アースバラッド【異世界って何?でも楽しそうだから友達皆で奮闘します!】

皐月雨

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第三章

天球ツアー(2)

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「次は私の番ね!」

光が呟くが、どうも親達の表情がおかしい。光の両親も蓮の両親も各々周囲を見回し、険しい表情をしている。

「鬼城様、どうやら警戒部隊に察知されたようです。」

光の父が、蓮の父へ声を掛ける。蓮の父もさっきまでとは表情を変え眉の間に皺を寄せ真剣な表情で答えた。

「そのようだな。天音、1人でいけるか?」

「察知出来ている分であれば、全く問題ございません。部隊とは言っても隊長クラスの気配はありません。恐らく、巡回中の連中に偶々気配を気づかれたのでしょう。私が囮になりますので、妻と娘もお願い出来ますでしょうか?」

「当たり前だろう?では頼んだぞ?天音が引きつけている間に天球へと向かう。天音もヤツらを撒いたら、直ぐに合流してくれ!」

「かしこまりました!」

そこで蓮の父は、蓮と光に顔を向けた。

「蓮、光!これから直ぐに出発する!光の父とは別行動だ。心の準備をしておけ。それと一気に天球まで行く事になるから移動を楽しむ余裕はない。まずは天球まで辿り着く事が優先だ!」

「「はっ、はい!」」

蓮は明らかに残念そうな表情で返事をし、光は不安と緊張を昂らせた表情をしていた。危機的な状況の最中でここまで違う表情を垣間見る事はまずないだろう。

「それじゃあ、蓮、光、こちらに来なさい。天音、頼みましたよ?」

蓮の父が、光の父に確認を入れる。

「はい。鬼城様もお気をつけて。天球でお会いしましょう!では参りますね!」

蓮の父がコクリと頷いただのを確認した光の父は、バリィ(結界)、フライ(飛翔)と2つのみ発声し、物凄い早さで光の父は上空へと飛翔した。

「よしっ!天音が囮になっている間に私達も向かおう。皆一列に手を繋いでくれ!」

蓮の父を中心に左側に蓮、蓮の母と続き、右側へ光、光の母と続いた。

「蓮、光、準備はいいな?光の父の事は心配ない。しっかりと手を繋いでおいてくれ。では行くぞ!バリィ!(結界)、レファク!(透明化)、フライ!(飛翔)」

蓮達5人を最後に、天球への移動が開始された。








結果からすると蓮達は問題なく、天球の地に足を付けていた。ただ、足だけでは無く、膝と手の平も地面に付け、四つん這いで項垂れてはいるが…。

光は、今体験したロケットの様に飛び、地球の遥か上空で出した直径10m程の幻想的な鏡の中へ、衝突する恐怖の中で何の躊躇もなく飛び込まされ、直後には天球の地上へ真っ逆さまにスカイダイビングをパラシュート無しで行っている意味不明な危機的状況に、内心『死』を本気で覚悟したが、無事に今地面を踏み締めている安堵と、緊張から解放された事による吐き気に襲われていた。

対照的に蓮は、天球までの移動に何の恐怖心も抱かず、物凄い速さで上空へ飛び、更に物凄い速さで地上に到達してしまった事で、その神秘的な景色やその状況を全く楽しむ事が出来ず、地面に拳を叩き付けそれはもう悔しがっていた。

蓮の中では、ジェットコースターの最初の山を登りから猛スピードで上がり、そのまま猛スピードで降りて終了してしまったようなものなのだ。

その状況に親達は苦笑いし、子供たちは呆れ顔で見ていた。

「くっそ~!!何で僕たちはこんな目に遭わなければならないんだっ!」

蓮に続き光も続ける。

「本当よ!はぁはぁ、何でこんな目に遭うのよ!」

「「…こんな、酷い目に!!」」

全く状況の違う2人の言葉が奇跡的に揃う。
そこで周囲はお互いに顔を見合わせ、笑い声を上げた。

「「「ハハハハハッ!!」」」
「「「ふふふふふっ!!」」」

「なっ何がおかしいんだよっ?」

蓮が尋ね、翔が笑いながらも答える。

「だって…蓮?光の表情を見て下さいよ!恐い事があった後の表情でしょう?蓮は逆に楽しめなかったから怒っているんですよね?気持ちは別々なのに2人が言葉をハモらせたから可笑しくって笑ってるんです…。」

蓮と光はお互いに顔を見合わせ、「…えっ?」とまた2人でハモる。そこで更なる笑い声に包まれた。そこで後方から声が掛かる。

「何を全員で爆笑しているんですか?」

振り向くと、光の父が歩み寄って来ていた。

「おぉ!無事に到着したな?良くやってくれた。感謝する」

蓮の父が光の父の到着に気づき、感謝の意を述べる。

「いえ、大した事ではありません。こちらこそ、妻と娘を無事に送り届けていただき、有難うございました!」

「いや、それこそ大した事では無い。問題はなかったか?」

「はい。かなり遠方にて警戒部隊を撒き、天球へと入りましたので問題は無いかと思います。」

「そうか。助かった!礼を言う…。」

「いえ、滅相もごさいません!」

そこで、翔の父から声が掛かる。

「鬼城様、警戒部隊の件を踏まえ、こちらに長居は無用です。早速フジーネ村へ参りましょう!」

「…そうだな!行くか。移動手段はどうする?」

「大人達は飛翔で、子供達はフェンリルのジンとレッドドラゴンのギルで向かいます。何かあっても彼等単独でも戦えますからね!」

「そうか、…であれば子供達の封印も解かねばなるまい?耐えられるか?」

「そうですね。でも蓮君はすでにあの通り見えているようですし、他の子も問題ないのではありませんか?」

蓮の父が翔の父とのやり取りを進めている中で、チラリと蓮へ視線を向けた。そこには、絶望した蓮が復活し、キラキラとした眼で2体を交互に見つめていた。他の子たちは蓮のその仕草を訝しげに見ている。

「ふっ、そうだな。よし、ではまずこの場で子供達の封印を解くぞ!」

蓮の父は、その光景に決心し、表情を固めた。

「承知致しました!子供達と親を集めます。」

翔の父は即座に動き、子供と親を一箇所へ集めた。そこで蓮の父が全員へ告げる。

「これより、子供達の封印解除の儀を行う!!子供達は1箇所に纏まり、親達は円となるよう周りを取り囲んでくれ!」

親達は一斉に動き自分の位置へと移動し、子供達はオロオロとしながらも、円の中心地で一塊となった。それを蓮の父が確認し、全員へ言葉を向けた。

「では、封印解除の儀を始める!術は私が使うので、皆魔力をながしてくれ!魔法陣が発生したら各自血を一滴魔法陣へ落としてくれ。分かったな?」

親達全員が蓮の父に向け頷き肯定の意を示す。
それを確認し、蓮の父は中央にいる子供達に腕を上げ両手の平を向ける。

「いくぞ!!……リリーオビリティーっ!!」

子供達6人は、その声と共に地面には魔法陣が広がり光を放つ。その外円から光が立ち昇り、半円球の光の膜に覆われた。




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