22 / 58
22.持つべきものは良き友達
しおりを挟む
俺は、やらかしてしまったかもしれない……。
強引に千夏ちゃんにキスをした。二度もしたから受け入れてもらえたと思っていたのだけど、あれから彼女との間に気まずい空気が流れている。
「……」
「……」
いっしょにいても無言の時間が流れてしまう。それは心地の良い静寂ではなく、ただただ気まずい沈黙でしかない。
わかっている。千夏ちゃんは恥ずかしがっているだけだ。
「千夏ちゃ……」
「っ!?」
少しでも距離を縮めようものなら、警戒心の強い猫のごとく飛びのかれてしまう。
正直傷ついた。けれど千夏ちゃんも申し訳なさそうな顔をするもんだから、その可愛さで許す俺だった。
たぶん嫌われたわけじゃない……と思う。もし本気で嫌われていたら、俺の傍に近寄ろうともしないだろうし。
でも、平静を保ったまま会話ができるほどの精神状態ではない。
千夏ちゃんって性的なことに初心そうだしね。だからこそ、そこんとこをゆっくり攻めるはずだったのに……。
でもさ、千夏ちゃんも悪いんだよ。俺と二人きりなのに警戒心がまるでないんだもんよ。俺は無害な幼馴染じゃないってのにな。
「……なんて、千夏ちゃんに責任押しつけるとか最低だな」
ため息が止まらない。今なら自分を責めてしまう千夏ちゃんの気持ちが少しわかる気がした。
「どしたんマサ? ため息ばっかついてんじゃん」
「俺知ってる。マリッジブルーってやつだろ。最近雨の日が多いからかったりぃって思ってんだよ」
「お前意味わかってねえじゃん。どうせテレビで聞いた単語を言っただけだろ。使うならちゃんと意味を覚えろよ」
俺の心配をしてくれたかと思いきや、次の瞬間には大笑いしていた。こいつら何がしたいんだよ……。
千夏ちゃんと恋人になってから、初めて友達グループとの昼食タイムである。この騒がしさと男くささが懐かしいと感じるあたり、どれほど千夏ちゃんとの時間が濃密だったかわかるってもんだ。
今日は千夏ちゃんも友達と昼食をとっている。たまには互いの交友関係を尊重することも大切だろう。決して避けられたからではないと信じている。
「……ちょっと相談なんだけどさ」
俺一人では結論を出せないかもしれない。ここは友達に相談するのも手だ。まともなアドバイスをもらえなくても、話すことで整理できるかもしれないしな。
付き合ってることは秘密だ。まあ千夏ちゃんの名前を出さなければ大丈夫だろう。
「実は俺、彼女ができたんだよ」
「杉藤さんだろ?」
「杉藤さんだよな」
「杉藤さんなのは明白だ」
「なんでばれてんだ!?」
お前ら何? 全員エスパーなの?
「むしろマサは本気でばれてないと思ってたわけ?」
「あれだけ杉藤さんを意識してるとこ見せられたらなー」
「昼休みにいっしょにいるところを見たしな。恋人オーラ出してんじゃねえよ」
完全に言い逃れできない状況だった。ごめん千夏ちゃん。全然隠せていなかったよ……。
「で、俺らに相談って何よ?」
からかわれることを覚悟していたものだけど、割と普通に相談を聞いてくれそうだ。
「実はな……、彼女に、キスしたんだよ」
「はい、リア充爆発しろ」
「俺、こんなにもマサにがっかりしたの初めてだわー」
「相談に見せかけた自慢か? どうやら俺を怒らせたいらしいな……」
一気に場が険悪なものになった。とくに彼女いない歴=年齢の奴が恐ろしい目になっている。
「待て待て誤解だ! 話を最後まで聞いてくれ」
俺は千夏ちゃんに(一応名前は伏せたまま)キスをしてから距離をとられてしまうわ、まともに会話ができなくなって大変なのだと説明した。
「それって好き避けじゃね?」
「俺もそう思ったー」
「まあ反応を聞くに、嫌われていないのは確かだな」
好き避け、か。
俺もそうは思っていたけど、人からそう言われて確信できた。やっぱり千夏ちゃんは強引にキスをされて、俺が嫌いになったわけじゃないのだ。
「じゃあ、別に不安になんなくてもいいんだよな?」
「向こうが話しかけてくるまで普通にしとけばいんじゃね?」
「むしろ落ち着くまで距離とるー、とかは不誠実っしょ」
「……爆ぜろ」
一人だけアドバイスでもなんでもないんですけど!?
「わかった。みんな、ありがとな」
でも相談したおかげで変に落ち込まなくて済みそうだ。困った時こそ友達の大切さを教えられる。
※ ※ ※
昼食を済ませて、みんなといっしょに教室に戻るため廊下を歩いていた。
経験上人気のないところは危険なので、人が多い廊下を歩くように気をつける。
「あっ、ちょっとそこの君達」
そこで見かけた三人組の男子を呼び止めた。
「……何?」
それぞれ違ったふてぶてしい顔をしていた。ふてぶてしさにも種類があるんだな。
三人ともぱっと見優等生である。まあ実際に優等生らしい。外面だけはな。
「君達、二年A組だよね?」
「そうだけど」
「俺、二年D組の佐野将隆っていうんだけどさ」
ちょうど千夏ちゃんがいなくて良かった。彼女がいる時に、こんなことはできないからな。
「ちょっと顔貸してくれないか?」
俺は大迫をいじめていたという連中に、優しくお願いをしたのだった。
強引に千夏ちゃんにキスをした。二度もしたから受け入れてもらえたと思っていたのだけど、あれから彼女との間に気まずい空気が流れている。
「……」
「……」
いっしょにいても無言の時間が流れてしまう。それは心地の良い静寂ではなく、ただただ気まずい沈黙でしかない。
わかっている。千夏ちゃんは恥ずかしがっているだけだ。
「千夏ちゃ……」
「っ!?」
少しでも距離を縮めようものなら、警戒心の強い猫のごとく飛びのかれてしまう。
正直傷ついた。けれど千夏ちゃんも申し訳なさそうな顔をするもんだから、その可愛さで許す俺だった。
たぶん嫌われたわけじゃない……と思う。もし本気で嫌われていたら、俺の傍に近寄ろうともしないだろうし。
でも、平静を保ったまま会話ができるほどの精神状態ではない。
千夏ちゃんって性的なことに初心そうだしね。だからこそ、そこんとこをゆっくり攻めるはずだったのに……。
でもさ、千夏ちゃんも悪いんだよ。俺と二人きりなのに警戒心がまるでないんだもんよ。俺は無害な幼馴染じゃないってのにな。
「……なんて、千夏ちゃんに責任押しつけるとか最低だな」
ため息が止まらない。今なら自分を責めてしまう千夏ちゃんの気持ちが少しわかる気がした。
「どしたんマサ? ため息ばっかついてんじゃん」
「俺知ってる。マリッジブルーってやつだろ。最近雨の日が多いからかったりぃって思ってんだよ」
「お前意味わかってねえじゃん。どうせテレビで聞いた単語を言っただけだろ。使うならちゃんと意味を覚えろよ」
俺の心配をしてくれたかと思いきや、次の瞬間には大笑いしていた。こいつら何がしたいんだよ……。
千夏ちゃんと恋人になってから、初めて友達グループとの昼食タイムである。この騒がしさと男くささが懐かしいと感じるあたり、どれほど千夏ちゃんとの時間が濃密だったかわかるってもんだ。
今日は千夏ちゃんも友達と昼食をとっている。たまには互いの交友関係を尊重することも大切だろう。決して避けられたからではないと信じている。
「……ちょっと相談なんだけどさ」
俺一人では結論を出せないかもしれない。ここは友達に相談するのも手だ。まともなアドバイスをもらえなくても、話すことで整理できるかもしれないしな。
付き合ってることは秘密だ。まあ千夏ちゃんの名前を出さなければ大丈夫だろう。
「実は俺、彼女ができたんだよ」
「杉藤さんだろ?」
「杉藤さんだよな」
「杉藤さんなのは明白だ」
「なんでばれてんだ!?」
お前ら何? 全員エスパーなの?
「むしろマサは本気でばれてないと思ってたわけ?」
「あれだけ杉藤さんを意識してるとこ見せられたらなー」
「昼休みにいっしょにいるところを見たしな。恋人オーラ出してんじゃねえよ」
完全に言い逃れできない状況だった。ごめん千夏ちゃん。全然隠せていなかったよ……。
「で、俺らに相談って何よ?」
からかわれることを覚悟していたものだけど、割と普通に相談を聞いてくれそうだ。
「実はな……、彼女に、キスしたんだよ」
「はい、リア充爆発しろ」
「俺、こんなにもマサにがっかりしたの初めてだわー」
「相談に見せかけた自慢か? どうやら俺を怒らせたいらしいな……」
一気に場が険悪なものになった。とくに彼女いない歴=年齢の奴が恐ろしい目になっている。
「待て待て誤解だ! 話を最後まで聞いてくれ」
俺は千夏ちゃんに(一応名前は伏せたまま)キスをしてから距離をとられてしまうわ、まともに会話ができなくなって大変なのだと説明した。
「それって好き避けじゃね?」
「俺もそう思ったー」
「まあ反応を聞くに、嫌われていないのは確かだな」
好き避け、か。
俺もそうは思っていたけど、人からそう言われて確信できた。やっぱり千夏ちゃんは強引にキスをされて、俺が嫌いになったわけじゃないのだ。
「じゃあ、別に不安になんなくてもいいんだよな?」
「向こうが話しかけてくるまで普通にしとけばいんじゃね?」
「むしろ落ち着くまで距離とるー、とかは不誠実っしょ」
「……爆ぜろ」
一人だけアドバイスでもなんでもないんですけど!?
「わかった。みんな、ありがとな」
でも相談したおかげで変に落ち込まなくて済みそうだ。困った時こそ友達の大切さを教えられる。
※ ※ ※
昼食を済ませて、みんなといっしょに教室に戻るため廊下を歩いていた。
経験上人気のないところは危険なので、人が多い廊下を歩くように気をつける。
「あっ、ちょっとそこの君達」
そこで見かけた三人組の男子を呼び止めた。
「……何?」
それぞれ違ったふてぶてしい顔をしていた。ふてぶてしさにも種類があるんだな。
三人ともぱっと見優等生である。まあ実際に優等生らしい。外面だけはな。
「君達、二年A組だよね?」
「そうだけど」
「俺、二年D組の佐野将隆っていうんだけどさ」
ちょうど千夏ちゃんがいなくて良かった。彼女がいる時に、こんなことはできないからな。
「ちょっと顔貸してくれないか?」
俺は大迫をいじめていたという連中に、優しくお願いをしたのだった。
9
あなたにおすすめの小説
友達の妹が、入浴してる。
つきのはい
恋愛
「交換してみない?」
冴えない高校生の藤堂夏弥は、親友のオシャレでモテまくり同級生、鈴川洋平にバカげた話を持ちかけられる。
それは、お互い現在同居中の妹達、藤堂秋乃と鈴川美咲を交換して生活しようというものだった。
鈴川美咲は、美男子の洋平に勝るとも劣らない美少女なのだけれど、男子に嫌悪感を示し、夏弥とも形式的な会話しかしなかった。
冴えない男子と冷めがちな女子の距離感が、二人暮らしのなかで徐々に変わっていく。
そんなラブコメディです。
静かに過ごしたい冬馬君が学園のマドンナに好かれてしまった件について
おとら@ 書籍発売中
青春
この物語は、とある理由から目立ちたくないぼっちの少年の成長物語である
そんなある日、少年は不良に絡まれている女子を助けてしまったが……。
なんと、彼女は学園のマドンナだった……!
こうして平穏に過ごしたい少年の生活は一変することになる。
彼女を避けていたが、度々遭遇してしまう。
そんな中、少年は次第に彼女に惹かれていく……。
そして助けられた少女もまた……。
二人の青春、そして成長物語をご覧ください。
※中盤から甘々にご注意を。
※性描写ありは保険です。
他サイトにも掲載しております。
クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について
沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。
かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。
しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。
現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。
その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。
「今日から私、あなたのメイドになります!」
なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!?
謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける!
カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!
幼馴染に告白したら、交際契約書にサインを求められた件。クーリングオフは可能らしいけど、そんなつもりはない。
久野真一
青春
羽多野幸久(はたのゆきひさ)は成績そこそこだけど、運動などそれ以外全般が優秀な高校二年生。
そんな彼が最近考えるのは想い人の、湯川雅(ゆかわみやび)。異常な頭の良さで「博士」のあだ名で呼ばれる才媛。
彼はある日、勇気を出して雅に告白したのだが―
「交際してくれるなら、この契約書にサインして欲しいの」とずれた返事がかえってきたのだった。
幸久は呆れつつも契約書を読むのだが、そこに書かれていたのは予想と少し違った、想いの籠もった、
ある意味ラブレターのような代物で―
彼女を想い続けた男の子と頭がいいけどどこかずれた思考を持つ彼女の、ちょっと変な、でもほっとする恋模様をお届けします。
全三話構成です。
失恋中なのに隣の幼馴染が僕をかまってきてウザいんですけど?
さいとう みさき
青春
雄太(ゆうた)は勇気を振り絞ってその思いを彼女に告げる。
しかしあっさりと玉砕。
クールビューティーで知られる彼女は皆が憧れる存在だった。
しかしそんな雄太が落ち込んでいる所を、幼馴染たちが寄ってたかってからかってくる。
そんな幼馴染の三大女神と呼ばれる彼女たちに今日も翻弄される雄太だったのだが……
病み上がりなんで、こんなのです。
プロット無し、山なし、谷なし、落ちもなしです。
隣の家の幼馴染と転校生が可愛すぎるんだが
akua034
恋愛
隣に住む幼馴染・水瀬美羽。
毎朝、元気いっぱいに晴を起こしに来るのは、もう当たり前の光景だった。
そんな彼女と同じ高校に進学した――はずだったのに。
数ヶ月後、晴のクラスに転校してきたのは、まさかの“全国で人気の高校生アイドル”黒瀬紗耶。
平凡な高校生活を過ごしたいだけの晴の願いとは裏腹に、
幼馴染とアイドル、二人の存在が彼の日常をどんどんかき回していく。
笑って、悩んで、ちょっとドキドキ。
気づけば心を奪われる――
幼馴染 vs 転校生、青春ラブコメの火蓋がいま切られる!
クラスで一番人気者の女子が構ってくるのだが、そろそろ僕がコミュ障だとわかってもらいたい
みずがめ
恋愛
学生にとって、席替えはいつだって大イベントである。
それはカースト最下位のぼっちである鈴本克巳も同じことであった。せめて穏やかな学生生活をを求める克巳は陽キャグループに囲まれないようにと願っていた。
願いが届いたのか、克巳は窓際の後ろから二番目の席を獲得する。しかし喜んでいたのも束の間、彼の後ろの席にはクラスで一番の人気者の女子、篠原渚が座っていた。
スクールカーストでの格差がありすぎる二人。席が近いとはいえ、関わることはあまりないのだろうと思われていたのだが、渚の方から克巳にしょっちゅう話しかけてくるのであった。
ぼっち男子×のほほん女子のほのぼのラブコメです。
※あっきコタロウさんのフリーイラストを使用しています。
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる