侘助。

ラムネ

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 いや待て。一回落ち着こうか俺。
 俺と湊はひと回りも年齢差があるんだ。若者の間では一周、いや二、三周回ってこーゆーファッションが主流なのかも知れないじゃないか。多様性の時代だしな。俺疎いしな。

 でも、いやでも、でもだな。

 なんだその爽やかさの欠片もない柄×柄は。なんだそのサイズ感は。そんなタックの入ったパンツっつーかスラックスっつーか穿いてんのは俺より上の世代のゴルファーさんくらいしか見たことないぞ。
 ボディバッグもなんか変じゃないか? てかなんで黒縁伊達メガネ? それはそれで素敵アイテムではあるがバランスがおかしいから素敵じゃなくなっとる。寧ろマイナス。
 あと指輪。なんでスカルのゴツいやつ? それも綺麗な指が隠れるほどの。喧嘩か。喧嘩すんのか。メリケンサックか。


 ─────……年なんか関係ない……このセンス、俺の全細胞が拒否っている。


 …………思えばお前はいっつもスーツだったな。
 ウチでは俺の部屋着を貸し出してたしな。ちょっとそこの商店街とかコンビニとかなら上着引っ掛けてそのまま出掛けてたしな。

 嗚呼、罪深きスーツマジック。

「アラタ?」
「好きだ」
「ええ! 今ここで初告白!?」
「俺はお前が心から好きで可愛い。本心だ。だからどうか俺が何を告げても何をしても信じてくれ。嫌いにならないでくれ」
「え」

 俺は深呼吸し、湊を真っ直ぐに見つめた。
 どうか信じてくれ。
 俺は決してお前を傷つけたい訳じゃない─────

「お前の私服はダサい。おっさんの目から見てもダサい。俺は俺のプライドに賭けてお前を正す」

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