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26.最高のシチュエーション
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俺と千夏ちゃんは絶叫系のアトラクションを中心に回った。ジェットコースター以外にもバンジージャンプや空中回転ブランコなど、とにかくいろんなものに乗った。
お互い好みがかぶっていたようだ。千夏ちゃんとの共通点がまた一つ見つかって嬉しくなる。
「マサくんがこんなにも絶叫系が好きだったなんてね。私の周りには苦手な人ばかりだったから、たくさん乗れて本当に楽しいわ」
「俺もこんなに乗れたのは初めてだよ。家族で来た時は妹が絶叫系苦手なのに、兄ちゃんだけそんなに乗るのかーって、親に怒られたからさ」
「ふふっ。お兄ちゃんも大変なのね」
冗談めかして言っているんだろうけれど、千夏ちゃんに「お兄ちゃん」って呼ばれるのも悪くないって思ってしまった。俺は決してシスコンではない。千夏ちゃんが可愛いから変な想像をしてしまっただけだ。俺は悪くない。
「千夏ちゃんは兄妹とかいるの?」
「姉が一人いるわ。大学生になってから一人暮らししてて、なかなか会えないけれどね」
「へぇー。千夏ちゃんってお姉さんがいたんだ。あまり会えないと寂しいでしょ」
「もう慣れたわよ。それにお姉ちゃんってば、たまに帰ってきたかと思えばおしゃべりが止まらないんだもん。私だけじゃなくて、お母さんもお父さんも大変なのよ」
「あははー。じゃあいつもはお姉さんがいないから家族三人、平和に暮らしてるんだね」
「そう言われると、なんだかお姉ちゃんが台風みたいに思えてきたわ……」
ふむふむ。つまり両親の外出さえ確認できれば、また千夏ちゃんの家で二人きりになれるのか……。
思考がいけない方向へと行こうとするのを強靭な意志で押しとどめる。
したいことがあったら遠慮せず言っていいとは言われているが、ここでがっついては本当に嫌われてしまう危険がある。
中学時代からの恋心。千夏ちゃんに付き合ってもらえるようになるまで耐えてきたのだ。これからだって欲に流されることなく、耐えてみせる。
「次はあれに乗りましょうよ!」
「おうよ!」
それからも俺達は遊園地デートを楽しんだ。
「マサくん、次はこっちよ!」
「おうよ!」
興奮気味に急かしてくる千夏ちゃんに引っ張られるのも悪くない。積極的に俺の手をとってくれていた。気づいてないだろうから指摘しないけど。
「マサくんマサくん」
「千夏ちゃん、一旦休憩な」
久しぶりの遊園地で興奮しているのだろう。顔が赤くなっているのも気づかず、表情豊かに楽しそうな千夏ちゃん。そんな彼女を見られて俺も楽しい。
いつまでも眺めていたいけれど、休憩を忘れるわけにはいかない。今日は気温が高いし、夏本番はまだでも熱中症には気をつけなければならない。ってのがテレビの情報だ。
「ねえマサくん、この後はどこに行く?」
水分補給をしながらも、千夏ちゃんは次のアトラクションが待ち遠しいといった様子だった。
童心に戻っているのだろう。無邪気に笑っている彼女はとても素直に気持ちを表現していた。
「最後だけ、行きたいところがあるんだけどさ」
俺は一箇所だけ、行きたい乗り物の要望を口にした。
※ ※ ※
遊園地デートで、これだけは外せない乗り物がある。
「わぁー。良い眺めね」
それは観覧車である。
眺めの良い景色と、カップルが二人きりになれる空間を提供してくれる。興奮ばかりだった心も高さを増すごとに落ち着いてくる。
カップルといえば観覧車。そう言っても過言じゃないほど、とてもロマンチックな乗り物だ。
しかも夕焼けに染まっていく景色が雰囲気を盛り上げてくれているようだった。
「そういえば、この近くにプールがあるのよね……」
遊園地のすぐ傍にあるプール施設を眺めながら、千夏ちゃんがぽつりと言った。
その声色には期待感があるようで。俺には誘ってほしいと言っているように聞こえた。
「今度はプールに行こうよ。今日も暑かったってことはこれからはそれ以上に暑くなるだろうし、きっと気持ち良いよ」
「……うん。楽しみ」
と、千夏ちゃんははにかんだ。
そんな彼女に見惚れてしまう。しばらく見つめていたのだろう。俺の様子に気づいた千夏ちゃんがこてんと首をかしげた。
「ぼーっとして、どうしたの?」
「千夏ちゃんに見惚れてた」
「わたっ!? あ、ありがとう……」
ぼふんっ、と夕日に照らされていてもわかりやすいほどに顔を真っ赤にさせる千夏ちゃん。
それでも照れ隠しもせずに、素直にお礼を口にしていた。
「千夏ちゃん、素直になったよね」
「……うん。自分の気持ちに嘘をつかないようにって、決めたから」
「そうなんだ」
素直になりたい。中学の時からツンツンしている彼女を知っているだけに、その気持ちは千夏ちゃんにとって大きな変化だ。
「だから、その……」
向かい合って座っていた千夏ちゃんが、俺の隣へと移動した。
その動きがあまりにも自然で。少しの息遣いが聞こえる距離まで近づかれてから、やっと反応できた。
「ち、千夏ちゃん?」
「マサくんとキスしたの……嫌じゃなかったのも本当よ……」
甘い香り。女の子特有の……いや、千夏ちゃんのにおいだ。
頂上が近づいてくる。
「ううん。嫌とかそうじゃなくて……本当は、もっとしたいって……思ったの……」
……夕焼けの時間帯で良かった。
恥じらいながら、勇気を振り絞った言葉に、顔が熱くなっていくのを自覚する。
こんなの反則だ……。
「……今、キスしてもいい?」
今、誰にも邪魔をされない頂上まで辿り着いた。
「うん……して、いいよ……」
千夏ちゃんは素直に答えてくれた。
「……」
不意打ちでも、無理やりでもない。
目をつむり、首を傾ける。彼女も俺に合わせてくれた。
「……んっ」
遊園地デートで考えうる、最高のシチュエーション。
千夏ちゃんの唇の感触と甘さが、俺にすべてがどうでもいいと思えるほどの幸福をもたらしてくれたのだった。
お互い好みがかぶっていたようだ。千夏ちゃんとの共通点がまた一つ見つかって嬉しくなる。
「マサくんがこんなにも絶叫系が好きだったなんてね。私の周りには苦手な人ばかりだったから、たくさん乗れて本当に楽しいわ」
「俺もこんなに乗れたのは初めてだよ。家族で来た時は妹が絶叫系苦手なのに、兄ちゃんだけそんなに乗るのかーって、親に怒られたからさ」
「ふふっ。お兄ちゃんも大変なのね」
冗談めかして言っているんだろうけれど、千夏ちゃんに「お兄ちゃん」って呼ばれるのも悪くないって思ってしまった。俺は決してシスコンではない。千夏ちゃんが可愛いから変な想像をしてしまっただけだ。俺は悪くない。
「千夏ちゃんは兄妹とかいるの?」
「姉が一人いるわ。大学生になってから一人暮らししてて、なかなか会えないけれどね」
「へぇー。千夏ちゃんってお姉さんがいたんだ。あまり会えないと寂しいでしょ」
「もう慣れたわよ。それにお姉ちゃんってば、たまに帰ってきたかと思えばおしゃべりが止まらないんだもん。私だけじゃなくて、お母さんもお父さんも大変なのよ」
「あははー。じゃあいつもはお姉さんがいないから家族三人、平和に暮らしてるんだね」
「そう言われると、なんだかお姉ちゃんが台風みたいに思えてきたわ……」
ふむふむ。つまり両親の外出さえ確認できれば、また千夏ちゃんの家で二人きりになれるのか……。
思考がいけない方向へと行こうとするのを強靭な意志で押しとどめる。
したいことがあったら遠慮せず言っていいとは言われているが、ここでがっついては本当に嫌われてしまう危険がある。
中学時代からの恋心。千夏ちゃんに付き合ってもらえるようになるまで耐えてきたのだ。これからだって欲に流されることなく、耐えてみせる。
「次はあれに乗りましょうよ!」
「おうよ!」
それからも俺達は遊園地デートを楽しんだ。
「マサくん、次はこっちよ!」
「おうよ!」
興奮気味に急かしてくる千夏ちゃんに引っ張られるのも悪くない。積極的に俺の手をとってくれていた。気づいてないだろうから指摘しないけど。
「マサくんマサくん」
「千夏ちゃん、一旦休憩な」
久しぶりの遊園地で興奮しているのだろう。顔が赤くなっているのも気づかず、表情豊かに楽しそうな千夏ちゃん。そんな彼女を見られて俺も楽しい。
いつまでも眺めていたいけれど、休憩を忘れるわけにはいかない。今日は気温が高いし、夏本番はまだでも熱中症には気をつけなければならない。ってのがテレビの情報だ。
「ねえマサくん、この後はどこに行く?」
水分補給をしながらも、千夏ちゃんは次のアトラクションが待ち遠しいといった様子だった。
童心に戻っているのだろう。無邪気に笑っている彼女はとても素直に気持ちを表現していた。
「最後だけ、行きたいところがあるんだけどさ」
俺は一箇所だけ、行きたい乗り物の要望を口にした。
※ ※ ※
遊園地デートで、これだけは外せない乗り物がある。
「わぁー。良い眺めね」
それは観覧車である。
眺めの良い景色と、カップルが二人きりになれる空間を提供してくれる。興奮ばかりだった心も高さを増すごとに落ち着いてくる。
カップルといえば観覧車。そう言っても過言じゃないほど、とてもロマンチックな乗り物だ。
しかも夕焼けに染まっていく景色が雰囲気を盛り上げてくれているようだった。
「そういえば、この近くにプールがあるのよね……」
遊園地のすぐ傍にあるプール施設を眺めながら、千夏ちゃんがぽつりと言った。
その声色には期待感があるようで。俺には誘ってほしいと言っているように聞こえた。
「今度はプールに行こうよ。今日も暑かったってことはこれからはそれ以上に暑くなるだろうし、きっと気持ち良いよ」
「……うん。楽しみ」
と、千夏ちゃんははにかんだ。
そんな彼女に見惚れてしまう。しばらく見つめていたのだろう。俺の様子に気づいた千夏ちゃんがこてんと首をかしげた。
「ぼーっとして、どうしたの?」
「千夏ちゃんに見惚れてた」
「わたっ!? あ、ありがとう……」
ぼふんっ、と夕日に照らされていてもわかりやすいほどに顔を真っ赤にさせる千夏ちゃん。
それでも照れ隠しもせずに、素直にお礼を口にしていた。
「千夏ちゃん、素直になったよね」
「……うん。自分の気持ちに嘘をつかないようにって、決めたから」
「そうなんだ」
素直になりたい。中学の時からツンツンしている彼女を知っているだけに、その気持ちは千夏ちゃんにとって大きな変化だ。
「だから、その……」
向かい合って座っていた千夏ちゃんが、俺の隣へと移動した。
その動きがあまりにも自然で。少しの息遣いが聞こえる距離まで近づかれてから、やっと反応できた。
「ち、千夏ちゃん?」
「マサくんとキスしたの……嫌じゃなかったのも本当よ……」
甘い香り。女の子特有の……いや、千夏ちゃんのにおいだ。
頂上が近づいてくる。
「ううん。嫌とかそうじゃなくて……本当は、もっとしたいって……思ったの……」
……夕焼けの時間帯で良かった。
恥じらいながら、勇気を振り絞った言葉に、顔が熱くなっていくのを自覚する。
こんなの反則だ……。
「……今、キスしてもいい?」
今、誰にも邪魔をされない頂上まで辿り着いた。
「うん……して、いいよ……」
千夏ちゃんは素直に答えてくれた。
「……」
不意打ちでも、無理やりでもない。
目をつむり、首を傾ける。彼女も俺に合わせてくれた。
「……んっ」
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