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4章
155話 経営者ルカルドは歩き回る
しおりを挟む昼食を食べ終わり、少しだけ屋敷でまったりとした後、俺は自分が経営するルル商会へと足を運んでいた。
「「「「「ルカルド様! おはようございます!」」」」」
「みんなおはよう。今日も一日頑張ってね」
「「「「「はいっ‼︎」」」」」
毎回恒例となっている、その日に勤務している従業員達からの仰々しい挨拶を軽く受け流し、会長室に入ると、まずは昨日の売り上げをアテナに確認する。
「昨日の売り上げ金は、百四十万ベルでしたよ。もうこの商会も四年目だというのに、未だに売り上げ金が百万円を下回ることがないのですから、やはりマスターはさすがとしか言いようがないですね」
確かに商品を製っているのは俺だが、全てが俺のおかげというわけではない。
アテナを含めたルル商会の従業員みんなが俺に力を貸してくれているからこその結果だからね。
「アテナを含めた従業員のみんなが頑張ってくれてるおかげだと、俺は思うけどね」
「ふふっ、納得はできませんが、そう言っていただけるのはとても嬉しいですね。ありがとうございます、マスター」
「俺からすれば、納得してもらいたかったところだけどね。こちらこそ、いつも俺のサポートしてくれてありがとう、アテナ」
このやり取りももはや数えきれないほどしているのだが、やはり感謝の言葉を伝え伝えられるというのは、何度目でも嬉しいものだ。
とか言うと、お年寄りっぽい感じがあるが、俺ってまだ八歳なんだよなー。
前世とは比べものにならないほど充実した人生を送っているため、既に前世で生きた二十年よりも長く生きている気がする。
気がするだけで、半分も生きていないのだけどね。
その後、商品の補充を十分に行なった俺は、アテナや出勤している従業員達との談笑などをして一時間程度店に滞在し、次の目的地へと移動した。
足を運んだ場所は、これまた自分が経営しているルカルド温泉宿だ。
この温泉宿は、遡ること三年前。王都から帰ってきた後すぐに始めた事業で、ルル商会ほどお金を稼いではいないものの、ハイデル王国にある宿の中でもトップクラスの売り上げを記録している人気宿である。
この宿の最初期従業員である元孤児達は、痩せ細り栄養失調気味だった状態から見事に回復し、今では年相応に見えるようしっかりと成長していた。
「あー! ルカルド様! おはようございまーす!」
「「「「おはようございます!」」」」
「おはよう、みんな。今日も元気いっぱいで何よりだ」
三年経った今ではみんな十歳以上になり、みんな最低限度の一般常識も身につけている。
もはやどこでも生きていける人材であり、彼等が望むのなら温泉宿の従業員をやめて、自分の生きたい人生を歩むように背を押してあげてもいいと思っている。
中には、温泉宿の護衛を任せている二頭の龍王達から武術指導を受けている子もいるので、冒険者を勧めてみてもいいかもしれかいね。
というか、龍王が弟子とか普通に考えてやばいよね。まあ、そんな龍王よりも圧倒的に強い俺が言えたことではないのだけれど……
それを言っちゃあおしまいってやつだよ!
「ルカルド様、お疲れ様です」
「エイナもお疲れ様」
内心でくだらないことを考えていたら、温泉宿で働く者の中でも飛び抜けて優秀に育った孤児のお姉ちゃんこと、エイナが声をかけてきた。
初めて出会ってから三年経ったということもあり、気軽に呼び捨てもできる関係になっている。
……なんて言えば仲良くなったみたいに聞こえるが、俺とエイナの関係はあくまでただの上司と部下なのだけれどね。
今年で十四歳となり、来年成人を迎える彼女は、孤児達のお姉さんをしていたためか、年齢よりも大人びている印象が強い。というのが、他の人から見た評価なのだが……
温泉宿に俺が来れば、いつもすぐに俺の側に駆けつけて挨拶をしてくるエイナは、どこか忠犬にも似た印象を抱かせてくる。獣人として生まれていたのなら、きっと獣耳や獣尻尾をブンブンと振り回していたことだろう。
そんな親しみやすい彼女が現れたから、俺は何の気なしに、先ほど考えていたことを軽くだが、直接聞いてみた。
「エイナ。ここをやめたら、どんなことをしたい?」
「えぇっ⁉︎ わ、わたし、売られてしまうんですか⁉︎」
「……」
……予想の遥か斜め上の先をいった返事に、俺はたまらず絶句してしまうのだった。
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