悪女”と呼ばれた妹は、失踪した聖女の姉の代わりに敵国王子を婿に迎える

冬田シロクマ 

文字の大きさ
23 / 58

22 偽王子と第一王女の対話

女王陛下に伝えた。
第一王女を、殺せなかったと。  

私は、この日死ぬつもりだった。

「なら、あなた死ぬ?」

真っ赤な口紅が、イラついた表情かおで笑う。
芯がこごえた。
だが、こういうとき不思議なもんで、まったく汗をかかない。
気持ちよく、死に行くようなものだった。

私はひざまづく。
そして頭を地面に当てた。

「第一王女さまを、次期女王に!」

ピキッと陛下の表情が割れた想像をした。
だが顔を上げると、つまんなそうな顔で私を見下ろしている。

「なんでわかんないの?
私が一番かわいいのも、女王にしたいのも2番目の子なの」

心の中で、陛下を見限る音がした。
他は優れている女王陛下は、第二王女のことになると、とても頭が悪くなった。

再び、頭を地面に擦り付け、祈るように目を瞑る。

「どうか、ご英断を!!」
………………
………………
最後に見たのは、陛下のつまんなそうな瞳だった。

 背中まで貫かれた剣を抜かれ、口から血を吐く。

プシャァ!…………ドサッ

「お前如きが…」

倒れたあと、憎々しく聞こえた声が頭上で響いた。
……

「そう。死んだの」

耳打ちされ、間者をしていた従者から今聞いた。
第一王女は手を合わせた。

数メートル離れたところには、タバコをぷかぷかと吹かす妹の夫…
なにやら思考を働かせている様子だった。
男は冷たそうな表情で、赤黒い高級そうな皮のソファに座っている。
見た目だけで飛びつく妹にとって、喉から手が出るほど欲しい代物だろう…とこのとき思った。
そのぐらい、顔がドールのように整っていた。

「……なんですか?」

まるで物を値踏みするような、不快な視線を向けてくる第一王女。
慣れてもいたが、初め陛下にスパイとして任命されたときの出来事を思い出させた。

「その軍師について話したくて…
最後の手段として、母を殺せって言ったのよ。私は」

第一王女は華奢な白い猫脚椅子に座り、振り返り見る。
膨らんだ、淡い向日葵ヒマワリ色のドレスが舞った。

「そんなの大逆罪になりますよ」

自信家の妹の夫が、上品な仕草で話す。
いつにも増して、冷静な態度。
なんだか気に食わなかった。

「次期女王の私が命令してるのに…」 

第一王女が続ける。
私は血のついた剣を「お願い」と言い、近くで仕えている従者に拭ってもらう。

「だから反逆罪じゃない。
頭の固い男は駄目ね」

鈴を転がしたような高い声が響く。
妹の少々荒っぽい声とは全然違うな、と聞きながらふと思い出す。

「理屈で言えばそうですね」

妹の婿は、血がたっぷりついた剣を品よく丁寧に拭き取る。
所作が、ただの下級貴族とは思えないと思いながら見ていた。

注意深く耳を傾ける。
この男とうまく交渉しないとだめだ。
女王から私に、引き込まないと……

「ずっと女王第一で尽くしてきた男が、急に女王にやいばを向けることは中々難しい。
親からの洗脳みたいなものだから」

男は、どこか諦めている瞳で語った。

「で?」

言い,男は笑う。
男の表情は,なんの要望があるのかさっさと言えと言っていた。

あなたにおすすめの小説

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

公爵令嬢が婚約破棄され、弟の天才魔導師が激怒した。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています

実家も国も私を捨てたが、私を愛さないと国が滅びる。絶望する人々を特等席で眺め、冷徹な王子の腕の中で思考停止する。

唯崎りいち
恋愛
持参金がないという理由で家族と祖国から追放された私は、実はこの国を支える“加護”そのものだった。 私が去った瞬間、王都の結界は崩れ、国は崩壊へ向かい始める。 そんな私を拾ったのは、冷徹と噂される隣国の王子。 「やっと見つけた。お前は俺のものだ」 捨てられたはずの私は、気づけば滅びゆく祖国を背に、彼の腕の中で溺愛されていた。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

婚約破棄して泥を投げつけた元婚約者が「無能」と笑う中、光り輝く幼なじみの王子に掠め取られました。

ムラサメ
恋愛
​「お前のような無能、我が家には不要だ。今すぐ消えろ!」 ​婚約者・エドワードのために身を粉にして尽くしてきたフィオナは、卒業パーティーの夜、雨の中に放り出される。 泥にまみれ、絶望に沈む彼女の前に現れたのは、かつての幼なじみであり、今や国中から愛される「黄金の王子」シリルだった。 ​「やっと見つけた。……ねえ、フィオナ。あんなゴミに君を傷つけさせるなんて、僕の落ち度だね」 ​汚れを厭わずフィオナを抱き上げたシリルは、彼女を自分の屋敷へと連れ帰る。 「自分には価値がない」と思い込むフィオナを、シリルは異常なまでの執着と甘い言葉で、とろけるように溺愛し始めて――。 ​一方で、フィオナを捨てたエドワードは気づいていなかった。 自分の手柄だと思っていた仕事も、領地の繁栄も、すべてはフィオナの才能によるものだったということに。 ボロボロになっていく元婚約者。美しく着飾られ、シリルの腕の中で幸せに微笑むフィオナ。 ​「僕の星を捨てた報い、たっぷりと受けてもらうよ?」 ​圧倒的な光を放つ幼なじみによる、最高に華やかな逆転劇がいま始まる!

ボロボロになるまで働いたのに見た目が不快だと追放された聖女は隣国の皇子に溺愛される。……ちょっと待って、皇子が三つ子だなんて聞いてません!

沙寺絃
恋愛
ルイン王国の神殿で働く聖女アリーシャは、早朝から深夜まで一人で激務をこなしていた。 それなのに聖女の力を理解しない王太子コリンから理不尽に追放を言い渡されてしまう。 失意のアリーシャを迎えに来たのは、隣国アストラ帝国からの使者だった。 アリーシャはポーション作りの才能を買われ、アストラ帝国に招かれて病に臥せった皇帝を助ける。 帝国の皇子は感謝して、アリーシャに深い愛情と敬意を示すようになる。 そして帝国の皇子は十年前にアリーシャと出会った事のある初恋の男の子だった。 再会に胸を弾ませるアリーシャ。しかし、衝撃の事実が発覚する。 なんと、皇子は三つ子だった! アリーシャの幼馴染の男の子も、三人の皇子が入れ替わって接していたと判明。 しかも病から復活した皇帝は、アリーシャを皇子の妃に迎えると言い出す。アリーシャと結婚した皇子に、次の皇帝の座を譲ると宣言した。 アリーシャは個性的な三つ子の皇子に愛されながら、誰と結婚するか決める事になってしまう。 一方、アリーシャを追放したルイン王国では暗雲が立ち込め始めていた……。

惨殺された聖女は、任命式前に巻き戻る

ツルカ
恋愛
惨殺された聖女が、聖女任命式前に時間が巻き戻り、元婚約者に再会する話。

ヒロインと結婚したメインヒーローの側妃にされてしまいましたが、そんなことより好きに生きます。

下菊みこと
恋愛
主人公も割といい性格してます。 アルファポリス様で10話以上に肉付けしたものを読みたいとのリクエストいただき大変嬉しかったので調子に乗ってやってみました。 小説家になろう様でも投稿しています。