隣の席の白石さんは金髪ヤンキー?

じゅうや

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1. 白石さんは人見知りだった

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 4月初旬。今日から浅川高校の1年生になった神田道大は入学式に向かうために制服に着替えて準備をしている。

 ちなみに只今の時刻は8時20分。集合時間は40分なので余裕で遅刻である。これは俺だけかもしれないが、絶対に間に合わないと知った時にやってくる謎の落ち着き。そして急ごうとも思えないこの呑気さ。

 幸い電車で2駅、最寄り駅から高校までは徒歩5分程度なので式までには間に合うだろう。ちなみに両親はもう朝から仕事に行っていて、妹はまだ春休み中でおばあちゃんちにいるので入学式にはぼっち参戦。なんて冷たい家庭なんだろう。

 呑気に好きな歌を歌いながら準備を終えて学校へと向かう。ちょうど電車もきてくれて45分には着きそうだ。最寄り駅からの通学路は桜が軒並み咲いていてまるで新入生たちを歓迎しているようだ。

 まあこの時間なので歩いているのは俺だけだけどね。ここまで来るとなんだか良い気分になってきたのでスキップしてみる。すると後ろから走って来る足音が。あっという間に追い越されて学校へと向かう1人の女子生徒。おそらく新入生だろう。しかし派手な容姿であった。金髪ショートヘアに…ピアスもしていたような。初日早々から遅刻しているということは推測したところ不良の子なのかもしれない。

 彼女の走っている姿をみていたら俺も走りたくなってきたので追いかけるようにスキップからランニングに変える。
 校門に着くと先生から、「初日から遅刻が2人もか~、はっはっは~」などと笑いながらプリントを配ってくれた。
 てっきり説教をしてくるかと思ったが、意外にも陽気な人で良かった。

  自分が配属されているクラスを確認して下駄箱に靴を置く。持参してきた上履きに履き替えて教室に向かおうとしたが、目の前で立ち往生している生徒が1人。さきほど走っていた金髪ちゃんだ。なにやら1人でぶつぶつ言っている。

「え、え~と…教室教室…3階?でも階段なんてどこからの登れば…う、うぅ…」

 ……な、なんだと…?こんなことがあってもいいのか…?
 ヤンキーというのはもっとこう、オラァ!教室どこだゴラァ!みたいな感じじゃないの…?

「やばい、ママに怒られる…うぅ…どうしよう、先生に話しかけるのも無理ぃ…」

 とりあえず彼女のギャップにやられながらも困ってそうなので話しかける。

「あの、新入生すか?」
「ひっ!!上級生のかたですか…?い、いえ、私は保護者でしゅ…」

 制服着て保護者名乗るってそれなんてプレイ?サラッと嘘ついて終いには噛んでるし…

「俺も新入生で遅刻してきたから、君は何組?」
「え、えとえと…A組…」
「お、一緒だから教室一緒に行くか」
「教室わかるの!?」

 急に声デカイな…一応元気な子で良かった。それより顔が近い近い。

「多分な、ほら急ごう」
「う、うん!あ、ありがとうございます…」

 1年A組の教室に入ると案の定生徒は皆座っていたので、遅刻してきたのは俺と金髪ちゃんだけだ。
 担任の先生らしき人に席を教えてもらい座るが…みんなからの視線が痛すぎる。
 そりゃあそうだ。初日から金髪女子と2人で一緒に遅刻してきているんだ、問題児だと思われても仕方がないだろう。

 よばれるまで待機なのでスマホをテキトーに弄っていると、隣の席から声をかけられる。

「あ、あの!神田くん、ですよね…?」

 名前、なぜ知っている…!?もしかして彼女のご両親は娘と関わる人物の全てを調べあげて監視するつもりなのか?そういう仕事柄なのか?やばい、今すぐに逃げないと…

「ね、ねぇ…む、無視…?うぅ…」
「あー、すまん神田だよ、どうかしたか?」
「よ、良かった~、あやうく殴るとこだった…かも…」

 ははは、それモジモジしながら言うセリフかなー?お兄さんもう君の性格がわからないぞー?
 これが俗に言うサイコパスかなー?残念ながらそういう性癖は持ち合わせてないよ! うん。

「さ、さっきは、助けてくれてありがと…そ、その、白石です…よ、よろしく…」
「おう、白石さんな、これからよろしくな」
「う、うん…!」

 なんて素晴らしい笑顔だ…。正面からよく見たら彼女の顔は整っている。美しく、クールさも感じさせる。しかし金色の髪と相まって溢れんばかりの太陽みある笑顔には、可愛さを前面に押し出してくるので全国の男を魅了できるだろう……いやいや解説してる俺の顔キモくね?

そんなこんなで俺は…見た目はヤンキー中身は人見知りの白石さんと出会ったのであった。

俺の高校生活は平凡な日々を送れそうだ……と当時の俺は、そう思っていたのであった……。
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