男子体操部#10 快楽のワークショップ

コンノ

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第2章 快楽のパーソナル・レッスン

第1節 パーソナルストレッチ(1)

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 10月の声を聞くと、都心の空気は急に密度を増したように冷え込み始める。夕暮れ時、全面ガラス張りの高級会員制スポーツジム「アーバン・アスリート」のフロアには、街のネオンが美しく反射していた。
 大学2年生の藤政竣也ふじまさしゅんやは、スタッフ専用のロッカーで、ジムの指定ユニフォームであるタイトなポロシャツと、膝上丈のトレーニングパンツに身を包んでいた。162センチと小柄ながら、体操で培われたその肉体は、服の上からでもその異常な密度が伝わってくる。大胸筋はポロシャツの生地を押し上げ、発達した大腿四頭筋はパンツの裾をパンパンに張らせていた。
​「よし、今日も頑張るか……」
​ 鏡の前で短髪を整え、藤政は自分自身に気合を入れた。
 このジムでのアルバイトを始めてから数ヶ月。最初は、巡回しながらのマシンの利用方法の指導やサウナでのロウリュウ担当といった目立たない役割ばかりだったが、最近は「現役の体操選手」という肩書きが意識の高いエグゼクティブ会員たちの目に留まり始めていた。特に藤政の、コンパクトながら鋼のように引き締まった肉体美は、トレーニングの完成形として説得力があった。

​「藤政さん、準備いいかな。今日の18時からの予約、野中様がお待ちだよ」
​ フロントスタッフに声をかけられ、藤政は「はい、すぐ行きます!」と体育会系らしい快活な返事をしてフロアへ向かった。
 野中智のなかとも。26歳。食品メーカーの営業職。1ヶ月ほど前から藤政をパーソナルトレーナーとして指名してくれている常連客だ。
​ フリーウェイトエリアの隅で、野中は軽く首を回しながら待っていた。181センチの長身。モデルのように精悍な顔立ちに、営業職らしく整えられた清潔感のある佇まい。だが、トレーニングウェアから覗く腕の筋肉や、厚い胸板は、彼が単なる「細身のイケメン」ではないことを物語っている。
​「野中様、お疲れ様です! 本日もよろしくお願いします」
「ああ、藤政さん。今日もよろしく。……相変わらず、いい身体してるね。君を見てると、こっちまで元気が出るよ」
​ 野中がふっと口角を上げて笑う。その視線は、藤政の逞しい太ももの筋肉をカラッとした明るさで舐めるように動いた。大学の先輩たちや、先日講義室で交わった同世代の男たちとは違う、余裕のある大人の「オスの色気」が野中にはあった。
​「今日は、前回お話ししていたデッドリフトのフォームチェックから入りましょうか。広背筋とハムストリングスを連動させるイメージで……」
「そうだね。藤政さんの指導はロジカルで分かりやすいから助かるよ」

​ トレーニングが始まると、藤政はプロとしての意識を切り替えた。野中の背後に回り、フォームを矯正するためにその身体に触れる。
 野中の肌は、日々のジム通いのおかげでハリがあり、発熱量も高い。男らしい汗の匂いが鼻腔をくすぐり、藤政の集中力をわずかに揺さぶる。
 バーベルを持ち上げる際、藤政が野中の腰に手を添えてサポートした時だった。野中のトレーニングパンツのフロント部分に、嫌でも目が向いてしまった。そこには、平常時であっても無視できないボリュームの膨らみが鎮座していた。
​『……相変わらず、すごいな……』
​ 藤政は心の内で密かに感嘆した。以前から気づいてはいたが、野中の股間にあるそれは、普通の男とは「格」が違う。厚手の生地越しでも、それが太く、重みのあるものであることがありありと伝わってきた。
​「……野中さん、もう少し胸を張って。肩甲骨を寄せてください」
「ふぅ……。藤政さん、そんなに近くで見られると、緊張しちゃうな」
​ 野中はバーベルを下ろすと、わざとらしく藤政の顔に近い位置で大きな吐息をついた。その距離、わずか10センチ。野中の熱気が直接肌を叩く。
​「……いいフォームです。では、次のセットまで一分休憩しましょう」
「ああ。……ねえ、藤政さん。さっきから俺の腰のあたり、熱心に見てたけど。何か気になることでもある?」
​ 野中の瞳に、悪戯っぽい光が宿った。藤政は一瞬、心臓が跳ねるのを感じた。
​「いえ……フォームの崩れがないか、しっかりチェックしていただけで……」
「そう? 視線がもっと、下の方にいってた気がしたけどね」
​ 野中はニヤリと笑うと、藤政の肩にガシッと腕を回した。その手は、単なるスキンシップにしては少し力がこもっており、指先が藤政の鎖骨のあたりをなぞるように動いた。

 ​「……ところでさ。前から言おうと思ってたんだけど。あの日のサウナ、すごかったみたいだね。俺、見ちゃったんだよ。君が精液まみれでフル勃起して、サウナからフラフラ出てくるところ」
​ その言葉を聞いた瞬間、藤政の頭は真っ白になった。
 7月の終わり。部活の先輩である松谷や韮川、その場の客たちと、あのサウナ室で欲望のままに交わったあの夜。すべてを出し切り、白濁の汚れもそのままに浴室へ戻ったあの姿を、このスマートな男に見られていたのだ。
​「え……っ! あ、あれは……その、器械体操部の先輩たちと、なんていうか……じゃれ合いの延長っていうか……!」
「ははは! あんなエロいじゃれ合いがあるのかよ。最高じゃない」
​ 野中は驚くほど明るく笑い飛ばした。そこには軽蔑の色など微塵もなく、むしろ純粋な興味と、男としての共感が混ざり合っている。
​「いや、責めてるわけじゃないんだ。むしろ、あの時の君を見てから、俺も一度試したくてたまらなくなっちゃって。……藤政さん、この後、個室のストレッチルームでクールダウン付き合ってよ。予約、30分延長しておいたから」
​ 「アーバン・アスリート」の個室ストレッチルーム。そこは完全な密室だ。藤政の頭の中では、先輩の松谷と韮川に犯された時の快楽と、野中への羞恥心が渦を巻いていた。だが、野中の有無を言わせぬ明るい強引さに、身体が反射的に答える。
​「……はい。かしこまりました。ご案内します」
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