もう1人の自分は召喚獣でもないただのカフェオレだった件

じゅうや

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1.奇妙な喫茶店

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4月。大学4年になり就活真っ只中である俺、林道悟りんどうさとるは、今日も希望の会社に面接を行ってきた。

いまのところ内定は1つで、まぁまぁホワイトな企業。そして第一志望の合否はまだである。どちらも職種は一緒なので落ちても大丈夫な状況である。

昼過ぎに今日受けた会社の近くにあったラーメンを食べ、時間があるので近辺を歩くことにした。路地裏の人通りが少ないとこに入り、しばらく歩いていると1つの喫茶店らしき奇妙な場所に目が止まった。

店の近くまでいき、メニュー表や内装などを見てみると、中々趣向が良さげでオシャレな喫茶店だったので、興味本位で中に入ることにした。

「いらっしゃいませ、どうぞお好きな席に」

角刈りに刺青が入ったガタイの良いマスターらしき人がカウンターから、見た目とは程遠い落ち着きのある声で迎えいれてくれた。

外から見た通り、壁にはずっしり本棚が並んでいる。そして思ったよりも奥行きがあり広い空間となっていた。雑貨などはアンティークさを漂わせつつも、ゴシック調に作られた空間。まるで中世のイタリアの図書館にいる感じがして男心をくすぐる。

「良い雰囲気ですね、ここ」
「お褒めいただき、光栄です。」

……ヤクザみたいな見た目してるのに接客は三ツ星レストランってギャップありすぎだろ。1周まわって怖くなってきた。

席につき、メニューを見る。値段は喫茶店の平均的な価格よりもやや安めに設定されている。特別なメニューなどもなく、バラエティは至ってシンプル。好感度しか上がらない。
頼む物を決めたのでマスターを呼ぼうと顔をあげたら、すでに彼はお冷を持ってこちらのほうに向かっていた。なんて気の利くお店なんだ。

「お冷でございます。お決まりでしたら、ご注文お伺いします」
「ホットのカフェオレで」
「かしこまりました」
「あの、ここのお店の本は自由に読んでいいんですか?」
「はい、ご自由にお取りいただいてよろしいですよ」
「分かりました、ありがとうございます」
「はい、それでは少々お待ちください」

彼の顔を近くで見るとイケメンとハンサムさが溢れすぎて、さながら映画のワンシーンに潜り込んでる気分になった。彼の容姿は、ハリウッド映画の主人公みたいな、そんな感じ。うん。

席を立ち、本棚に足を運ばせる。本の数は、図書館などでみるぎっしり本が詰まった棚が5個分だ。かなりの数あるのでなにを読もうか探すのに時間がかかりそうだ。
……と思っていたが、とある棚の真ん中の段…赤い表紙の本に俺は物凄く惹かれた。見たことないタイトルなのに、なぜだかこの本からは奇妙な感覚に襲われた。先ほどこの店を見つけた時と同じ感覚…なんだが不思議な店だ。

手に取って中身をパラパラめくると、経年劣化した紙の手触り、香り…古本屋さんに行くと漂うあの雰囲気がした。
しかし、妙だ。中身を軽く読んでくと見たことない言語でずっしり埋めつくされている。

その本を取り、席に着くとマスターがちょうどカフェオレを持ってきてくれた。

「カフェオレお待たせしました、それではごゆっくりどうぞ」
「あ、どうも」

机の端に置いてあるポーション棚から砂糖を1本取り出し、カフェオレに入れて混ぜる。
湯気と一緒に漂ってくるカフェオレの良い香りに俺は幸せな気持ちになった。そして1口啜る。

感想は驚き…である。おれはカフェオレが大好きでよく喫茶店に行き飲み歩いてきたが、ここまで美味いカフェオレには初めて出会った。そして俺は、先ほどの謎の本を最初のページが読み始める。

……?

おかしい。

さっきまで読めなかった言語が、読めるようになっている。頭の中ではっきりと、日本語に変換されて書かれてる内容が理解できるようになっていた。

内容は前半は魔法について、後半は聞いたことない国の伝説などが語られていた。おそらく伝記物だろう。


 ̄ ̄ ̄

本を読み終え、時間も頃合いなので荷物を整えて会計へと向かう。ソファから立ち上がろうとしたが…

…?

立ちくらみか…?それにしても脳が揺れすぎている。ダメだ、このまま倒れこんでしまう。俺は、座ってたソファに横たわってしまった。やがて意識も朦朧してきた。

すると、マスターがこちらまで駆けつけてくれた。なにか喋っているが全く聞き取れない。視界もボヤけてきた。

なんとか力を振り絞りマスターの顔を見ようと顔をあげる。

…なんだ?どういうことだ?マスターの顔が…

スパイが違う顔に変装するときに使う変身マスク。マスターは今、それを剥がしたのだ。ボヤけている視界にも関わらずその素顔は…明らかに、はっきりと、理解できたのだ。朝起きて鏡でいつも見てる顔…そう、彼の素顔は…



 俺だった……。

視界が暗くなり、やがて意識が消えてくる。最後に耳元に聞こえた言葉、それは…


「最後のチャンスだ…頼むぞ、俺。」
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