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第6章 聖アウロス教会編
8 エドワード国王の覚悟
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国王が近衛を謁見の間から退出させると、ジュリエットは、
「これからだというのに、随分あっさりと負けを認めるのだな」
「致し方あるまい。レオンハルトが負けを認めた時点で、雌雄が決した。近衛が百人がかりでも勝てぬと分かったからな」
「うむ。教皇と違って賢明な判断だ」
「試すようなことをして済まなかった。其方たちが教会に歯向かうと分かっていたので、民を守る国王として、看過するわけにはいかなかったのだ。それに竜の力が、どれ程なのかも、知りたかった。もし近衛に捕らえられてしまうようであれば、到底教会には敵わないからな」
国王は、教皇勅書に従えない旨の親書を、教会の使者に授けた。
◇◆◇◆◇
翌日、テオドールたちが家にいると、コンコンと扉を叩く音が響いた。
エレナが扉を開けると、そこには貴族風のダンディな男性が立っていた。
口髭と顎髭が様になる、絵画から抜け出たような男前に、エレナは思わず見惚れてしまう。
そんなエレナには目もくれず、男性は家の中につかつかと入り込むと、テオドールを抱き締め、デレデレした顔で頬ずりした。
腐女子が喜びそうな光景に、うぶなエレナは男性を変態だと思った。
「やめんか! エレナがドン引きしておるだろが!」
ジュリエットは、男性を蹴飛ばした。
「エレナ?」
「テオの実親が見つかったのだ。そこの少女は、エレナという名で、テオの妹なんだよ」
「なにっ? そうだったのか。これはお恥ずかしいところをお見せした。麗しきレディー。私はテオの育ての親で、ヴェラントと申します」
ヴェラントは、キリッとした表情でダンディに挨拶し、エレナの手の甲にキスした。
「アンタ。そんなことより、用件を聞かせておくれ」
「用件……?」
ヴェラントは、少し考えたあとポンと手を叩き、
「おお、そうだった。数万の聖騎士団が、此の国に向かっている。明日には、此の国に侵攻し、魔の森の横を通るだろう」
「そんな大事なこと、忘れるんじゃないよ!」
ジュリエットとヴェラントは敵を迎え撃つため、テオドールとフレアは戦いを見守るため、緋竜山へ帰った。
聖騎士団の進軍をテオドールから聞いたレオンハルトは、すぐさま国王に報告した。
国王は賢人会議を開き、火竜が聖騎士団と戦うことを伝え、今後の見通しを検討した。
火竜については未知な部分が多いが、数万の聖騎士団には敵わないというのが、一致した見解だ。
実際にジュリエットの強さを目にした国王も、同意見である。
国王は、側近や近衛騎士たちを謁見の間に招集して、会議の結果を伝えた。
「――教会が此の国に侵攻するのは時間の問題である。皆の者は、被害を最小限に抑えるため、教会に逆らわず従って欲しい。教皇への親書に、我々は竜に屈したのであり、教会に逆らう意思はないと記した。なので、皆は異端として処刑されることはないはず。だがこうなったのも、すべて国王である我の責任である。本当に申し訳ない」
国王は深く頭を下げて謝罪したあと、
「我は国王最後の務めとして、教会に命を差し出すつもりだ。これまで我に仕え、此の国のために尽くしてくれた其方たちに、心より感謝する。我は良い臣下を持って幸せだった」
被害を少しでも抑えるため、国王は命を差し出すことを決意した。
謁見の間は、国王を慕う臣下たちの、すすり泣く声で満ちた。
その夜、国王は、限られた時間を惜しみながら、家族と深いひとときを過ごした。
「これからだというのに、随分あっさりと負けを認めるのだな」
「致し方あるまい。レオンハルトが負けを認めた時点で、雌雄が決した。近衛が百人がかりでも勝てぬと分かったからな」
「うむ。教皇と違って賢明な判断だ」
「試すようなことをして済まなかった。其方たちが教会に歯向かうと分かっていたので、民を守る国王として、看過するわけにはいかなかったのだ。それに竜の力が、どれ程なのかも、知りたかった。もし近衛に捕らえられてしまうようであれば、到底教会には敵わないからな」
国王は、教皇勅書に従えない旨の親書を、教会の使者に授けた。
◇◆◇◆◇
翌日、テオドールたちが家にいると、コンコンと扉を叩く音が響いた。
エレナが扉を開けると、そこには貴族風のダンディな男性が立っていた。
口髭と顎髭が様になる、絵画から抜け出たような男前に、エレナは思わず見惚れてしまう。
そんなエレナには目もくれず、男性は家の中につかつかと入り込むと、テオドールを抱き締め、デレデレした顔で頬ずりした。
腐女子が喜びそうな光景に、うぶなエレナは男性を変態だと思った。
「やめんか! エレナがドン引きしておるだろが!」
ジュリエットは、男性を蹴飛ばした。
「エレナ?」
「テオの実親が見つかったのだ。そこの少女は、エレナという名で、テオの妹なんだよ」
「なにっ? そうだったのか。これはお恥ずかしいところをお見せした。麗しきレディー。私はテオの育ての親で、ヴェラントと申します」
ヴェラントは、キリッとした表情でダンディに挨拶し、エレナの手の甲にキスした。
「アンタ。そんなことより、用件を聞かせておくれ」
「用件……?」
ヴェラントは、少し考えたあとポンと手を叩き、
「おお、そうだった。数万の聖騎士団が、此の国に向かっている。明日には、此の国に侵攻し、魔の森の横を通るだろう」
「そんな大事なこと、忘れるんじゃないよ!」
ジュリエットとヴェラントは敵を迎え撃つため、テオドールとフレアは戦いを見守るため、緋竜山へ帰った。
聖騎士団の進軍をテオドールから聞いたレオンハルトは、すぐさま国王に報告した。
国王は賢人会議を開き、火竜が聖騎士団と戦うことを伝え、今後の見通しを検討した。
火竜については未知な部分が多いが、数万の聖騎士団には敵わないというのが、一致した見解だ。
実際にジュリエットの強さを目にした国王も、同意見である。
国王は、側近や近衛騎士たちを謁見の間に招集して、会議の結果を伝えた。
「――教会が此の国に侵攻するのは時間の問題である。皆の者は、被害を最小限に抑えるため、教会に逆らわず従って欲しい。教皇への親書に、我々は竜に屈したのであり、教会に逆らう意思はないと記した。なので、皆は異端として処刑されることはないはず。だがこうなったのも、すべて国王である我の責任である。本当に申し訳ない」
国王は深く頭を下げて謝罪したあと、
「我は国王最後の務めとして、教会に命を差し出すつもりだ。これまで我に仕え、此の国のために尽くしてくれた其方たちに、心より感謝する。我は良い臣下を持って幸せだった」
被害を少しでも抑えるため、国王は命を差し出すことを決意した。
謁見の間は、国王を慕う臣下たちの、すすり泣く声で満ちた。
その夜、国王は、限られた時間を惜しみながら、家族と深いひとときを過ごした。
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