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25.知りたくて、知ってほしくて
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本日のデートの行き先は遊園地である。
某ネズミの国のテーマパークのような大きいところではない。ちょっとした休日に家族連れが楽しむような、そんな料金が良心的な遊園地だ。
「私、遊園地って小学生以来だわ」
「俺も。ここに来たの初めてじゃないんだけど、なんか子供の頃よりも小さく感じるよ」
ワンデーパスを購入。ファミリー割はあったのにカップル割はなかった。こういうところだけでも恋人アピールしたかったのに、残念だ。
入場して千夏ちゃんと手をつなぎながら回った。つないだ手からカチンコチンに緊張しているのが伝わってくる。
それでも、彼女はつないだ手を離そうとはしなかった。
恥ずかしいだろうに、どうしようもなく湧き上がってくる気持ちを克服しようとがんばっている。千夏ちゃんのいじらしさを感じて、まだアトラクションの一つも乗っていないのに飛び跳ねたいほど興奮した。
「ごめんね。まだ慣れてなくて……」
「大丈夫だよ。千夏ちゃんががんばってくれているのわかるし。それに俺も初めての恋人に緊張してるからさ」
「え?」
緊張しているのは同じだよ、と伝えただけだったのに、千夏ちゃんは怪訝な表情を見せた。
「だってマサくん、これまでいろんな女子と付き合ってきたんじゃないの?」
「俺ってそういう軽いイメージだったの? 正真正銘、千夏ちゃんが初めての彼女ですが」
「えぇ?」
どうやら千夏ちゃんの想像では、俺は恋愛経験豊富な男子になっていたらしい。
「だって、その……マサくん格好良いし、慣れてる感じだし……。それに……キ、キス、上手だったし……」
そこまで言って、千夏ちゃんはかぁっと顔を赤くさせた。
「そう? そんなに俺のキスって上手かった?」
「うぅ……知らないっ」
ああ、千夏ちゃんを恥ずかしがらせるのってなんて楽しいんだ。
それに、俺って千夏ちゃんに格好良くてモテる男に見られていたのか。しかも俺のキスが良かったと……。イメージトレーニングしておいて本当に良かった。
「そんな顔でこっち見ないで。あ、あんな強引にキスしておいて経験者って思わない方が無理よ」
「わかったよ。今度からは一言断ってからキスするね」
「……バカ」
そっぽを向かれてしまった。それでも、つないだ手は離す様子はなかった。
「本当は……マサくんのこと、バカって思ってなんかいないんだからね」
「うん。知ってる」
悪口を言ってしまったとでも思ったのか、千夏ちゃんはばつが悪そうに訂正した。わざわざそんなこと言わなくても別に怒ったり気分を害したりなんかしないけどね。
でも、気にするってことは少しずつ素直になろうとしている証だ。
変わろうとしている彼女を、俺は楽しみにしながら見守っていた。
※ ※ ※
遊園地定番のジェットコースター。久しぶりに乗ったけれど、かなり楽しかった。
「いやぁ、童心に戻ったみたいだ。滅茶苦茶楽しかったよ」
「そうよね。私も楽しかったわ。マサくん、もう一回乗らない?」
「よっしゃ。もう一回行こう!」
列に並び直して再びジェットコースターに乗った。
「わー!」とか「きゃー!」と思う存分大声を上げられるのもスッキリする。隣で子供みたいに楽しそうにしている千夏ちゃんが可愛くて、俺は絶叫ものの楽しみ方を新たに知った。
「いやー、乗った乗った」
「私、連続でジェットコースターに乗ったの初めてよ」
「そうなん? こんなに好きなら二回や三回は乗らないと満足できないでしょ」
「そうなんだけど、いつも健太郎がへばっちゃって……あっ」
思わずといった調子で口を押さえる千夏ちゃん。
彼氏の前で他の男の話題を口にしてしまう。さすがにそのまずさに気づいたようだ。千夏ちゃんは気まずそうな表情を浮かべた。
……わかっている。
幼馴染と過ごしてきた時間は、俺と過ごした時間とは比べるまでもない。それだけ千夏ちゃんの思い出に深く根を張っている。
俺と千夏ちゃんは恋人関係になった。だからって、彼女の思い出が消えるわけじゃない。消せるはずがない。
ていうか、彼女に幼馴染男子がいようがいまいが関係ない。その全部をひっくるめて千夏ちゃんを好きになった。その気持ちに堂々と胸を張れる。
「なあ千夏ちゃん」
「う、うん」
「小学生の頃、千夏ちゃんが遊園地で遊んだ時のことを教えてよ」
「私が、小学生の頃?」
「うん。俺が知らない千夏ちゃんをもっと知りたいんだよ」
思い出がなければこれから作ればいい。教えてもらって、もっと知っていければいい。
幼馴染に負けないためじゃない。勝ち負けとか、そういうのは関係ない。
もっと千夏ちゃんのことを知りたい。もっと俺のことを知ってほしい。そうやって、互いに好きなところを見つけ合っていきたいんだ。
そういう時間が許されるのが、恋人関係ってやつなんだから。
某ネズミの国のテーマパークのような大きいところではない。ちょっとした休日に家族連れが楽しむような、そんな料金が良心的な遊園地だ。
「私、遊園地って小学生以来だわ」
「俺も。ここに来たの初めてじゃないんだけど、なんか子供の頃よりも小さく感じるよ」
ワンデーパスを購入。ファミリー割はあったのにカップル割はなかった。こういうところだけでも恋人アピールしたかったのに、残念だ。
入場して千夏ちゃんと手をつなぎながら回った。つないだ手からカチンコチンに緊張しているのが伝わってくる。
それでも、彼女はつないだ手を離そうとはしなかった。
恥ずかしいだろうに、どうしようもなく湧き上がってくる気持ちを克服しようとがんばっている。千夏ちゃんのいじらしさを感じて、まだアトラクションの一つも乗っていないのに飛び跳ねたいほど興奮した。
「ごめんね。まだ慣れてなくて……」
「大丈夫だよ。千夏ちゃんががんばってくれているのわかるし。それに俺も初めての恋人に緊張してるからさ」
「え?」
緊張しているのは同じだよ、と伝えただけだったのに、千夏ちゃんは怪訝な表情を見せた。
「だってマサくん、これまでいろんな女子と付き合ってきたんじゃないの?」
「俺ってそういう軽いイメージだったの? 正真正銘、千夏ちゃんが初めての彼女ですが」
「えぇ?」
どうやら千夏ちゃんの想像では、俺は恋愛経験豊富な男子になっていたらしい。
「だって、その……マサくん格好良いし、慣れてる感じだし……。それに……キ、キス、上手だったし……」
そこまで言って、千夏ちゃんはかぁっと顔を赤くさせた。
「そう? そんなに俺のキスって上手かった?」
「うぅ……知らないっ」
ああ、千夏ちゃんを恥ずかしがらせるのってなんて楽しいんだ。
それに、俺って千夏ちゃんに格好良くてモテる男に見られていたのか。しかも俺のキスが良かったと……。イメージトレーニングしておいて本当に良かった。
「そんな顔でこっち見ないで。あ、あんな強引にキスしておいて経験者って思わない方が無理よ」
「わかったよ。今度からは一言断ってからキスするね」
「……バカ」
そっぽを向かれてしまった。それでも、つないだ手は離す様子はなかった。
「本当は……マサくんのこと、バカって思ってなんかいないんだからね」
「うん。知ってる」
悪口を言ってしまったとでも思ったのか、千夏ちゃんはばつが悪そうに訂正した。わざわざそんなこと言わなくても別に怒ったり気分を害したりなんかしないけどね。
でも、気にするってことは少しずつ素直になろうとしている証だ。
変わろうとしている彼女を、俺は楽しみにしながら見守っていた。
※ ※ ※
遊園地定番のジェットコースター。久しぶりに乗ったけれど、かなり楽しかった。
「いやぁ、童心に戻ったみたいだ。滅茶苦茶楽しかったよ」
「そうよね。私も楽しかったわ。マサくん、もう一回乗らない?」
「よっしゃ。もう一回行こう!」
列に並び直して再びジェットコースターに乗った。
「わー!」とか「きゃー!」と思う存分大声を上げられるのもスッキリする。隣で子供みたいに楽しそうにしている千夏ちゃんが可愛くて、俺は絶叫ものの楽しみ方を新たに知った。
「いやー、乗った乗った」
「私、連続でジェットコースターに乗ったの初めてよ」
「そうなん? こんなに好きなら二回や三回は乗らないと満足できないでしょ」
「そうなんだけど、いつも健太郎がへばっちゃって……あっ」
思わずといった調子で口を押さえる千夏ちゃん。
彼氏の前で他の男の話題を口にしてしまう。さすがにそのまずさに気づいたようだ。千夏ちゃんは気まずそうな表情を浮かべた。
……わかっている。
幼馴染と過ごしてきた時間は、俺と過ごした時間とは比べるまでもない。それだけ千夏ちゃんの思い出に深く根を張っている。
俺と千夏ちゃんは恋人関係になった。だからって、彼女の思い出が消えるわけじゃない。消せるはずがない。
ていうか、彼女に幼馴染男子がいようがいまいが関係ない。その全部をひっくるめて千夏ちゃんを好きになった。その気持ちに堂々と胸を張れる。
「なあ千夏ちゃん」
「う、うん」
「小学生の頃、千夏ちゃんが遊園地で遊んだ時のことを教えてよ」
「私が、小学生の頃?」
「うん。俺が知らない千夏ちゃんをもっと知りたいんだよ」
思い出がなければこれから作ればいい。教えてもらって、もっと知っていければいい。
幼馴染に負けないためじゃない。勝ち負けとか、そういうのは関係ない。
もっと千夏ちゃんのことを知りたい。もっと俺のことを知ってほしい。そうやって、互いに好きなところを見つけ合っていきたいんだ。
そういう時間が許されるのが、恋人関係ってやつなんだから。
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