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15 どちらが冷酷か
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猫のようなアーモンドアイを細めて笑う偽王子。
わたしは、きれいだな…とその目を見て束の間現実逃避した。
…言わなきゃいけないことがあったのだ。
「それで用は?」
努めて優しく聞いてるのがわかる。
親切そうに、笑顔を見せられた。
わたしは、ああ、もうこの笑顔も見れなくなるのかな、と一抹の悲しさが襲った。
「これ…わかる?」
鈴の鳴ったような声だった。
上目遣いで聞かれ、おれはよくその絵手紙を見つめる。
よく見たあと、次は第二王女を見つめる番だった。
内心、残念だと思った。
「わかるよ。ここに行ってほしいと」
言いながら偽王子は、笑顔を見せる。
本当の優しい笑顔に見え、戸惑った。
「すぐにでも行く?」
「…もう解けたの?」
暗い声だった。
「うん。」
僕は明るい口調で話す。
「行っていい?」
頷かずに,聞こえなかったかのように固まる王女。
「一緒に行く?」
意地悪な質問を投げかけてみる。
「うん」
これは聞こえたようだ。
重々しく頷いた。
……
姉から来た、2度目の手紙。
絵と記号が混じっている。
おそらく、待ち合わせ場所だろう。
「……」
手紙を持ったままわたしは固まる。
反対に、絶えず思考は動いていた。
(頭の悪いわたしが……こんななぞなぞ解けるわけない。
姉はそれを知っている。)
「…………あぁ」
なにをわたしにさせようとしているか、大体検討がついた。
だが呑み込むまでに時間がいった。
(…わたしが解けるはずないのは、お姉さまは知っている。)
頭の中をまた整理するため、思った言葉を繰り返す。
(賢い男を呼び寄せる気だ………。)
殺す気だ。
それがわかる。
だけどわたしも行かずに、偽王子だけここに連れ出すのは難しい。
姉なら…この待ち合わせ場所に集中砲火を浴びせても不思議はない。
はああと、こめかみを抑え、ため息をつく。目に涙が滲んでいた。
わたしごと殺しても……っ
『あの子なら…どんな残酷なことでもやってのけるだろう。
邪魔者の息の根を止めるためなら。
自分の身を守るのよ。』
母に言われた言葉。
今邪魔者はわたしもだ。
「じゃあ行くね」
ぽん、と肩を叩かれる。
爽やかな表情は、心なしか作り笑顔の気がした。
「わたしはまだ準備が…
ちょっと待って…」
なんとかわたしは立ち上がる。
「先に行っとくから、あとは俺の従者を付けて一緒に来て」
………
「なんで?」
ガシャンと槍を持って、目の前でバッテンにされる。
ドレスからパンツスタイルに着替えたらこれだ。
部屋から出すなとお達しか。
もしかしたらお姉さま…?
わたしは、きれいだな…とその目を見て束の間現実逃避した。
…言わなきゃいけないことがあったのだ。
「それで用は?」
努めて優しく聞いてるのがわかる。
親切そうに、笑顔を見せられた。
わたしは、ああ、もうこの笑顔も見れなくなるのかな、と一抹の悲しさが襲った。
「これ…わかる?」
鈴の鳴ったような声だった。
上目遣いで聞かれ、おれはよくその絵手紙を見つめる。
よく見たあと、次は第二王女を見つめる番だった。
内心、残念だと思った。
「わかるよ。ここに行ってほしいと」
言いながら偽王子は、笑顔を見せる。
本当の優しい笑顔に見え、戸惑った。
「すぐにでも行く?」
「…もう解けたの?」
暗い声だった。
「うん。」
僕は明るい口調で話す。
「行っていい?」
頷かずに,聞こえなかったかのように固まる王女。
「一緒に行く?」
意地悪な質問を投げかけてみる。
「うん」
これは聞こえたようだ。
重々しく頷いた。
……
姉から来た、2度目の手紙。
絵と記号が混じっている。
おそらく、待ち合わせ場所だろう。
「……」
手紙を持ったままわたしは固まる。
反対に、絶えず思考は動いていた。
(頭の悪いわたしが……こんななぞなぞ解けるわけない。
姉はそれを知っている。)
「…………あぁ」
なにをわたしにさせようとしているか、大体検討がついた。
だが呑み込むまでに時間がいった。
(…わたしが解けるはずないのは、お姉さまは知っている。)
頭の中をまた整理するため、思った言葉を繰り返す。
(賢い男を呼び寄せる気だ………。)
殺す気だ。
それがわかる。
だけどわたしも行かずに、偽王子だけここに連れ出すのは難しい。
姉なら…この待ち合わせ場所に集中砲火を浴びせても不思議はない。
はああと、こめかみを抑え、ため息をつく。目に涙が滲んでいた。
わたしごと殺しても……っ
『あの子なら…どんな残酷なことでもやってのけるだろう。
邪魔者の息の根を止めるためなら。
自分の身を守るのよ。』
母に言われた言葉。
今邪魔者はわたしもだ。
「じゃあ行くね」
ぽん、と肩を叩かれる。
爽やかな表情は、心なしか作り笑顔の気がした。
「わたしはまだ準備が…
ちょっと待って…」
なんとかわたしは立ち上がる。
「先に行っとくから、あとは俺の従者を付けて一緒に来て」
………
「なんで?」
ガシャンと槍を持って、目の前でバッテンにされる。
ドレスからパンツスタイルに着替えたらこれだ。
部屋から出すなとお達しか。
もしかしたらお姉さま…?
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