悪女”と呼ばれた妹は、失踪した聖女の姉の代わりに敵国王子を婿に迎える

冬田シロクマ 

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17 根に持つ

言ってはいけないと言われている。
ならば考えるしかない。

母、あの男、もしくは━━━

「………」

息をつき、大きなレース付きのベッドにボフンと沈む。
目を閉じ、気持ちよさそうにまどろんだ。
外では機関銃のような爆発音。
悲痛な叫び声が交互に鳴っている。
それを他人事のように、わたしは疲れた瞳で高い天井を見上げた。

恵まれてるな。わたし

よく思うことをまた思う。

『きみは女王に進化できる、この国にたった2つしかない貴重な駒だ』

長くウェーブがかった髪をなでられそうになる。
咄嗟にわたしは身をかがめた。
警戒に満ちた瞳で偽王子を見た。
ごめんね。とポツリと言われる。

『きみにできることといえば、国を牛耳るための知識を身につけることだよ。
それ以外に利用価値がない』

優しい声で、冷たいことを言い放つ。
あの男が思い浮かんだ。

「〇〇…」

言ったこともない、偽王子の名前を言ってみる。
自分が殺したみたいなもんなのに。

…もしかして、こんなにあの偽王子のことを思い浮かぶのは、ほんとうに殺されたからじゃないだろうか。

大きな丸窓に近づく。
赤い血が、パチパチと小さな花火のようにどこでもかしこでも光っている。

ボッーと思った。
さっきまであの地図の場所で、偽王子はわたしを待っていた。

私が見せたから、そこへ行った。

「ゔぁああああ…」

顔を下げる。
罪悪感が悲鳴をあげた。
……

これで姉は、わたしが味方だとわかっただろう。
涙で泣き腫らした目。
それに氷を当て、考える。
姉の意図した通りに、あの手紙を偽王子に見せ行かせたのだから。

「ああ」

やんでもしょうがない。
姉と、国を破滅に導くかもしれない偽王子。
どんな状況だったとしても、わたしは姉を選んだだろう。

だから━━

後悔がさざ波のように、打っては消え打っては消えを繰り返す。
……

飄々とした様子。
聞いてる?と目の前で手を振られる。
ムカついているのか、血がついたままでわたしのベッドに座った。

「ゆ、幽霊…?」

おそるおそるといった感じで、わたしは言う。
クスッとほはえむ偽王子。
ああ、魅力的だなぁとまたしても実感した。
相手は幽霊かもしれないのに。

「王子…」

確かめるように、偽王子の方頬に手を添える。
ひんやりと冷たい。

「ごめんなさい…」

口にした瞬間涙が溢れた。

「ごめんなさい……ほんとうに」

顔を上げられず、言う。
申し訳なさ過ぎて、わたしも死んでしまいたかった。

「困ったなぁ」

明るい、いつもの甘い口調だった。

「きみを殺すためにここに戻ってきたのに」

一瞬…息が、止まった。

「え…」
「あんなの罠に入らない。
きみのお姉さんは、遊んだんだ」

冷酷に言う。

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