隣の席の白石さんは金髪ヤンキー?

じゅうや

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2. アイドル好きな白石さん

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 入学してから1週間が経ち、クラス内が溶け込み始めた頃。俺も後ろの席の金堂こんどうや運動部志望の連中と仲良くなった。ちなみに俺は帰宅部志望。

 そんな中、白石さんはまだ溶け込めていない様子だ。もう女子のほうは何人かでグループを作ってるとこもある。

 原因は2つ。

・1つ目は白石さんが極度の人見知り。マトモに話せるのは今のところ俺しかいない。

・2つ目はみんなからの印象だ。ど金髪にピアス、初っ端から強気のスカート短め。それに加えモデルのような体型。この前、健康診断があったのだが本人曰く…

「か、神田くん…!見て、ほしい!」
「おう、診断のやつか…身長たっかいな~、俺とあんまり変わらねぇな」
「でしょでしょ……あ!え、えーと体重とかは、見ないで!!」

健康診断の紙を光の速さで懐に引っ込めた白石さん。女子のデリケートなとこまで突っ込む気は無いから安心してほしいと言いたいが…

「あ、あぁ…見てないからそんなに大袈裟に引っ込めなくてもいいぞ…」

彼女の身長は170センチなので、俺と5センチしか変わらない。よく見ると出るとこも出てるのでこれはすぐに男子から人気者になりそうだが…。


───

1時間目が終わり、10分休憩の時間。廊下にあるロッカーに教科書をしまい、次の時間の教科書を取る。すると、俺のところに2人の男がやってくる。

「なぁ、神田。白石さんと仲良さげだけど中学一緒?」
「いやちげーよ普通にお隣さんのよしみ」
「ぜってーやべぇよあの人。暴走族の総長やってそうだべ、あれ」
「い、いやーそんなことないと思うぞ」

 話しかけてきたのは最近仲良くなった池田と長島だ。俺と白石さんが2人で話してるとこを見かけた上でのこの話題を持ち込んで来たのだろう。彼女の中身を知っているので曖昧な返事になってしまった。

「あんなにギラギラしてるからスカート短くても先輩からはお咎めなしだもんな」
「噂によると絡んできた先輩たちまとめて追い返したらしいぜ」
「ボコボコにされたんかな…うわっ、こえぇ~」

多分おそらくだがあまりの喋れなさに無言を貫いた結果、先輩達からはガン飛ばされてると勘違いされたのだろう…と俺は推測する。

「まあ、人は見た目だけじゃないっしょ」
「神田はなんか顔で女の子を選ばない感じするわ」
「それな。というか神田は普通にイケメンだよなー、運動も出来そうだし。ムカつくぜ」

 バスケ部志望の池田と長島から褒められてるのかそうじゃないのかよくわからない激励を貰ったが、こういった感じで白石さんはその見た目故に、みんなから近寄り難い偏見を持たれているのだ。

2時間目開始のチャイムが鳴り、席に着く。数学なので教科書とノートを出すが今日はやる気が起きないのでぼっーとしていた。するとお隣の白石さんから机をとんとんっと。

「どした?」
「きょ、教科書を、わ、忘れた…」
「あーじゃあ一緒に見るか」
「う、うん!あ、ありがと…!」

机をくっ付けて一緒に教科書を見ることにした。問題の演習時間で先生の解説をなんも聞いてなかった俺は白石さんに解き方を聞く。

「あ、ここは、この公式をつ、使う…」
「あー、そーなのか、こう?」
「あ、いやそこじゃなくてここを…あ…」

消しゴムで俺の書いたとこを消そうとした彼女の手が、彼女の筆箱を倒してしまい、中身が俺の机のとこまでこぼれてしまった。俺は、こぼれた中身を筆箱に戻してあげた。

「あちゃー戻しとくよ…うん?なんだこれ…」

なぜかチェキが入っていた。2人の可愛い女の子が写っていたが片方の金髪ロングヘアは…おそらく、白石さんだ。すると、白石さんが無言で、またしても光の速さで俺の手からチェキを取り上げる。まさか…

「あー、その、なんだ…友達…?」
「…………。」
「ま、まあ大丈夫だ…見なかったことに…」

彼女は俯きながらも、とても小さな声で答えた。

「私の…!推し…!です…」

やっぱり。チェキにはサインが入っていたのでアイドルとのツーショだろうなと思っていた。それはもはやどうでもいいのだ。大事なのは白石さんがドルオタだったということである。

「お、おう…可愛い子だったな…なんてアイドルだ?」
「坂道クラブの井上リリカって人です」
「え、まじで?あの井上リリカ?こんなチェキみたいなのやってたのか」
「いやこれはグループ初期にしかやってなかったやつだから今はやってない。だからこれはウチの宝物」

お、おう?なんか早口だしいつもの挙動不審な白石さんどこいった?しかも一人称ウチって言ったよ、ちょっとヤンキーみたいじゃん。それっぽく見えてきたよお兄さん。

「今じゃモデルとかもやってるすげえ人になってるよなテレビとかで良く見るし」
「でしょでしょ!リリカのこともっと知ってほしいよ神田くんに!なんならライブDVDあるから貸そうか…………あ、あの、やっぱ無しで…」

うん、なにが?ここまで来て急に引っ込んだねぇ!いい所まで交渉してた取引を何事も無かったかのようにする人だとは思わなかったぜ!全く!

「おーいそこ、ちゃんと問題解け不良組~」
「あ、すんません~。あと不良じゃないんで」
「いやお前らまだ時間通りに登校したことないだろ学年の先生たちの中で話題だぞ~」

皆から少し笑われてしまったが、まさか白石さんも遅刻常連だったとは…俺より早く来てるけど…。

何はともあれ授業はつまらないが、白石さんの新しい一面を見れたことが嬉しかったりする自分がいる。

 見た目はヤンキーなのに、人見知りで熱狂的なアイドルファン。

…うんうん、キャラが濃いっ!!
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