殿にも分けても構わぬか」
「好きにせよ」
碧玉は左手をひらつかせると、卓に右手で頬杖をついた。
(なんだ、この嫌な感じは……。そうだ、前世で読んでいた書物『白天祐の凱旋』で、主人公の天祐が悪役の碧玉へ向ける冷たい眼差しのようだったではないか。まさか今になって、書物のように天祐が私を嫌う展開になるのではないだろうな)
昔ならともかく、今の碧玉は天祐に嫌われるのを想像すると、胸の辺りが苦しくなるような気がする。
ふと気づくと、紫曜達がこちらを見ていた。
「……なんだ?」
碧玉がにらんだのが分かったのか、灰炎と丹青はさっと目をそらした。紫曜は能天気に感想を告げる。
「いや、そうしていると、月下美人のごとしと思ってな」
「なんの話だ?」
「憂鬱そうな美人は、ますます美しいものらしい。……後で天祐殿が怒らないといいが」
紫曜が心配そうにうなるので、碧玉は眉をひそめる。
「お前の言うことは分からぬが……。その天祐のことで、私は頭を痛めているのだぞ。はあ、まったく。今回ばかりはあやつが悪い」
「肝心の事情が分からないのでは、怒りようもない」
どうやら紫曜は、その辺りが判明するまで、第三者の立場を崩すつもりはないようだ。
碧玉は悪態をつく。
「浮気をしたら、相手と天祐を殺すと脅してあったのだがな」
「恐ろしい奴だな、お前は。刃傷沙汰に巻きこまれるのはごめんだぞ」
「天祐がまったく嬉しくなさそうなのが気にかかる。黄家で何に巻きこまれたのだか」
「とりあえず、私が言えるのはただ一つ。黄夏礼が義兄など、私なら金を積まれてもごめんだということだ」
笑顔で毒を吐く紫曜を、碧玉はまじまじと眺める。
「先ほどは、あれに上手いこと媚びていたくせに。『おお、これは黄宗主殿。お久しぶりですな!』だったか?」
碧玉はわざとらしく、紫曜の真似をする。
「お前ときたら、嫌な奴だな。大げさに立ち回って、後ろに隠してやったのに」
紫曜は腹立たしげに、酒杯をあおる。
「だいたい、私のあれは処世術だ。もめごとを起こすよりも、相手の懐に入りこんで弱みを握るほうが好みでね」
紫曜の前に、丹青がほぐした焼き魚の皿をすっと置いた。紫曜はそれに箸をつけて笑みを浮かべる。魚が美味だったようで、ころりと機嫌を直した。紫曜に重宝がられている使用人だけあって、丹青は主人の扱いを心得ているようだ。
「愛想を良くするのは得だぞ」
「ああ、分かった。お前はそんなふうに生きていくがいい」
「そうするとも! ああ、良い酒だ。料理も美味い。黄夏礼のなじみの店だというのを除けば、ここは私好みの酒楼だよ」
碧玉は先ほどから気になっていたことを問う。
「おい、紫曜。お前、もしや黄夏礼のことが嫌いなのか?」
「むしろ、あれを嫌わない人間がいるのか? もう少し謙虚な男だったら、少しくらい好きになれただろうが……。隣の領地であるし、商売相手だから付き合っているだけだ」
「そうか。紫曜、今、私は初めてお前と気が合いそうだと思ったよ」
「……遅すぎないか?」
紫曜の控えめな抗議を、碧玉はふんと鼻を鳴らして無視した。
◆
夜がすっかり更け、隣の部屋から楽の音が聞こえなくなってきた頃。
黄夏礼がそろそろ宴をお開きにするだろうと察して、碧玉達は彼らよりも先に、酒楼を出ることにした。
「今後とも、どうぞごひいきに」
店主の男自ら、玄関先まで見送りに来た。
碧玉と紫曜は鷹揚に頷くと通りに出る。そして、寄り道をするふりをして、適当な物陰に潜んだ。深夜なので碧玉達以外に、人影はほとんど無い。
「さすがにこの時期、深夜に張りこむのはつらくないか? 酒を飲んだおかげで、なんとかなりそうだが」
「お前はもう少し霊力を鍛えたらどうだ」
「修業をしても、寒いものは寒いんだよ」
白い息をはあと吐き、紫曜は手をこすり合わせている。碧玉は首を傾げる。毛皮の羽織物をかけてはいるが、そこまで寒いだろうか。
「白領の厳寒期に比べれば、ここは春のようだ」
「黒領もそうだが……あ、出てきたぞ。なあ、思ったんだが、二人は黄家の馬車で帰るんじゃないか?」
「ならば、天祐の滞在先が黄家とはっきりするゆえ、問題ない」
紫曜の質問に、碧玉は冷静に答える。
壁観のほうを見ていると、夏礼と天祐が入口であいさつをしている。夏礼は供を連れて他の酒楼へ入っていった。天祐はそれをじっと見送っている。
「まったく、黄夏礼も好き者なんじゃないか?」
紫曜がからかうように言った。あの嘆かわしい先代のように、妓楼で女遊びに興じるつもりではないかと、暗に茶化したのだ。
碧玉は夏礼がまだ誰かと過ごすつもりなことに、単純に感心さえ覚える。大して知らない相手と過ごすのは、碧玉には疲れるばかりでまったく癒されないことなのだ。わざわざ苦行を積みに行っているようにさえ見える。
「宴の何が楽しいのか分からぬな。私は一人で庭を眺めながら茶を飲むほうが、よほど心が躍る」
「いや、お前の趣味はちょっと枯れすぎじゃないか?」
碧玉はいらついて、紫曜の足を踏みつけた。
「痛い!」
紫曜が大げさに飛び跳ねた。
「うるさい」
「先に文句を言えよ」
碧玉と紫曜が子どもじみたやりとりをしていると、灰炎が碧玉を呼んだ。
「主君、天祐殿が行ってしまいますよ」
「何?」
見ると、天祐がこちらと正反対の方向へ、通りを歩いていくところだった。碧玉はその様子に憤慨する。
「まったく、黄夏礼め。客人を歩いて帰らせるとは、なんて礼儀知らずだ。他家の宗主に対してならば、余計に気を付けるべきだ」
「もしかしたら、天祐殿はこの辺りに宿をとっているからと、夏礼の申し出を遠慮したかもしれないぞ」
「それでも、だ。せめて提灯持ちくらいは寄越すべきだろう」
「それもそうか」
「とにかく天祐を捕まえねば」
「あ、待てよ」
碧玉が天祐の背を追って走り出すと、紫曜達も急いでついてくる。
天祐に追いつこうと、碧玉は天祐の左腕に手を伸ばす。
「天祐……」
「おわあっ!」
紫曜の慌てふためいた声と同時に、碧玉は後ろに勢いよく引っ張られた。紫曜が碧玉の腹に腕を回して、取り押さえるような動きで退けたのだ。
碧玉は体勢を保てず、道端に尻餅をつく。
「何?」
本気で驚くと、間抜けな言葉しか出てこないものらしい。
碧玉は唖然として天祐を見上げながら、右手で自身の首に触れる。ピリッとした痛みがあった。
天祐はこちらに剣先を向け、冷たい目で見下ろしている。そこで、ようやく自分が天祐に切りかかられたことを理解した。
紫曜がとっさに動かなければ、碧玉は天祐の剣で首を斬り裂かれていただろう。
何が起きたかは理解したが、納得しがたい。
「天祐……?」
「いきなり触れようとは、無礼だな」
視線だけでなく、声まで冷ややかなものである。
この辺りは、夜でもあちこちに明かりがある。碧玉はそれらを頼りに、目の前にいる人物が本当に天祐なのかと、まじまじと観察した。姿形はどう見ても天祐なのに、態度はまったく違う。いつもの天祐ならば、犬が尾を振るように、碧玉への好意をあらわにしているところだ。
「主君、大丈夫ですか」
「……ああ」
灰炎が碧玉に手を貸して立たせ、そのまま碧玉を背に庇う。礼儀として天祐に向けて拱手をした。
「白宗主様、銀嶺様にこのような仕打ち、あんまりでございます。そもそも白家の者は、あなた様を心配しておりますのに、ろくな説明もなく帰れとおっしゃるのもいかがなものでしょうか」
「家臣の分際で、宗主を非難するつもりか。出過ぎた真似をするな」
天祐は目を細める。明らかな敵意がにじんでおり、灰炎が体を強張らせた。碧玉は流れが悪いことを察した。
(灰炎がこれ以上抗弁すれば、反逆と見なして殺されるかもしれぬ。普段の天祐ならばありえぬことだが)
碧玉の安全が関わっていなければという前提はあるが、普段の天祐は、優しく温厚な青年だ。白家の臣下に、こんな怖い態度をとることはない。
碧玉は灰炎に命令する。
「灰炎、構わぬ。下がっておれ」
「しかし」
「二度は言わぬ」
「は」
今度は、碧玉が灰炎を守る番だった。灰炎は渋々という様子で、碧玉の後ろへ移動する。
(気に入らぬ)
何が起きているのか分からないが、義弟に高圧的な態度をとられるのは、碧玉の矜持が許さない。すっと背筋を伸ばし、冷然とした空気をまとう。
「このような往来で、いきなり剣を抜くほうがどうかしている。そのような作法を、お前の兄は教えていないはずだが」
天祐の眉が不愉快そうにぴくりと動いた。
「門前払いが関の山だ。では、こうしようか」
「何?」
「当初の予定通り、妓女を呼ぶ」
「それで?」
「良い女を横取りされたら、黄家の若君もこちらに興味を抱くさ。俗物的な奴だと言っただろ」
紫曜は悪い笑みを浮かべている。
「それで天祐の行方が分かるならば構わぬさ。こういう時のための金だ」
そして碧玉も、にやりと笑う。
悪だくみをする主人達の傍らで、丹青は見ないふりをしていた。
◆
情報を探るにあたって、ちょっとした贈り物はそれなりの威力を持つ。
俗に言うわいろであるが、単純で効果が高いので、碧玉はここぞという時は躊躇せずに金銭をばらまく。
それが、今回は行方不明になった白家宗主の捜索のためなのだから、特に惜しむことはなかった。
はぶりの良い客が来て、妓女にそれなりの装飾がついた簪を与えるだけでなく、下男や下女にすら銀子をくれるとあって、壁観の妓女達は分かりやすく色めきだった。
「若様、青領の銘酒ですわ。どうぞお飲みになって」
「もらおう」
酒杯に酒を注がれながら、碧玉は横目に四人の妓女を一瞥した。十代から二十代の若く美しい女達は、落ち着いた雰囲気をしている。
(なるほど。教育が行き届いた、品の良い妓女ばかりだな)
妓女達は楽器を携えて入室してきたが、碧玉からの贈り物に気を良くして、酒をつぎ雑談に応じる姿勢を見せた。
「まあ、素敵な飲みっぷり!」
「お味はいかが」
強い酒精の酒を気に留めずあおる碧玉の飲みっぷりに、妓女達の歓声が上がった。彼女達は場を明るく盛り上げるだけで、無理に距離を詰めてこようとしないので、碧玉は放っている。
「まろやかで良い酒だ。青竜酒に比べれば味が落ちるが」
碧玉は、青家が五年に一度しか世に出さない幻の銘酒と比較して、感想を述べた。白家の直系は酒に強く、酒を飲んでも大して酔わない。酔う楽しみがないからか、代々、酒よりも香りの良い茶を好む者のほうが多い。それはそれとして、帝への献上品やここぞという客へのもてなしのために、良い品はなんでも手に入れておくようにしている。
碧玉も勉強として、各地の銘酒は飲み比べていた。
妓女が袖で口元を覆い、目を丸くする。
「一瓶で屋敷が買えると噂の、あの銘酒でございますか?」
「そこの黒家の若君も、飲んだことはあるだろう」
「ああ、まあな」
碧玉が紫曜に話題を振ると、紫曜は頷いた。七大世家の後継者ならば、そういうものだ。
ふと思い出したように、紫曜が碧玉の隣にいる妓女に問う。
「なあ、小梅といったか。この辺りには久しぶりに来たんだが、何か変わったことはないかな」
「変わったことでございますか」
妓女の小梅は首を傾げる。
「あの神秘の黄家で、問題事とか」
「ふふっ。お客様ったら。美女画の怪のことを聞きつけて、気になっていらっしゃるのでしょう? 外からのお客様は、皆様そうなんですの」
紫曜が声を潜める。
「で、実際、どうなんだ?」
「どうなのか、一介の妓女であるわたくしには分かりませんが……。噂を聞きつけた白家の宗主が、黄家まで調査にいらっしゃったそうですよ」
「ほう。白家の宗主が?」
紫曜が興味を示すと、小梅は困った顔をした。
「姿を見た方によると、道士というより武官のようだったとか。冬になると黄家は門を閉めてしまいますから、訪問を受け入れられるまで門の前で粘っていたとかで、町では噂になっていたのです」
碧玉は頭痛を覚えて、頭を抱えたくなった。
素直な天祐のことだから、正面からぶつかっていったに違いない。
「それで訪問できたのかい?」
紫曜の問いに、小梅は首を傾げる。
「恐らく。いつの間にか門の前からはいなくなっていたそうですから。ですが、ほら、現黄宗主様の姉君の件がおありでしょう? あの方は先代の白家の宗主に祟り殺されたとか……。黄家にとっては白家の来訪は不吉なことですから、もめるのは必然だと思いますわ」
怖い怪談を口にしたように、小梅はぶるりと震えた。
「ですが、いくらなんでも、白家の宗主を無視するとも思えませんわよ。何かあった時に、道士を派遣していただけなくなりますもの」
「君も黄家の先代や先代の正室は、美女画に殺されたのだと思うか?」
「まさか。先代は梅毒で、ご正室様は急病ですわ。先代のことが恥ずかしいからって、こんな奇妙な噂で隠すなんて、おかしなことですわよね」
小梅は上品に笑った。
それがごく自然な様子だったので、この壁観の者は皆そういう認識でいることが分かった。
「あら、若様。杯が空ですわね、お注ぎいたします」
小梅が酒瓶を持ち上げるのを、碧玉はやんわりと止める。
「もういらぬ。私は酒よりも、茶のほうが好きだ。飲んでも酔わぬゆえ、面白くない」
「本当に贅沢な奴だよ、お前は。昔っからそうだ」
すでに紫曜は顔を赤くしている。紫曜もそれなりに飲めるが、碧玉ほどではない。
「お二人は旧知の仲でいらっしゃるのね」
「ああ。私達は親友だ!」
「お前が勝手にそう名乗っているだけだろう。私はお前を友と思ったことはない」
「冷たいことを言うなよ~、銀嶺~」
紫曜は卓を回りこむと、小梅が横に移動したのを良いことに、碧玉の隣に座った。友人気取りで肩に腕を回し、酒杯を掲げる。
「ほら、飲め飲め。良い酒だ!」
「……はあ。酒に呑まれるでないわ。面倒な……」
碧玉はうんざりして、ため息をつく。
「そなた、興がそがれたゆえ、最も楽が上手い妓女を連れてまいれ」
「それはそのう、黄蓮がそうですけど……」
小梅はちらちらと隣の部屋を気にしている。
すかさず灰炎が銀子をいくつかまとめて手につかませると、小梅は固まった。思わぬ金額にめまいがしたらしい。
「その娘々に伝えよ。こちらに来たら、その十倍の額を払ってやるとな」
「畏まりました。旦那様に相談して参りますので、どうかお待ちくださいませ」
小梅は碧玉の正体をつかめずにいるが、大金をぽんと支払う大物だとは理解して、青ざめている。その場にひれ伏して許しを請うと、すぐさま部屋を出て行った。
紫曜が碧玉にしか聞こえない声で、ぼそりと言う。
「くくっ。そろそろ釣れそうだな」
「酔ったふりをしているだけなら席に戻らぬか」
碧玉も小声で返し、紫曜を追い払う。紫曜はゆらりと立ち上がると、妓女に手を差し出す。
「なあ、そこの楽器を貸してくれ。銀嶺、たまには自ら演奏してはどうだ」
「良かろう」
碧玉は頷いた。楽の腕が一番良いと自負している妓女ならば、碧玉と紫曜の演奏を聞いたら、部屋に来ずにはいられないはずだ。
黒領で問題事を解決する「良い兄貴」であるだけあって、紫曜は悪知恵も働く。
妓女から楽器を借り、碧玉は二胡を、紫曜は琵琶を選び、適当に月にまつわる曲を演奏する。
興に乗った紫曜が、即興で詩を作って詠むと、妓女達はほうと感嘆のため息をつく。
「月のような琥珀壁を背に、麗しい殿方が演奏をなさっているなんて。まるで天上の遊戯のよう」
「なんて風流なの……」
芸事に精通している黄領の妓女達をうならせることに成功して、碧玉は内心で笑った。傍に控えている灰炎や丹青まで一緒になって聞き入っているのは気になるが、楽器を弾くことのほうが珍しいのでしかたがない。
そこへ、先ほど退室した小梅が戻ってきた。
「失礼いたします。黄蓮を連れてまいりました」
「うふふ。あなたがたが大盤振る舞いのお客様ですの? 黄蓮でございます」
黄蓮と呼ばれた妓女は、そう言ってあでやかに微笑んだ。どうやら碧玉達の遠回しな誘いにつられて、やってきたようだ。
彼女が入ってきた途端、部屋が明るくなったように感じられるほど、若々しい美貌に満ちている。琥珀壁に合わせた名なのか、黄色い蓮の装飾を使った衣をまとった、十代後半の女だ。
黄蓮が連れている小間使いの少女に、灰炎がすぐさま銀子を渡した。
「よく来た。お前がこの店で、最も楽の腕が良いらしいな。一曲聞かせてくれ」
碧玉が催促すると、黄蓮は下男に用意された椅子に腰かける。その前には几と古箏が置かれた。
「これほど望まれては、弾かないわけにはまいりませんわ。お客様方には劣りますでしょうけれど、お許しくださいませ」
口元を袖で隠して、黄蓮はにっこり微笑んだ。
黄蓮は謙遜しているが、碧玉達の楽の音に誘われてやって来たのは間違いない。
黄蓮は姿勢を正し、古箏の弦に美しい指を乗せた。そして月を鑑賞するにふさわしい幽玄な曲を、情緒たっぷりに弾き始める。店一番というだけあって、黄蓮の演奏は見事なものだった。
曲を聞き終えると、碧玉は心からの賛辞を口にする。
「ほう。これは素晴らしい。滅多に聞けぬ調べだな」
「天上の楽のようだ」
紫曜もおべっかを口にした。
黄蓮は気を良くして、ころころと笑っている。
「せっかくの酒席だ。共に合奏しないか」
紫曜が琵琶を示す。
「それはいい。曲はそちらで選ぶといい。なんでも合わせよう」
黄蓮はちらりと隣室のほうを見て迷いを見せたが、碧玉に「なんでも合わせる」と言われて、闘争心に火がついたようだった。勝気な目がキラリと光る。
「それでは、最後に一曲だけ」
黄蓮はそれなりに難しいものの、短い曲を選んだ。それに碧玉と紫曜があっさりと合わせて演奏し始めたので、黄蓮は軽く目を瞠った。
良い弾き手が集うと何も話さずとも楽しいもので、曲を終えるのはあっという間だった。
――パチパチパチパチ。
碧玉が心地いい満足感にため息をついた時、戸口のほうで拍手する音が聞こえた。
そちらを見ると、長い金髪を頭の上半分でゆるく結った二十代半ばの男が立っている。垂れ目がちで、どこか気だるげな雰囲気なのに、金の目だけはギラギラしている。すっと通った鼻筋が涼やかな、整った顔立ちをしていた。長身で、白い中衣と薄黄色の深衣を合わせている。優美な黄虎のような男だった。
碧玉はすぐにその男が誰か分かった。現在の黄宗主である、黄夏礼その人だ。
「おお、これは黄宗主殿。お久しぶりですな!」
紫曜が琵琶を妓女に返して立ち上がり、大げさな態度で拱手をする。さりげなく碧玉を後ろに隠したようだ。碧玉も礼儀を示しながら、紫曜の後ろ姿を眺めた。
「黒家の若君ではありませんか。お久しゅうございますな」
夏礼はにこやかに拱手を返し、碧玉のほうを見る。
「そちらの白碧玉」
「え?」
「……にどことなく似ている方はどちら様ですか」
「ああ、彼か? 雲銀嶺殿だ。白家の遠縁の方でね。私とは古なじみなのだよ」
紫曜は簡単に紹介すると、おどけた様子で問う。
「それにしても、冬は門を閉じていらっしゃるのに、遊びに出てきたのですか。珍しいこともあるものです」
「ああ、今日はお祝いのために席を用意しましてね」
「お祝いですか?」
夏礼はそこで一歩ずれて、背後の人間を示した。
「白家の宗主が、我が妹と婚約したのです」
「「……は?」」
探していた白天祐の登場と夏礼の予想外の言葉に、碧玉と紫曜の間抜けな声がそろった。
二、天祐、敵対する
――これが、混乱の渦に叩き落とされるということなのか。
碧玉は冷静さの裏で、そんなことを考えていた。
ようやく天祐を見つけた安堵と、知らないうちに誰かと婚約していたことへの衝撃が一度に襲ってきて、言葉が出てこない。
「婚約だと! 黄家のご令嬢とか? 白宗主ときたら、我が妹との見合いは断っておいて!」
碧玉の代わりに、紫曜が驚きの声を上げた。だが、碧玉への慮りというより、紫曜自身のもやもやを吐き出しただけのようだった。
夏礼は涼しい顔をして肯定する。
「ええ、次妹の明月とね。白宗主は美女画の怪について調べるため、しばらく我が家に逗留しておいでだったが、ようやく頷いてくれたんだよ」
夏礼の声を聞きながら、碧玉はめまぐるしく記憶を辿って、黄家の人物一覧を思い出した。黄家に来る前に、おさらいしておいて正解だった。
「次妹……明月……。まだ十四の娘ではないか?」
碧玉はぼそぼそと呟く。
前世でのうすらぼんやりした記憶があるせいで、碧玉には十四歳での婚約は若すぎるように感じられるが、世間的には少し早い程度だ。婚約だけならば生まれてすぐにする者もいるし、初潮さえ迎えればすぐに嫁がせる家もある。それでいくと、天祐は十八歳だから、四歳差はちょうどいいとも思える。
「おや、黄家についてよく調べておいでのようだ。明月は父の側室の娘だが、婚姻相手が分家の男と下女の間に生まれた者ならば、特に問題なかろうと思ってね」
夏礼の言葉には天祐への侮蔑だけでなく、異母妹へのあざけりもこもっていた。
仮面の下で、碧玉はぴくりと眉を動かした。
七璃国の王侯貴族は父系血族の直系を重視している。というのも、直系のほうが異能の力が強い傾向にあるからだ。もちろん、天祐のような例外もいる。
異能による仕事をまっとうすることを誇りとしている家で、血の濃さを重視するのは当然のことだ。
そういう事情を知っていても、天祐は夏礼を嫌っている。こんなふうに馬鹿にされたら怒るだろうと思ったが、意外にも天祐は黙したまま立っている。
(なんだ……? やけに静かだな)
碧玉は、天祐が暗い目をしているのが気になった。
人の好い紫曜は、夏礼の言いようをたしなめる。
「黄宗主、白宗主に失礼ではないか。それはそうと、天祐殿。君が行方不明だと、白家では大騒ぎになっていたぞ。だから銀嶺と共に探しに来たんだ。どうして連絡しないんだ?」
「事情がありまして。ご面倒をおかけいたしました」
天祐は殊勝な態度で、詫びを口にする。天祐がちらりとこちらを見た。
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「……承りました」
碧玉は拱手をして頷いた。
ここで変に反発したら、夏礼に違和感を抱かせるだろうと危惧してのことだ。
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夏礼は意地悪く口端を吊り上げ、紫曜だけを誘う。
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「なんだかすっかり興が冷めてしまったな」
紫曜はひとりごとのようにつぶやくと、妓女達に話しかける。
「皆、酒と料理だけを置いて、退室してくれないか」
やわらかな物言いで促された妓女達は、優雅にお辞儀をしてから、持参した楽器を手に部屋から下がった。
部屋にはおいしそうな料理と酒だけが残される。
「おい、大丈夫か、碧玉」
紫曜が小声で聞いた。
「天祐殿、妙に冷たい雰囲気だったな。どこか様子がおかしいのに、受け答えははっきりしていた。どう思う?」
「私にもよく分からぬ」
碧玉はそう返事をしたものの、すぐに紫曜に問い返す。
「もしや、反抗期ではないか?」
「ぶふっ。こんな時に冗談を……言ってないな? 真面目な質問か?」
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「さてはお前、涼しい顔をして動揺しているな……?」
紫曜は鋭く指摘する。
「行方不明になったかと思えば、嫌っていた黄家の次女と婚約しているなど、誰が予想できる?」
紫曜がからかう前に、碧玉は冷え冷えとした目でにらんだ。
「事情があるならば、説明すべきではないか? 白家の家臣達にも心配をかけておいて、あの態度はなんだ」
そう話すうちに、碧玉は自分の怒りは妥当なものだと認識した。
「お前の怒りはもっともだ。だが、どうするんだ?」
「酒楼の帰り際に、天祐を捕まえるしかない」
「では、頃合いを見計らって外に出るか。近くで待つ他ないな」
「そうしよう」
方針が固まったので、碧玉は茶杯を手に取って、ゆっくりと飲んだ。卓に残っているご馳走を一瞥するが、すっかり食欲が失せたせいで、見ているだけで胸焼けしそうだ。
「私はもう食べぬゆえ、残りの料理はお前が食べてしまえ」
「私一人には多すぎる。丹青や灰炎殿にも分けても構わぬか」
「好きにせよ」
碧玉は左手をひらつかせると、卓に右手で頬杖をついた。
(なんだ、この嫌な感じは……。そうだ、前世で読んでいた書物『白天祐の凱旋』で、主人公の天祐が悪役の碧玉へ向ける冷たい眼差しのようだったではないか。まさか今になって、書物のように天祐が私を嫌う展開になるのではないだろうな)
昔ならともかく、今の碧玉は天祐に嫌われるのを想像すると、胸の辺りが苦しくなるような気がする。
ふと気づくと、紫曜達がこちらを見ていた。
「……なんだ?」
碧玉がにらんだのが分かったのか、灰炎と丹青はさっと目をそらした。紫曜は能天気に感想を告げる。
「いや、そうしていると、月下美人のごとしと思ってな」
「なんの話だ?」
「憂鬱そうな美人は、ますます美しいものらしい。……後で天祐殿が怒らないといいが」
紫曜が心配そうにうなるので、碧玉は眉をひそめる。
「お前の言うことは分からぬが……。その天祐のことで、私は頭を痛めているのだぞ。はあ、まったく。今回ばかりはあやつが悪い」
「肝心の事情が分からないのでは、怒りようもない」
どうやら紫曜は、その辺りが判明するまで、第三者の立場を崩すつもりはないようだ。
碧玉は悪態をつく。
「浮気をしたら、相手と天祐を殺すと脅してあったのだがな」
「恐ろしい奴だな、お前は。刃傷沙汰に巻きこまれるのはごめんだぞ」
「天祐がまったく嬉しくなさそうなのが気にかかる。黄家で何に巻きこまれたのだか」
「とりあえず、私が言えるのはただ一つ。黄夏礼が義兄など、私なら金を積まれてもごめんだということだ」
笑顔で毒を吐く紫曜を、碧玉はまじまじと眺める。
「先ほどは、あれに上手いこと媚びていたくせに。『おお、これは黄宗主殿。お久しぶりですな!』だったか?」
碧玉はわざとらしく、紫曜の真似をする。
「お前ときたら、嫌な奴だな。大げさに立ち回って、後ろに隠してやったのに」
紫曜は腹立たしげに、酒杯をあおる。
「だいたい、私のあれは処世術だ。もめごとを起こすよりも、相手の懐に入りこんで弱みを握るほうが好みでね」
紫曜の前に、丹青がほぐした焼き魚の皿をすっと置いた。紫曜はそれに箸をつけて笑みを浮かべる。魚が美味だったようで、ころりと機嫌を直した。紫曜に重宝がられている使用人だけあって、丹青は主人の扱いを心得ているようだ。
「愛想を良くするのは得だぞ」
「ああ、分かった。お前はそんなふうに生きていくがいい」
「そうするとも! ああ、良い酒だ。料理も美味い。黄夏礼のなじみの店だというのを除けば、ここは私好みの酒楼だよ」
碧玉は先ほどから気になっていたことを問う。
「おい、紫曜。お前、もしや黄夏礼のことが嫌いなのか?」
「むしろ、あれを嫌わない人間がいるのか? もう少し謙虚な男だったら、少しくらい好きになれただろうが……。隣の領地であるし、商売相手だから付き合っているだけだ」
「そうか。紫曜、今、私は初めてお前と気が合いそうだと思ったよ」
「……遅すぎないか?」
紫曜の控えめな抗議を、碧玉はふんと鼻を鳴らして無視した。
◆
夜がすっかり更け、隣の部屋から楽の音が聞こえなくなってきた頃。
黄夏礼がそろそろ宴をお開きにするだろうと察して、碧玉達は彼らよりも先に、酒楼を出ることにした。
「今後とも、どうぞごひいきに」
店主の男自ら、玄関先まで見送りに来た。
碧玉と紫曜は鷹揚に頷くと通りに出る。そして、寄り道をするふりをして、適当な物陰に潜んだ。深夜なので碧玉達以外に、人影はほとんど無い。
「さすがにこの時期、深夜に張りこむのはつらくないか? 酒を飲んだおかげで、なんとかなりそうだが」
「お前はもう少し霊力を鍛えたらどうだ」
「修業をしても、寒いものは寒いんだよ」
白い息をはあと吐き、紫曜は手をこすり合わせている。碧玉は首を傾げる。毛皮の羽織物をかけてはいるが、そこまで寒いだろうか。
「白領の厳寒期に比べれば、ここは春のようだ」
「黒領もそうだが……あ、出てきたぞ。なあ、思ったんだが、二人は黄家の馬車で帰るんじゃないか?」
「ならば、天祐の滞在先が黄家とはっきりするゆえ、問題ない」
紫曜の質問に、碧玉は冷静に答える。
壁観のほうを見ていると、夏礼と天祐が入口であいさつをしている。夏礼は供を連れて他の酒楼へ入っていった。天祐はそれをじっと見送っている。
「まったく、黄夏礼も好き者なんじゃないか?」
紫曜がからかうように言った。あの嘆かわしい先代のように、妓楼で女遊びに興じるつもりではないかと、暗に茶化したのだ。
碧玉は夏礼がまだ誰かと過ごすつもりなことに、単純に感心さえ覚える。大して知らない相手と過ごすのは、碧玉には疲れるばかりでまったく癒されないことなのだ。わざわざ苦行を積みに行っているようにさえ見える。
「宴の何が楽しいのか分からぬな。私は一人で庭を眺めながら茶を飲むほうが、よほど心が躍る」
「いや、お前の趣味はちょっと枯れすぎじゃないか?」
碧玉はいらついて、紫曜の足を踏みつけた。
「痛い!」
紫曜が大げさに飛び跳ねた。
「うるさい」
「先に文句を言えよ」
碧玉と紫曜が子どもじみたやりとりをしていると、灰炎が碧玉を呼んだ。
「主君、天祐殿が行ってしまいますよ」
「何?」
見ると、天祐がこちらと正反対の方向へ、通りを歩いていくところだった。碧玉はその様子に憤慨する。
「まったく、黄夏礼め。客人を歩いて帰らせるとは、なんて礼儀知らずだ。他家の宗主に対してならば、余計に気を付けるべきだ」
「もしかしたら、天祐殿はこの辺りに宿をとっているからと、夏礼の申し出を遠慮したかもしれないぞ」
「それでも、だ。せめて提灯持ちくらいは寄越すべきだろう」
「それもそうか」
「とにかく天祐を捕まえねば」
「あ、待てよ」
碧玉が天祐の背を追って走り出すと、紫曜達も急いでついてくる。
天祐に追いつこうと、碧玉は天祐の左腕に手を伸ばす。
「天祐……」
「おわあっ!」
紫曜の慌てふためいた声と同時に、碧玉は後ろに勢いよく引っ張られた。紫曜が碧玉の腹に腕を回して、取り押さえるような動きで退けたのだ。
碧玉は体勢を保てず、道端に尻餅をつく。
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本気で驚くと、間抜けな言葉しか出てこないものらしい。
碧玉は唖然として天祐を見上げながら、右手で自身の首に触れる。ピリッとした痛みがあった。
天祐はこちらに剣先を向け、冷たい目で見下ろしている。そこで、ようやく自分が天祐に切りかかられたことを理解した。
紫曜がとっさに動かなければ、碧玉は天祐の剣で首を斬り裂かれていただろう。
何が起きたかは理解したが、納得しがたい。
「天祐……?」
「いきなり触れようとは、無礼だな」
視線だけでなく、声まで冷ややかなものである。
この辺りは、夜でもあちこちに明かりがある。碧玉はそれらを頼りに、目の前にいる人物が本当に天祐なのかと、まじまじと観察した。姿形はどう見ても天祐なのに、態度はまったく違う。いつもの天祐ならば、犬が尾を振るように、碧玉への好意をあらわにしているところだ。
「主君、大丈夫ですか」
「……ああ」
灰炎が碧玉に手を貸して立たせ、そのまま碧玉を背に庇う。礼儀として天祐に向けて拱手をした。
「白宗主様、銀嶺様にこのような仕打ち、あんまりでございます。そもそも白家の者は、あなた様を心配しておりますのに、ろくな説明もなく帰れとおっしゃるのもいかがなものでしょうか」
「家臣の分際で、宗主を非難するつもりか。出過ぎた真似をするな」
天祐は目を細める。明らかな敵意がにじんでおり、灰炎が体を強張らせた。碧玉は流れが悪いことを察した。
(灰炎がこれ以上抗弁すれば、反逆と見なして殺されるかもしれぬ。普段の天祐ならばありえぬことだが)
碧玉の安全が関わっていなければという前提はあるが、普段の天祐は、優しく温厚な青年だ。白家の臣下に、こんな怖い態度をとることはない。
碧玉は灰炎に命令する。
「灰炎、構わぬ。下がっておれ」
「しかし」
「二度は言わぬ」
「は」
今度は、碧玉が灰炎を守る番だった。灰炎は渋々という様子で、碧玉の後ろへ移動する。
(気に入らぬ)
何が起きているのか分からないが、義弟に高圧的な態度をとられるのは、碧玉の矜持が許さない。すっと背筋を伸ばし、冷然とした空気をまとう。
「このような往来で、いきなり剣を抜くほうがどうかしている。そのような作法を、お前の兄は教えていないはずだが」
天祐の眉が不愉快そうにぴくりと動いた。
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