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番外編 秘密の女子トーク
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「千夏さんは将隆くんのどういうところが好きなのですか?」
「うっ……。綾乃ちゃんってば急に答えづらいことを聞くわね」
時期は八月。夏休み真っ最中のことでした。
私と千夏さんはお互いに暇だったので、一緒に夏休みの宿題をすることにしました。千夏さんのお部屋に上がらせてもらえるのだと、前日は楽しみすぎてなかなか眠れませんでした。
初めて友達のお部屋に入らせてもらって、浮かれていなかったと聞かれれば嘘になるでしょう。
もっと千夏さんのことを知りたい。その気持ちが、先ほどの質問に至った理由でした。
「千夏さんはモテそうですから。なぜ将隆くんを選んだのかと気になってしまって」
「ちょっ、私がモテるわけないじゃないっ」
恥ずかしそうに否定する千夏さん。そんな顔を見せられて、彼女を放っておく男子が信じられません。
そういえば、健太郎くんが千夏さんにずっとお世話をしてもらっていたのだと言っていましたね。男がいるとでも思われていたのでしょうか?
「……マサくんは、私をずっと見守ってくれていたのよ」
千夏さんは将隆くんとの馴れ初めを語ってくれました。
出会ったのは中学生になった頃。まだ成長期を迎える前だった彼は、千夏さんよりも背が低かったそうです。小さい将隆くん……ちょっと見てみたかったかも。
しかし中学生男子は成長が早いものです。将隆くんが大きくなるにつれて、その容姿も変わっていったようでした。そして、体の成長に比例するかのように包容力を感じるようになったそうです。
「私が愚痴りたい時、マサくんは必ず話を聞いてくれたわ。嫌な顔をしないで、ずっと傍にいてくれた……」
千夏さんは当時を思い出しているのでしょう。とても嬉しそうな顔をしていました。
黒い感情を吐き出しても、笑顔で傍にいてくれる。それがどんなに救われることか……。少しだけ、羨ましいと思ってしまいます。
「マサくんに告白されて、初めて大切に思われる嬉しさを知ったわ。言葉にされて、やっと気持ちを知るだなんて、私って本当に鈍いって思ったわ」
頷きそうになって、なんとか思いとどまりました。
将隆くんの様子を見て、彼の気持ちに最後まで気づかなかったのは千夏さんだけではないでしょうか? そう思うほどに、彼の気持ちはわかりやすいにもほどがありました。
「付き合ってからもマサくんは優しくて……。だから、私も素直にならなきゃって思えたのよ」
「つまり将隆くんとラブラブすぎて、他の男の人なんて考えられないのですね」
「そ、そこまでは言っていないじゃないっ」
「違うんですか?」
「うっ……。違わない、けど……」
千夏さんは顔を真っ赤にしてしまいました。すごく可愛いです。思わずぎゅっと抱きしめてしまいたくなる将隆くんの気持ち。少し悔しいですがわかってしまいますね。
「ふふっ。わかりました。千夏さんにとって将隆くんがどれだけ大切な人かということが、充分に伝わってきましたよ」
「もうっ。知らない……」
照れている千夏さんは抱きしめたいほど愛らしいですね。もちろんそれは将隆くんだけの特権なので、私は心の中で思うだけにしておきます。
「綾乃ちゃんはどうなのよ。それこそ男子からよく告白されるでしょう?」
「……」
無意識に作った笑顔が張りついてしまいました。
いけませんね。千夏さんには素直な私を見せたいのに……。
「あの、嫌なことなら答えなくてもいいのよ?」
私の変化に気づいてくれたのでしょう。千夏さんが気遣わしげにそう言ってくれます。
私の笑顔の裏にある感情をわかってくれた人はいませんでした。同性ならなおさらです。
心配されるのがこんなにも嬉しいことだったなんて、わかっているつもりでわかっていませんでした。
「いいえ。お話をさせてください。千夏さんに、聞いてほしいんです」
そうして私は自分の過去を語りました。
小学生の頃。中学生の頃。そして、現在に至るまで。私がどう思い、どう感じて、どう対処してきたのかを包み隠さずに話しました。
自分が他の人と違う感覚を持っているとわかっています。他人に受け入れてもらえるとは限らないともわかっているつもりです。
それでも、千夏さんには正直に話したかった。本当の私を知ってほしかったから。
「そう、大変だったのね……」
千夏さんはそう言って私を抱きしめてくれました。その抱擁は温かくて、優しくて……。自分の心の何かが溶けていくのがわかります。
「そうなんです……私だって、大変だったんですよ……」
千夏さんの胸の中にいるのが心地良くて、私は身も心も彼女に預けていたのでした。
ああ、将隆くんはこうやって千夏さんの話を聞いていたのでしょうね。自分の心の声を聞いてもらうことが、これほど楽になるものなのだと初めて知りました。
※ ※ ※
「恥ずかしいところを見せてしまいました……」
自分の頬に触れると、ものすごく熱くなっていました。きっと真っ赤になっていることでしょう。
「私もあんなこと、綾乃ちゃんにしか話したことないんだから……お互い様よ」
千夏さんも思い出しているのか、顔がまた赤くなっていました。
自分が秘密にしていたことを話すのは勇気のいることでした。でも、恥ずかしかったですがスッキリしています。
千夏さんも同じ気持ちなのか、顔は赤いままですが気持ちの良い笑顔でした。私もつられて笑顔になります。
「私、千夏さんと友達になれて本当に良かったです」
「何言っているのよ。私だって嬉しいわ」
それがどんなに嬉しいことか。わかってはくれているのでしょうが、私の気持ちの三分の一も伝わっていないでしょうね。
気がつけば、窓から夕陽が差し込んでいました。日が長い時期なのでうっかりしていましたが、もう帰らなければならない時間です。
「そろそろ帰らないと。話に夢中になってあまり宿題が進みませんでしたね」
「あ」
完全に忘れていたのでしょう。千夏さんが「しまった!」という顔になりました。
「ふふっ」
その表情がまた可愛くて、千夏さんと友達になれたことを、心の中だけで将隆くんに感謝するのでした。
「うっ……。綾乃ちゃんってば急に答えづらいことを聞くわね」
時期は八月。夏休み真っ最中のことでした。
私と千夏さんはお互いに暇だったので、一緒に夏休みの宿題をすることにしました。千夏さんのお部屋に上がらせてもらえるのだと、前日は楽しみすぎてなかなか眠れませんでした。
初めて友達のお部屋に入らせてもらって、浮かれていなかったと聞かれれば嘘になるでしょう。
もっと千夏さんのことを知りたい。その気持ちが、先ほどの質問に至った理由でした。
「千夏さんはモテそうですから。なぜ将隆くんを選んだのかと気になってしまって」
「ちょっ、私がモテるわけないじゃないっ」
恥ずかしそうに否定する千夏さん。そんな顔を見せられて、彼女を放っておく男子が信じられません。
そういえば、健太郎くんが千夏さんにずっとお世話をしてもらっていたのだと言っていましたね。男がいるとでも思われていたのでしょうか?
「……マサくんは、私をずっと見守ってくれていたのよ」
千夏さんは将隆くんとの馴れ初めを語ってくれました。
出会ったのは中学生になった頃。まだ成長期を迎える前だった彼は、千夏さんよりも背が低かったそうです。小さい将隆くん……ちょっと見てみたかったかも。
しかし中学生男子は成長が早いものです。将隆くんが大きくなるにつれて、その容姿も変わっていったようでした。そして、体の成長に比例するかのように包容力を感じるようになったそうです。
「私が愚痴りたい時、マサくんは必ず話を聞いてくれたわ。嫌な顔をしないで、ずっと傍にいてくれた……」
千夏さんは当時を思い出しているのでしょう。とても嬉しそうな顔をしていました。
黒い感情を吐き出しても、笑顔で傍にいてくれる。それがどんなに救われることか……。少しだけ、羨ましいと思ってしまいます。
「マサくんに告白されて、初めて大切に思われる嬉しさを知ったわ。言葉にされて、やっと気持ちを知るだなんて、私って本当に鈍いって思ったわ」
頷きそうになって、なんとか思いとどまりました。
将隆くんの様子を見て、彼の気持ちに最後まで気づかなかったのは千夏さんだけではないでしょうか? そう思うほどに、彼の気持ちはわかりやすいにもほどがありました。
「付き合ってからもマサくんは優しくて……。だから、私も素直にならなきゃって思えたのよ」
「つまり将隆くんとラブラブすぎて、他の男の人なんて考えられないのですね」
「そ、そこまでは言っていないじゃないっ」
「違うんですか?」
「うっ……。違わない、けど……」
千夏さんは顔を真っ赤にしてしまいました。すごく可愛いです。思わずぎゅっと抱きしめてしまいたくなる将隆くんの気持ち。少し悔しいですがわかってしまいますね。
「ふふっ。わかりました。千夏さんにとって将隆くんがどれだけ大切な人かということが、充分に伝わってきましたよ」
「もうっ。知らない……」
照れている千夏さんは抱きしめたいほど愛らしいですね。もちろんそれは将隆くんだけの特権なので、私は心の中で思うだけにしておきます。
「綾乃ちゃんはどうなのよ。それこそ男子からよく告白されるでしょう?」
「……」
無意識に作った笑顔が張りついてしまいました。
いけませんね。千夏さんには素直な私を見せたいのに……。
「あの、嫌なことなら答えなくてもいいのよ?」
私の変化に気づいてくれたのでしょう。千夏さんが気遣わしげにそう言ってくれます。
私の笑顔の裏にある感情をわかってくれた人はいませんでした。同性ならなおさらです。
心配されるのがこんなにも嬉しいことだったなんて、わかっているつもりでわかっていませんでした。
「いいえ。お話をさせてください。千夏さんに、聞いてほしいんです」
そうして私は自分の過去を語りました。
小学生の頃。中学生の頃。そして、現在に至るまで。私がどう思い、どう感じて、どう対処してきたのかを包み隠さずに話しました。
自分が他の人と違う感覚を持っているとわかっています。他人に受け入れてもらえるとは限らないともわかっているつもりです。
それでも、千夏さんには正直に話したかった。本当の私を知ってほしかったから。
「そう、大変だったのね……」
千夏さんはそう言って私を抱きしめてくれました。その抱擁は温かくて、優しくて……。自分の心の何かが溶けていくのがわかります。
「そうなんです……私だって、大変だったんですよ……」
千夏さんの胸の中にいるのが心地良くて、私は身も心も彼女に預けていたのでした。
ああ、将隆くんはこうやって千夏さんの話を聞いていたのでしょうね。自分の心の声を聞いてもらうことが、これほど楽になるものなのだと初めて知りました。
※ ※ ※
「恥ずかしいところを見せてしまいました……」
自分の頬に触れると、ものすごく熱くなっていました。きっと真っ赤になっていることでしょう。
「私もあんなこと、綾乃ちゃんにしか話したことないんだから……お互い様よ」
千夏さんも思い出しているのか、顔がまた赤くなっていました。
自分が秘密にしていたことを話すのは勇気のいることでした。でも、恥ずかしかったですがスッキリしています。
千夏さんも同じ気持ちなのか、顔は赤いままですが気持ちの良い笑顔でした。私もつられて笑顔になります。
「私、千夏さんと友達になれて本当に良かったです」
「何言っているのよ。私だって嬉しいわ」
それがどんなに嬉しいことか。わかってはくれているのでしょうが、私の気持ちの三分の一も伝わっていないでしょうね。
気がつけば、窓から夕陽が差し込んでいました。日が長い時期なのでうっかりしていましたが、もう帰らなければならない時間です。
「そろそろ帰らないと。話に夢中になってあまり宿題が進みませんでしたね」
「あ」
完全に忘れていたのでしょう。千夏さんが「しまった!」という顔になりました。
「ふふっ」
その表情がまた可愛くて、千夏さんと友達になれたことを、心の中だけで将隆くんに感謝するのでした。
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