抱きしめたい

ラムネ

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 あれから何度も満月と新月がやって来て。

 それでも俺達は同じベッドで眠れる。

 当初、ネコ型でいる事が多かった猫だけど、夜はヒト型で長い時間を過ごせるようになった。声を聞くのはまだお月様頼みだけど。精進あるのみだな。

 そして今宵は待ちに待った満月─────給料日だ。

 食費・水道光熱費・被服費・医療費、挙げ句に貯金まで、生活に必要なものは全てチケットで支給される。健康(?)で文化的な最低限の生活は保障され、映画鑑賞やリッチなお惣菜を買うのも使い道自由な貯金チケットで賄える。ポイントと残業代はこの貯金チケットの枚数に還元されるので侮れないのである。

「やっぱり百目鬼くんは優秀だ」
隠形おしかたさんも分厚いじゃないですか」
「それでも出て行く枚数がね……」
「食費、うちの数倍ですもんねー」
「そーゆー事なんだ」

 そして月からの恩恵ボーナス。俺達にとってはそれこそが最も重要なんだ。

 俺はただただ─────愛する猫を抱きしめたい。

 思いっきり、欠片ほども躊躇せず抱きしめたいんだ。

直生なお!お帰りー!」
「猫!」
「先に “ただいま”!挨拶大事!」

 約ひと月振りのまともな会話なのに猫は厳しい。でも「ただいま」と言うと飛びついてキスしてくれた。今夜、粘膜も軟骨も崩れない事は猫も学んだ。
 他の住民達も傷んだ皮膚は修復され、気力も満たされ、二日間の休暇を終えた後の日々の営みを迎える事が出来る。重体だった橋さんも退院し、新月までの自宅療養に切り替わるだろう。

「んんっ……直生……」
「猫、猫、大好き、触りたかった……」
「体もすべすべー。デコボコしてなーい」
「顔色もいい?」
「うん!」
「抱いてもいい?」
「当たり前だ!昼から準備して待ってた!」
「夜行性のくせにー。猫はスケベだー」
「もう!」

 絡みつく褐色の体を掬い上げ、二人でベッドにダイブする。外的刺激だって怖くない。今夜は月の光を浴びながら、思い切り猫を抱きしめる。

「直生の鼓動……ちっちゃいけど聞こえる……」
「ロマンスは重要だからねー。ちゃんと勃つし」
「ち◯こもげた時はマジでびびったもんだけど」
「満月から三日も四日も経ってるのに猫が激しかったからだろ。毎日出してあげてるのにマジでスケベ」
「直生が傍にいるのに!我慢出来なくて悪いか!」

 腕や脚なら兎も角、根元からポロンと取れたこんなもんを医務室に持ち込まれ、ドクターもナースも困惑していた。鍾馗先生は爆笑していたが。
 放置する訳にも行かず致し方なかったとは言え、あんな辱めは二度とごめんだ。お陰で未だに医務室には行きづらい。

「このヘソの横の口が俺のち◯こ噛んだんだ。死ぬかと思ったわ」
「擽ぐったい。てか、ち◯こち◯こ言い過ぎ」
「むかし直生が言ったんだろー。俺は万年肛門期だって」
「それはそうだけどムーディーさが欲しいわー」
「二人で語らえるだけでムード満点♪直生、いっつも自分の都合いいよーに会話進めるからもどかしくって」
「でも当たらずとも遠からずだろ?猫はいっつも俺のこと愛してる」

 大きな瞳が月に照らされた俺を映し込む。猫だけを真っ直ぐに見詰めている俺が。

「今夜はいっぱい言える」
「うん。言って言って」
「愛してるから早く挿れろ」


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