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第2話 太陽が沈む夜
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窓の外は一面白銀の世界。
年が明けてから、凍えるような日々が続いていた。冬はどうしてもいつも以上に栄養を欲する。
花生みの味方だった日照時間が圧倒的に短いのが原因だ。
寒さによるエネルギー消費も激しい。
悠は自室のクローゼットに常備していた栄養剤を片手にベッドに横たわっていた。
ゴミ箱はとうに溢れ、サイドチェストに積み上げられたのは空になった栄養剤。
有事に備え、ベッドサイドにはストローを通したばかりの新品の栄養剤も並べている。
傍から見たら異常ともとれる光景だか、悠にとっては日常だ。これでも今年は少ない方だと思う。たった一晩でクローゼットの中身を喰らい尽くしたこともあった。この消費量では春になってもクローゼットの中は潤沢なままだろう。
新しい栄養剤に手をつけた時、背中を鋭い痛みが襲った。
「ちっ……またか」
皮膚を突き破るような激しい痛み。
本日何度目かの花生みの時間。
小さな花が咲いては抜き去られ、咲いては抜き去られた。
その度に飢えた身体が渇くので栄養剤に手をつける。
腹が満たされるとまた花が生み出される。
花を生むと腹が減る。
終わらない悪循環。
気づけば部屋は一面深紅に染まっている。
どれもこれも花食みの体液を摂れば少しは落ち着くだろう。悠の身体は心に反していつだって花食みである都榛を求めていた。
身体を重ねなくとも、手に触れ唇を合わせるだけでも充分に効果はある。
都榛もそれを快諾しているというのに悠は都榛に触れることが怖かった。都榛を無機質な栄養剤と同等に欲してしまう己の欲深さを。あの日の後悔を今でも引きずっていた。
あれはちょうど一年前。
今よりもっと寒さが厳しかった頃。まだ慣れぬ土地、慣れない環境は思った以上に悠を疲弊させた。
豪雪に備え買い込んでいた栄養剤。
クローゼットの中はそれだけで満たされた。食事も十二分に摂って眠りについたとある夜。
「都榛さん……」
「悠?」
あろうことか悠は都榛の部屋に忍び込んだ。
買い込んでいたはずの栄養剤を全て喰らい尽くしてしまったのだ。
飢えた悠の身体は本人の意思に背いて都榛を求める。
暗闇の中、ベッドの上。都榛のアイスブルーの瞳が月明かりを受け、艶めかしく光っていた。
「都榛さん、欲しい……、」
「は…っ、」
自分の名を呼ぶはずだったその唇を塞いだ。
甘い。
今まで食べたどんなものより甘美な唾液。
夢中でその唇に吸い付いてしまう。
それでも足りなくて都榛の頬を両手で包み込んで口内に舌を忍ばせる。
もうどちらのものか分からなくなるくらい熱を分け合って溶け合ったそこは最高に気持ちが良い。
久しぶりに得た花食みの体液を悠は全身で感じていた。
「都榛さん、したいです、いっぱい」
暗闇の中で都榛が頷いた。
悠の上の服を脱がせて、都榛も同じようにした。
ぎしり、と音を立て都榛のベッドのスプリングが軋む。口から自分のものとは思えない声が溢れ、思わず耳を塞ぎたくなった。
「ごめん、ごめん、ごめん…っ、…都榛さん、俺は最低です」
「もう謝らなくていい。ほら、力抜け」
頷く悠の胸には赤い花が次々に生み出されていく。
それを都榛が直接食む。
花を身体から切り離されたのに全く痛くない。
それはとても不思議で、幸福なことだった。
結局、真っ暗だった部屋に朝日が差し込むまで悠の栄養補給は絶えることなく続いた。
翌朝正気に戻った悠は都榛に何度も謝った。
妙に軽い身体が自分を人間ではないと嘲笑っているみたいだ。
都榛は「頼ってくれることが嬉しい」と言っていたが悠が自分を許せなかった。
都榛に浅ましく醜い自分の感情をぶつけてしまった。
もう二度と失敗は許されない。
悠は既に満たされて溢れそうな胃に栄養剤を流し込んだ。空箱を溢れかえったゴミ箱に投げつけ、苦しくてもなんとか横になる。眠らねば無駄なエネルギーを消費することになってしまう。
目を閉じると外で吹き荒れる風の音が聞こえた。
都榛が部屋をこっそり抜け出して来てくれたその昔、二人で眠った夜みたいだ。翌朝怒られる都榛を分厚いガラスの中から見守っていた。
「とば……り…」
温かくて懐かしい匂い。陽がよく入り込むその場所で都榛の為だけに花を生み出していた頃。何も知らずにその花を食べてくれる都榛の顔が好きだった。満たされたままに触れる都榛の身体が好きだった。
浅ましい、後ろめたい気持ちなんて何一つない。
あの場で都榛の花として咲くことを止め、人として都榛の隣にいることを選んでしまった罰。人が身体に花を生み出すんだ。痛くて当然だ。悠は人として生きることで都榛に償おうとしている。
暗闇の中、胸に生まれた花を開花する前に引き抜いて、栄養剤で溢れかえったゴミ箱に捨てた。
なぜだかとても口の中が甘い。ガラスの向こう側で都榛が「悠」と呼んでくれた記憶が蘇ってきた。
⿻
am6:00ピッタリのアラームで目を覚ます。
布団の中に留まりたい気持ちをグッと抑えて起き上がる。
「……?」
起こした身体は羽が生えたかのように軽い。
どこを動かしても痛みはなく、今にも飢えてしまいそうだった身体が満たされている。
昨日栄養剤をたらふく摂取したせいだろうか。
それはないかと思いながら、悠はカーテンを開けて陽を浴びた。小さな窓でもないよりマシだが【Blue】の温室には到底叶わない。
悠ははねた髪にアイロンを当て、着替えを済ませて部屋を出た。
焼けたパンの匂い。
リビングの扉を開くとエプロン姿の都榛が振り返った。着替えはしていないようで、スウェット姿のまま後ろの髪がはねている。
「早いな」
「都榛さんこそ……」
悠が、都榛のフライ返しを奪おうとしたが、それは簡単に跳ね除けられる。
「座ってろよ」
そう言って都榛が笑うので、悠は言われた通りソファに腰を下ろした。
手持ち無沙汰で、ローテーブルを拭いてみたがそれもすぐに終わってしまって、気がついたら都榛の後ろ姿を目で追っていた。
「どうした?」
「いえ、何もないです。ただダサい寝間着だなと思って」
都榛は「余計なお世話だ」とだけ言ってまたフライパンに向き直る。
バターの良い匂い。オムレツだろうか。溶いた卵がフライパンの中で小気味良い音を立てる。
菜箸を置いてフライ返しに持ち替えた都榛が思い出したように振り返った。
「卵が切れている」
「俺が買いに行ってきます」
「俺も行く」
悠が頷くと都榛がついでに行きたい店があると言った。
今日は二人揃ってオフの日だ。
懐からスマホを取り出し、悠に差し出す。
「ここ、気になってて」
SNSのトップページにはテラス席を彩る料理が映っていた。
「ここって……」
それは前に悠がバーの常連に勧められたカフェだった。
「たまにはこういうのも良いだろ」
そう言って都榛は笑った。
家事の分担比率は圧倒的に悠が多い。
元々彼らは、主と下僕。
身の回りの世話は悠が何でもやっていたせいで、都榛は壊滅的に生活力が無いのだ。
都榛が在宅の日に悠は休むことができない。
「都榛さんがそんなに言うなら付き合ってあげなくもないです」
なぜだか心が温かくて、自然と口元が綻んでしまう。
それがばれないように、悠はべっと舌を出した。
ありがとう―――そう言葉が零れそうになったその時。
コンロからエラー音が鳴り響いた。
先程卵を熱していたフライパンからだ。
黒い煙が上がっていて、焦る都榛の寝癖がぴょんぴょん跳ねていた。
「悪い、焦がした。もっかい……」
「大丈夫です。後は俺がやりますから」
鼻を掠める、焦げた匂い。
フライパンの中身を見て悠は笑った。
料理を教えてくれと言った都榛が最初に作ったのもこんな焦げた塊だった気がする。
「懐かしいな」
真っ黒焦げなそれを、悠が皿に盛りつける。
「食うのか?」
「都榛さんの手料理がどれくらい上達したのか確認します」
悪餓鬼のように笑う悠からフライ返し奪った都榛は、真っ黒いそれを二等分に分けた。
「じゃあ俺も」
もう一つ平皿を用意して盛り付け直す。食卓には焼きたてのトーストとサラダ、それから都榛が焦がしたオムレツが並んだ。
「それにしても黒いな」
自分で焦がしたオムレツを都榛がフォークの先でつついている内に、悠がそれを口に運んだ。
バリ、と卵とは思えない音が出る。
都榛の顔が引きつった。
だが悠は、それをまるで大好物でも食べるように味わって嚥下した。
「不味い」
「だったら食うなよ」
「じゃあもっと上達してください」
「ならもっかい作るから残さず食べろよ?」
不意に悠が顔を強張らせる。
遊んでいたら突然熊に遭遇したような、そんな顔だった。
堪えきれずに都榛は思わず噴き出す。
「そんなにまずかったか?」
腹を抱えて笑う都榛は、涙を拭いながら悠を見る。
すると悠は力強く頷いて、でももう一口、口に運んだ。
フォークを掴むその手を、都榛が優しく包みこむ。
「……じゃあずっとお前が作ってくれよ」
「上達するまでですよ」
「じゃあずっと下手なままでいる」
むくれる都榛の頭を、悠が優しく撫でた。
年下扱いするなと、都榛は怒るけれど、悠にとって都榛はいつまで経っても大切な主の子なのだ。
陽光の降り注ぐリビング。
他愛もない会話。
何年経っても変わらない食卓は、悠の心を僅かに落ち着かせた。
年が明けてから、凍えるような日々が続いていた。冬はどうしてもいつも以上に栄養を欲する。
花生みの味方だった日照時間が圧倒的に短いのが原因だ。
寒さによるエネルギー消費も激しい。
悠は自室のクローゼットに常備していた栄養剤を片手にベッドに横たわっていた。
ゴミ箱はとうに溢れ、サイドチェストに積み上げられたのは空になった栄養剤。
有事に備え、ベッドサイドにはストローを通したばかりの新品の栄養剤も並べている。
傍から見たら異常ともとれる光景だか、悠にとっては日常だ。これでも今年は少ない方だと思う。たった一晩でクローゼットの中身を喰らい尽くしたこともあった。この消費量では春になってもクローゼットの中は潤沢なままだろう。
新しい栄養剤に手をつけた時、背中を鋭い痛みが襲った。
「ちっ……またか」
皮膚を突き破るような激しい痛み。
本日何度目かの花生みの時間。
小さな花が咲いては抜き去られ、咲いては抜き去られた。
その度に飢えた身体が渇くので栄養剤に手をつける。
腹が満たされるとまた花が生み出される。
花を生むと腹が減る。
終わらない悪循環。
気づけば部屋は一面深紅に染まっている。
どれもこれも花食みの体液を摂れば少しは落ち着くだろう。悠の身体は心に反していつだって花食みである都榛を求めていた。
身体を重ねなくとも、手に触れ唇を合わせるだけでも充分に効果はある。
都榛もそれを快諾しているというのに悠は都榛に触れることが怖かった。都榛を無機質な栄養剤と同等に欲してしまう己の欲深さを。あの日の後悔を今でも引きずっていた。
あれはちょうど一年前。
今よりもっと寒さが厳しかった頃。まだ慣れぬ土地、慣れない環境は思った以上に悠を疲弊させた。
豪雪に備え買い込んでいた栄養剤。
クローゼットの中はそれだけで満たされた。食事も十二分に摂って眠りについたとある夜。
「都榛さん……」
「悠?」
あろうことか悠は都榛の部屋に忍び込んだ。
買い込んでいたはずの栄養剤を全て喰らい尽くしてしまったのだ。
飢えた悠の身体は本人の意思に背いて都榛を求める。
暗闇の中、ベッドの上。都榛のアイスブルーの瞳が月明かりを受け、艶めかしく光っていた。
「都榛さん、欲しい……、」
「は…っ、」
自分の名を呼ぶはずだったその唇を塞いだ。
甘い。
今まで食べたどんなものより甘美な唾液。
夢中でその唇に吸い付いてしまう。
それでも足りなくて都榛の頬を両手で包み込んで口内に舌を忍ばせる。
もうどちらのものか分からなくなるくらい熱を分け合って溶け合ったそこは最高に気持ちが良い。
久しぶりに得た花食みの体液を悠は全身で感じていた。
「都榛さん、したいです、いっぱい」
暗闇の中で都榛が頷いた。
悠の上の服を脱がせて、都榛も同じようにした。
ぎしり、と音を立て都榛のベッドのスプリングが軋む。口から自分のものとは思えない声が溢れ、思わず耳を塞ぎたくなった。
「ごめん、ごめん、ごめん…っ、…都榛さん、俺は最低です」
「もう謝らなくていい。ほら、力抜け」
頷く悠の胸には赤い花が次々に生み出されていく。
それを都榛が直接食む。
花を身体から切り離されたのに全く痛くない。
それはとても不思議で、幸福なことだった。
結局、真っ暗だった部屋に朝日が差し込むまで悠の栄養補給は絶えることなく続いた。
翌朝正気に戻った悠は都榛に何度も謝った。
妙に軽い身体が自分を人間ではないと嘲笑っているみたいだ。
都榛は「頼ってくれることが嬉しい」と言っていたが悠が自分を許せなかった。
都榛に浅ましく醜い自分の感情をぶつけてしまった。
もう二度と失敗は許されない。
悠は既に満たされて溢れそうな胃に栄養剤を流し込んだ。空箱を溢れかえったゴミ箱に投げつけ、苦しくてもなんとか横になる。眠らねば無駄なエネルギーを消費することになってしまう。
目を閉じると外で吹き荒れる風の音が聞こえた。
都榛が部屋をこっそり抜け出して来てくれたその昔、二人で眠った夜みたいだ。翌朝怒られる都榛を分厚いガラスの中から見守っていた。
「とば……り…」
温かくて懐かしい匂い。陽がよく入り込むその場所で都榛の為だけに花を生み出していた頃。何も知らずにその花を食べてくれる都榛の顔が好きだった。満たされたままに触れる都榛の身体が好きだった。
浅ましい、後ろめたい気持ちなんて何一つない。
あの場で都榛の花として咲くことを止め、人として都榛の隣にいることを選んでしまった罰。人が身体に花を生み出すんだ。痛くて当然だ。悠は人として生きることで都榛に償おうとしている。
暗闇の中、胸に生まれた花を開花する前に引き抜いて、栄養剤で溢れかえったゴミ箱に捨てた。
なぜだかとても口の中が甘い。ガラスの向こう側で都榛が「悠」と呼んでくれた記憶が蘇ってきた。
⿻
am6:00ピッタリのアラームで目を覚ます。
布団の中に留まりたい気持ちをグッと抑えて起き上がる。
「……?」
起こした身体は羽が生えたかのように軽い。
どこを動かしても痛みはなく、今にも飢えてしまいそうだった身体が満たされている。
昨日栄養剤をたらふく摂取したせいだろうか。
それはないかと思いながら、悠はカーテンを開けて陽を浴びた。小さな窓でもないよりマシだが【Blue】の温室には到底叶わない。
悠ははねた髪にアイロンを当て、着替えを済ませて部屋を出た。
焼けたパンの匂い。
リビングの扉を開くとエプロン姿の都榛が振り返った。着替えはしていないようで、スウェット姿のまま後ろの髪がはねている。
「早いな」
「都榛さんこそ……」
悠が、都榛のフライ返しを奪おうとしたが、それは簡単に跳ね除けられる。
「座ってろよ」
そう言って都榛が笑うので、悠は言われた通りソファに腰を下ろした。
手持ち無沙汰で、ローテーブルを拭いてみたがそれもすぐに終わってしまって、気がついたら都榛の後ろ姿を目で追っていた。
「どうした?」
「いえ、何もないです。ただダサい寝間着だなと思って」
都榛は「余計なお世話だ」とだけ言ってまたフライパンに向き直る。
バターの良い匂い。オムレツだろうか。溶いた卵がフライパンの中で小気味良い音を立てる。
菜箸を置いてフライ返しに持ち替えた都榛が思い出したように振り返った。
「卵が切れている」
「俺が買いに行ってきます」
「俺も行く」
悠が頷くと都榛がついでに行きたい店があると言った。
今日は二人揃ってオフの日だ。
懐からスマホを取り出し、悠に差し出す。
「ここ、気になってて」
SNSのトップページにはテラス席を彩る料理が映っていた。
「ここって……」
それは前に悠がバーの常連に勧められたカフェだった。
「たまにはこういうのも良いだろ」
そう言って都榛は笑った。
家事の分担比率は圧倒的に悠が多い。
元々彼らは、主と下僕。
身の回りの世話は悠が何でもやっていたせいで、都榛は壊滅的に生活力が無いのだ。
都榛が在宅の日に悠は休むことができない。
「都榛さんがそんなに言うなら付き合ってあげなくもないです」
なぜだか心が温かくて、自然と口元が綻んでしまう。
それがばれないように、悠はべっと舌を出した。
ありがとう―――そう言葉が零れそうになったその時。
コンロからエラー音が鳴り響いた。
先程卵を熱していたフライパンからだ。
黒い煙が上がっていて、焦る都榛の寝癖がぴょんぴょん跳ねていた。
「悪い、焦がした。もっかい……」
「大丈夫です。後は俺がやりますから」
鼻を掠める、焦げた匂い。
フライパンの中身を見て悠は笑った。
料理を教えてくれと言った都榛が最初に作ったのもこんな焦げた塊だった気がする。
「懐かしいな」
真っ黒焦げなそれを、悠が皿に盛りつける。
「食うのか?」
「都榛さんの手料理がどれくらい上達したのか確認します」
悪餓鬼のように笑う悠からフライ返し奪った都榛は、真っ黒いそれを二等分に分けた。
「じゃあ俺も」
もう一つ平皿を用意して盛り付け直す。食卓には焼きたてのトーストとサラダ、それから都榛が焦がしたオムレツが並んだ。
「それにしても黒いな」
自分で焦がしたオムレツを都榛がフォークの先でつついている内に、悠がそれを口に運んだ。
バリ、と卵とは思えない音が出る。
都榛の顔が引きつった。
だが悠は、それをまるで大好物でも食べるように味わって嚥下した。
「不味い」
「だったら食うなよ」
「じゃあもっと上達してください」
「ならもっかい作るから残さず食べろよ?」
不意に悠が顔を強張らせる。
遊んでいたら突然熊に遭遇したような、そんな顔だった。
堪えきれずに都榛は思わず噴き出す。
「そんなにまずかったか?」
腹を抱えて笑う都榛は、涙を拭いながら悠を見る。
すると悠は力強く頷いて、でももう一口、口に運んだ。
フォークを掴むその手を、都榛が優しく包みこむ。
「……じゃあずっとお前が作ってくれよ」
「上達するまでですよ」
「じゃあずっと下手なままでいる」
むくれる都榛の頭を、悠が優しく撫でた。
年下扱いするなと、都榛は怒るけれど、悠にとって都榛はいつまで経っても大切な主の子なのだ。
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何年経っても変わらない食卓は、悠の心を僅かに落ち着かせた。
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