転生少女は自由気ままに今世を楽しむ

第一章 カルディナ王国編

第2話 アルテミス、騒ぎを見に行く

「お父様とお母様はどこにいるんだろう？」

「おい。大変だ！！」

　両親を探していると騒ぎが起き、人だかりができている場所に向かった。

「すみません。何があったのですか？」

「馬車がひっくり返っちまってな。御者が馬車の下敷きになっちまったんだよ。
　お嬢ちゃん、気になるのはわかるけど、見ない方がいいぞ」

　それは、大変だ。早く助けないといけない感じなんだろうな。

「なんとか……御者は引っ張り出せたが、これは治療院に運んでも助からんかもしれん」

　何があったのか聞いていると、そんなことを言っている声が聞こえてきた。

　運んでも助からないなら、今ここで治癒魔法で治してあげればいいのに何で皆、野次馬のように見ているだけなんだ。

　大怪我をしているという御者の様子が気になったので、人を掻き分け様子を見に行く。

　すると血だらけの男の人が倒れているのが見えた。
　倒れているという寝かされているのかな。


（限定鑑定)

　名前:マルク

　種族:人族

　状態:瀕死。

　症状:出血多量、右腕骨折、両足骨折、肋骨骨折、折れた肋骨が肺に刺さっている。


　瀕死の重症か。これは一刻の猶予もないね。

　そして私は、死にそうな男性の近くに近づいていった。

「こら！子供が見るようなもんじゃないから、あっちに行きなさい。
　親はどうしているだ！！こんな子供を近づけるんなんて」

「そんなことは今は、どうでもいいです。
　早く治療しないとこの人死んじゃいますよ」

「そんなのは、子供の君に言われなくてもわかっている。
　だが……これだけの大怪我じゃ……治療院に連れていっても助からん」

「連れていっていたら間に合わないのであれば、ここで治療したらいいじゃないですか」

「そんなの無理に決まっているだろうが！！
　周りにいる野次馬の中に医者がいるわけでもない」

「魔法で、治療したらいいじゃないですか！」

「！！」

「子供が読む絵本の世界じゃないんだ。人族に魔法が使えるわけがないじゃないか。
　魔法で治療が出来るのは、たまにこの街にも来てくれる……おそらく人族ではないだろう治癒師様だけだ」

「わかったらあっちに行きなさい」

　ええ！人間って魔法使えないの？でも魔力は感じるから、みんな少ないとしても魔力は持っているよね。

　魔力あるのに魔法が使えないってどういうことだろう？

「じゃあ、私がやるので、黙っていてください」

「いい加減にしろよ。君みたいな子供に何が出来るってんだ」

「うるさい！！」

　そう言って、怪我をしている男のところに行った。

（癒しの光)

　私が手をかざし、治癒魔法をかけると男の体が緑色の光に包まれていった。

「なんだなんだ」

「何が起こっているだ」

「あの子供が何かやったのか？」

「これは魔法か？」

「そうだ。治癒師様の治癒魔法を偶然見たことがあるが、あの時と同じ現象だ」

「あんな小さな子供が魔法を！！」

「じゃあ、あの子供は人族ではないということだな」

「魔法を使えるんだ。そういうことだ」

「見た目じゃわからね。子供に見えても、エルフ族は、体の成長が遅いから、見た目が子供でも何百歳ってのが当たり前だからな」

「でも、エルフ族の特徴である尖った長い耳じゃないよ。
　他の種族なんじゃないのかね」

　怪我をした男は、治癒魔法により傷も癒えて、呼吸も安定してきたこれで安心だ。

　他の種族がいるのは、お父様とお母様から教えてもらったので知っている。

　でも両親もさっき誰かが言っていたエルフ族の特徴的な耳ではないし、魔族の特徴である角もない。
　勿論、私もだ。

　私は人族だよ。でも異世界だから誰でも魔法使えると思っていたけど、違うみたいだしな。

　転生する前に神様が特別な体にしとくと言っていたから、その所為とかと思ったけど、お父様もお母様も人族なのに魔法が使えるから、それが理由ではない。

　それにしても何か……私の所為で騒ぎが更に大きくなっちゃったな。