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しおりを挟む高校を卒業後、反町は希望通り関東の大学に進学した。俺は親の言いつけ通り地元の大学に進み、建築を学んだ。
家族の誰も俺にも警察官になれとは言わなかったけど、手に職をつけなければまた暗黙の了解的な空気に流されると思って技術学科を選んだ。それは18才にして初めての、家族への静かな反抗だったんだと思う。
子どもの頃と変わらず、口では何も言えなかったけど。
「藤間さーん。T町の五軒口、C号地に修正掛かっちゃいましたー」
「また?」
「パントリーにもうちょっと余裕が欲しいらしいです」
「広げたら広げた分だけ物が増えて収拾着かなくなるのに」
「一生に一回の買い物ですからオーナーさんの好きにして頂きましょ」
垂水《たるみ》くんはとっても美人さんだ。一級建築士になって間もない後輩だけど、社長の息子さんなのでいずれは上司、或いは雇い主になる。今のところ独立は全く考えていないから、まぁ将来のボスとして上手く付き合って行きたい相手。そして目の保養対象だ。
「顔、なんか付いてます?」
「綺麗な目、鼻、口が1:1.618で」
「セクハラ臭い黄金比ですねえ」
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